KADOKAWA Technology Review
×
ニュース Insider Online限定
Solving the Lack of Diversity in Genomic Research

ヨーロッパ系のゲノム情報ばかり集めても病気のことはわからない

収集された圧倒的大多数の遺伝データはヨーロッパ系だ。この状況を変えようとする研究者がいる。 by Emily Mullin2016.10.26

ロサンゼルス生物医学研究所の遺伝学者ケント・タイラー研究員が2年前、ヒスパニック系母集団における2型糖尿病の遺伝的危険因子について研究する助成金のための書類を書こうとした時、他の研究がほとんどないことに気付いた。タイラー研究員はゲノムワイド関連解析(GWAS)カタログと呼ばれる、ゲノムワイド関連解析に関する研究の全ての国際的出版物を調べたところ、ヨーロッパ人の2型糖尿病では19件の研究、アジア人では14件の研究、ヒスパニック人では3件の研究、メキシコ人では1件の研究、そしてアリゾナ州のアメリカ先住民グループでは1件の研究があった。

GWASは、多くの人のデオキシリボ核酸(DNA)をスキャンし、病気の誘発と関連する遺伝子変異体を検出する。しかしアフリカ系、ラテンアメリカ系、原住民や先住民の人びとを含む多くの母集団に関する遺伝的危険因子の研究や、ゲノミクス研究全般は、非常に少数しかない。情報がないため、研究者は異なる母集団での病気の感染性や薬物反応に関与している重要な遺伝因子を見逃している可能性があるのだ。

タイラー研究員は、GWASは現代の遺伝学の最重要ツールだが、私たちはまだそのツールを完成することから「ほど遠い」という。タイラー研究員は、異なる母集団で病気を研究するために使える「基本的なゲノムインフラ」を設立するには、もっと多様な遺伝子が必要だという。

最近、ネイチャー誌に発表された分析により、ゲノムワイド関連解析に参加した81%の人がヨーロッパ系だったことが判明した。アフリカ系、ラテンアメリカ系、原住民や先住民の家系にルーツがある人は、全て合わせても分析された全ゲノミクス試料の4%にも満たない。ゲノムワイド関連解析の全体的な多様性は、2009年から増加してはいるものの、96%のデータがヨーロッパ系であり、多様性の増加は、アジア系母集団のデータの大幅な増加と、その他の母集団のごくわずかでしかない増加による。

米国立ヒトゲノム研究所のゲノミクスと世界保健研究(米国立 …

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. Inside the tedious effort to tally AI’s energy appetite 動画生成は別次元、思ったより深刻だったAIの電力問題
  2. Promotion Call for entries for Innovators Under 35 Japan 2025 「Innovators Under 35 Japan」2025年度候補者募集のお知らせ
  3. IBM aims to build the world’s first large-scale, error-corrected quantum computer by 2028 IBM、世界初の大規模誤り訂正量子コンピューター 28年実現へ
  4. What is vibe coding, exactly? バイブコーディングとは何か? AIに「委ねる」プログラミング新手法
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2025年版

本当に長期的に重要となるものは何か?これは、毎年このリストを作成する際に私たちが取り組む問いである。未来を完全に見通すことはできないが、これらの技術が今後何十年にもわたって世界に大きな影響を与えると私たちは予測している。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る