KADOKAWA Technology Review
×
【春割】実施中!年間購読料20%オフ!
気候変動が
「差し迫った脅威」に
変わった日
John Locher | AP
カバーストーリー 無料会員限定
The day I tasted climate change

気候変動が
「差し迫った脅威」に
変わった日

大気中に排出した二酸化炭素が完全な温暖化効果を得るには何年もかかるが、その効果は数千年にわたって持続する。二酸化炭素排出量の削減によって気候変動を解決しようとしても、すでに手遅れなのかもしれない。 by James Temple2019.01.16

2018年11月初旬、強風にあおられた山火事で焦熱地獄と化したカリフォルニア州のパラダイス町では、ほぼ全域が焼き尽くされ、少なくとも86人が死亡した。

山火事が発生した2日目の朝には、バークレーの自宅から一歩出ただけで、210キロメートルほども離れた山火事の匂いが感じられた。そして1週間もたたないうちに、屋内にいても目や喉が刺すように痛みはじめた。

サンフランシスコのベイエリアは煤まみれの空気に覆われ、大気環境マップは「健康に非常に悪い」警告レベルに達した。何日もの間、犬の散歩や、電車に乗るとき、用事で外に出るときには、ほぼ全員がマスクを着用していた。その大部分を占める薄紙製のマスクの効果は疑わしいものだった。微粒子の95%を遮断するという優れもののマスク「N-95」はすぐに在庫切れとなり、空気清浄機も売り切れた。

人々はそれらの品々を販売している店の情報を交換し、新しい在庫が入ったと聞くとこぞってその店に駆け付けた。この騒ぎが収まるまでの間、安全に過ごせる場所を探すため、荷物をまとめて何時間も離れた場所に自動車で運転していく人々もいた。私は、注文したマスクが郵送で自宅に届くころにはオハイオ州にいた。感謝祭の旅行を前倒しして、煙から非難することにしたのだ。

気候変動が山火事を起こすわけではない。しかし、夏の暑く乾燥した気候が気候変動でさらに強まっていたことが、近年のカリフォルニア州史上、もっとも多くの犠牲者を出した破壊的な山火事の惨禍を招いた。

私は、地球温暖化の危険性が現実のものであり、年々それが高まっていることを長い間理解していた。後退する氷河や干上がった湖底、それにシエラネバダ山脈の木がキクイムシによって倒される様子を直接目にしてもいた。

だが、自宅においてその臭いを嗅ぎ、味わったのはこれが初めてだ。

もちろん、のどの痛みや飛行機の便の変更など、「キャンプファイヤー(Camp Fire)」の山火事で失われた命や住宅に比べれば些少なものだ。しかし、煙霧の中で過ごした一週間で、地球温暖化が確かに進行していることを、より深いレベルで実感させられた。

これまで我々が、究極の「共有地の悲劇」にしっかり立ち向かって来なかった代償として、何百万人とは言わなくとも、何千人もの人々が飢えたり、溺れたり、焼死したり、あるいは悲惨な生活を強いられようとしている。そして、それより多くの人々が、基本的な生存用品を探し求めてさまよい、より多くの山火事や、より猛威をふるうハリケーン、酷暑の夏に恐れおののくことになるだろう。

気候変動を解決しようとしてもすでに手遅れだ。我々はもはや、気候変動とともに生き、被害を最小にするために出来ることをすべてするしかないところにまで来ている。

世界でも有数の裕福な地域に隣接するコミュニティがほぼ全滅し、惨事の後で必要となった物資を満足に供給できない小売業者の実態を目の当たりにすると、今後のより大きな課題に立ち向かって行く能力が我々にあるのだろうかと、私は悲観的な気持ちになる。

https://www.instagram.com/p/Bp8P3B1B3P-/?utm_source=ig_embed&utm_campaign=embed_loading_state_camera

カリフォルニア州パラダイスから避難し父の家に向かう。「キャンプファイヤー」は手が付けられない勢い。#campfire

罹災

気候変動による破滅的な事象を味わえば、世界は共通意識を持って、問題に慌てて取り組むようになるだろうと考えている人々もいる。しかしそれでは、多くの点で手遅れとなるだろう。

二酸化炭素が完全な温暖化効果を得るには何年もかか …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
【春割】実施中!年間購読料20%オフ!
人気の記事ランキング
  1. Will fusion power get cheap? Don’t count on it. 核融合は本当に安くなるのか? 楽観論に「待った」をかける新研究
  2. Digging for clues about the North Pole’s past 12万年前は無氷だった?海底22メートルの泥で掘り起こす北極点の謎
  3. Is carbon removal in trouble? 炭素除去業界に激震、最大顧客のマイクロソフトが購入を一時停止
MITテクノロジーレビューが選んだ、 世界を変える10大技術

MITテクノロジーレビューの記者と編集者は、未来を形作るエマージング・テクノロジーについて常に議論している。年に一度、私たちは現状を確認し、その見通しを読者に共有する。以下に挙げるのは、良くも悪くも今後数年間で進歩を促し、あるいは大きな変化を引き起こすと本誌が考えるテクノロジーである。

特集ページへ
AI革命の真実 誇大宣伝の先にあるもの

AIは人間の知能を再現する。AIは病気を根絶する。AIは人類史上、最大にして最も重要な発明だ——。こうした言葉を、あなたも何度となく耳にしてきたはずだ。しかし、その多くは、おそらく真実ではない。現在地を見極め、AIが本当に可能にするものは何かを問い、次に進むべき道を探る。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る