KADOKAWA Technology Review
×
【4/24開催】生成AIで自動運転はどう変わるか?イベント参加受付中
Zキャッシュがバグをこっそり修正、問われる「非中央集権化」の意味
Ms. Tech
ニュース Insider Online限定
A cryptocurrency company’s covert bug fix has confusing legal implications

Zキャッシュがバグをこっそり修正、問われる「非中央集権化」の意味

暗号通貨「Zキャッシュ」の開発チームが、同暗号通貨に含まれていたバグを秘密裏に修正していたことが明らかになった。今回の件で、暗号通貨の支持者たちが理想として掲げる「非中央集権化」とは一体何を意味するのかが、改めて議論となっている。 by Mike Orcutt2019.02.12

Zキャッシュ(Zcash)カンパニーが2月5日、ショッキングな事実を告白した。暗号通貨「Zキャッシュ」の運用を担う営利企業である同社は、攻撃者が「偽の」Zキャッシュを作り出すのに利用できるソフトウェアのバグを秘密裏に修正していたのだ。

ショッキングだったのは、Zキャッシュに欠陥があったことではない。ごく一握りの従業員にしかそのことが知らされず、そして(私たちが知っている限りでは)バグ修正完了までの8カ月間、その事実をひた隠しにしていたということだった。Zキャッシュが昔ながらのソフトウェア会社であれば、こうした問題の対処方法はさほど大きな議論を呼ばなかっただろう。しかし、こと暗号通貨となれば話は別だ。暗号通貨の熱狂的な支持者たちは、すべてが透明でかつ非中央集権化されているという前提で取引をしている。 さらに重要なのは、ブロックチェーンのシステムにおいて「中央集中化」と「非中央集権化」を区別する明確な定義がないことを、この一件で再認識させられたことだろう。政策関係者でさえ、これらの問題に対する現実的な法的意味合いを検討し始めたところなのだ。

「誰にも見つからなかったはず」というが……

話は2018年3月にさかのぼる。ある長文のブログによれば、Zキャッシュの暗号作成者アリエル・ガビゾンが、自社のテクノロジー開発上の資料としていた学術文書に「ささいな暗号法上の誤り」を発見したことが発端だった。Zキャッシュは、ゼロ知識証明と呼ばれる暗号ツールを使ってユーザーたちに匿名で取引させている。ゼロ知識証明を使うと、ユーザー情報を提供しなくても取引を成立させられるのだ。

ガビゾンが見つけた脆弱性はあまりにも微細なものであったため、暗号作成の専門家たちさえ何年にも渡って見過ごしていたとブログの筆者は書いている。実際、だからこそ、欠陥を見つけられる人間は他にはいなかったとZキャッシュは確信している。「その脆弱性は、高度に洗練された …

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
【春割】実施中! ひと月あたり1,000円で読み放題
10 Breakthrough Technologies 2024

MITテクノロジーレビューは毎年、世界に真のインパクトを与える有望なテクノロジーを探している。本誌がいま最も重要だと考える進歩を紹介しよう。

記事一覧を見る
気候テック企業15 2023

MITテクノロジーレビューの「気候テック企業15」は、温室効果ガスの排出量を大幅に削減する、あるいは地球温暖化の脅威に対処できる可能性が高い有望な「気候テック企業」の年次リストである。

記事一覧を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る