蔓延する暗号通貨の「風説の流布」、機械学習で詐欺の兆候を検出
暗号通貨市場で虚偽の情報を流して価格を吊り上げる「パンプ&ダンプ(風説の流布)」が蔓延している。あまり知られていなかった詐欺の手口や仕組みについて、実例に基づいて調べた研究成果が発表された。機械学習で兆候を事前に検出することにも成功したという。 by Emerging Technology from the arXiv2019.02.21
あここ数年間における暗号通貨の状況は、まるでジェットコースターに乗っているかのようだった。2017年の間にビットコインの価値は900ドルから2万ドルへと上昇し、その後、大暴落した。2018年2月初頭時点の1ビットコインの価値は3500ドル足らずだ。
こうした動きが他の暗号通貨の急速な開発を促した。大方の推定では、暗号通貨の数は1000を優に超える。その中からビットコインの成功を再現する暗号通貨が現れると期待されているが、実際には大規模に取引されていたり、何らかの価値を持っていたりする暗号通貨は少数にとどまる。
暗号通貨の乱高下する値動きが、暗号通貨の特徴とされる匿名性と相まって、犯罪者を引きつけていることは驚くにあたらない。暗号通貨にまつわる話題の中には、盗難やポンジ・スキームなどの違法行為がいくつもある。
しかしここ数カ月、ある詐欺の手口が目につくようになってきた。パンプ&ダンプ(Pump-and-dump:日本語では「風説の流布」の意味)と呼ばれる手口だ。米商品先物取引委員会は2018年2月に、パンプ&ダンプ詐欺に関して消費者に特別な警告を発し、規制当局は首謀者を積極的に追跡し始めた。
しかし、この詐欺については、実行方法や手口の詳細がほとんど分かっていない。
だが、インペリアル・カレッジ・ロンドンのジャファ・シュウとベンジャミン・リブシッツ准教授の研究により、状況は良くなっている。リブシッツ准教授らは暗号通貨市場におけるパンプ&ダンプの手法を研究し、その仕組みを克明に記述した初めての論文を発表した。2人はさらにパンプ&ダンプが起こるタイミングを予測するアルゴリズムも開発し、詐欺被害の緩和あるいは阻止につながる道を開いた。
まずは背景について説明しよう。パンプ&ダンプは従来の商品取引市場ではよく知られた詐欺だが、暗号通貨市場に普及したのはごく最近のことである。詐欺グループはまず無名の暗号通貨を選び、密かにそれを溜め込むことから始める。
詐欺グループは次にある発表をする。その内容とは、価格をつり上げる操作が始まろうとしていること、そしてつり上げの対象となる暗号通貨がランダムに選ばれて指定時刻に発表されるということだ。これらの発表は、関係者が購読できるテレグラム(Telegram)のような匿名チャンネルでなされる。
指定した時刻になると詐欺グループは選ばれた暗号通貨を公表するが、それは偶然にも彼らが買い集めた暗号通貨である。利害関係者たちはこれを合図に買い始める。急激な動きが起こったことで暗号通貨の価格は急上昇する。
価格がピークに達すると、取引の参加者は手早く利益を上げようと売却を …
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