地球の大気を巨大レンズにする「テラスコープ」の可能性
望遠鏡は口径を大きくするほど、遠くの宇宙まで観測できるようになるが、大きな望遠鏡を建設するのには莫大な費用がかかる。コロンビア大学の研究者は、地球の大気による光の屈折現象を利用することで、直径150メートルの地上望遠鏡に匹敵する集光力を備えた、地球サイズの望遠鏡「テラスコープ」を実現できる可能性を示した。 by Emerging Technology from the arXiv2019.08.16
望遠鏡には莫大な費用がかかる。現在、チリのアタカマ砂漠で建設中の合成有効口径25メートルの「巨大マゼラン望遠鏡」の建設費は約10億ドル、ハワイのマウナケア山頂での建設が計画されている「30メートル望遠鏡」には20億ドルの費用がかかる見込みだ。
宇宙望遠鏡にはさらに費用がかかる。2021年に「ハッブル宇宙望遠鏡」を引き継ぐ予定の主鏡口径6.5メートルの「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」は打ち上げが度々延期され、100億ドル以上の費用がかかっている。
そのため、天文学者は費用がかからない革新的な宇宙観測方法を探し求めている。
ニューヨークにあるコロンビア大学のデイビッド・キッピング助教授は先日、天体観測のために地球の大気を使って光を集める方法を提案した。地球全体を一種の巨大なレンズとして使用し、その焦点に宇宙望遠鏡を配置してスナップ写真を撮るというアイデアだ。「テラスコープ」と呼ばれるこの望遠鏡は、これまでと比較するとわずかな費用で有効口径150メートルの地上望遠鏡の集光力を備えられるという。
最初にいくつかの基本知識をおさらいしておこう。天文学の世界では、光が大気を通過する時に曲がることは長い間知られている。「この影響で日の入り時の太陽は、実際よりも0.5度余り高い位置に見えます」とキッピング助教授は論文の中で説明する。
この効果を惑星規模で活用するのが同助教授のアイデアだ。「およそ地球と月の距離、またはそれを超える程度の距離にいる観測者は、地球を屈折レンズとして活用できるでしょう」。
そのようなレンズには複雑な要素が絡み合う。そこで、キッピング助教授はレンズの特性と、巨大なテラスコープでその特性をどのように活用できるかを研究し、シミュレーションを …
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