KADOKAWA Technology Review
×
「Innovators Under 35 Japan」2024年度候補者募集中!
CO2排出量は車の5倍、力任せの深層学習は環境に悪すぎる
Dean Mouhtaropoulos | Getty; edited by MIT Technology Review
人工知能(AI) Insider Online限定
Training a single AI model can emit as much carbon as five cars in their lifetimes

CO2排出量は車の5倍、力任せの深層学習は環境に悪すぎる

深層学習を使った価値あるAI研究は莫大な計算資源を必要とし、大量の二酸化炭素を排出する。学術界と産業界の大きなギャップも問題だ。 by Karen Hao2019.08.27

人工知能(AI)産業はよく石油産業に例えられる。いったん採掘され、精製されると、データは石油のようにとても儲かる商品になる。今日、この比喩はもっと大きな意味を持つものになりそうだ。化石燃料と同様、深層学習のプロセスは環境にかなり大きな影響を与えるからだ。

マサチューセッツ大学アマースト校の研究チームは、一般的な大規模AIモデルの訓練について、ライフ・サイクル・アセスメント(LCA:製品やサービスのライフサイクル全体に関する環境影響評価)を実施した(論文はこちら)。その結果、大規模AIモデルの訓練は、二酸化炭素換算量で約284トン以上を排出することが明らかになった。平均的なアメリカ車が耐用年数内に放出する炭素量(車両の生産を含む)のほぼ5倍に相当する値だ。

AI研究者は以前からうすうす気づいてはいたものの、衝撃的な値である。「おそらく、私たちの多くはこれまで抽象的に漠然と捉えていたと思います。発表された数字は問題の深刻さを示しています」。スペインのア・コルーニャ大学のコンピュータ科学者であるカルロス・ゴメス・ロドリゲス准教授はこう話す(同准教授は今回の研究には関わっていない)。「私自身も、二酸化炭素の排出について一緒に議論した研究者も、環境への影響がそれほど重大だとは思っていませんでした」。

自然言語処理の二酸化炭素排出量を調査

この論文では、自然言語処理(NLP)モデルの訓練プロセスを重点的に検証している。 NLPは、機械に人間の言語を教え、処理させることに特化したAIのサブ分野である。過去2年間、NLPの研究コミュニティは、機械翻訳、文章完成法、その他の標準的なベンチマーク・タスクにおいて、いくつかの著しい成果を上げている。たとえば、オープンAI(OpenAI)の有名なモデル「GPT-2」は、説得力のあるフェイクニュース記事を書くことに卓越している。

だが、精度の高いNLPには、インターネット上から収集した大量の文章のデータセットを使った、より大規模なモデルの訓練が必要になる。計算コストが高く、極めて大きなエネルギーを消費して …

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. AI can make you more creative—but it has limits 生成AIは人間の創造性を高めるか? 新研究で限界が明らかに
  2. Promotion Call for entries for Innovators Under 35 Japan 2024 「Innovators Under 35 Japan」2024年度候補者募集のお知らせ
  3. A new weather prediction model from Google combines AI with traditional physics グーグルが気象予測で新モデル、機械学習と物理学を統合
  4. How to fix a Windows PC affected by the global outage 世界規模のウィンドウズPCトラブル、IT部門「最悪の週末」に
  5. The next generation of mRNA vaccines is on its way 日本で承認された新世代mRNAワクチン、従来とどう違うのか?
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年も候補者の募集を開始しました。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る