暗号通貨の電力消費問題、光コンピューティングは解決策になるか?
「電気喰い」で知られるビットコインのマイニング・コストを下げるさまざまな方法が研究されている。光コンピューティングを使った「光プルーフ・オブ・ワーク」は問題の解決になるのだろうか? by Emerging Technology from the arXiv2019.12.26
2017年末、ビットコイン・バブルがはじけたとき、ビットコインの価格は1万7000ドルからわずか数日で7000ドル以下にまで下落した。暗号通貨ブームは突如として終わりを迎えたようだと、世界各地のニュースで報じられた。
だが、ビットコインの価格が下がるにつれ奇妙なことが起こった。ビットコインの生成、あるいはマイニング(採掘)の速度が劇的に上がったのだ。価格が下がってもなおビットコイン・マイニングは多大な利益を生むのがその理由だった。マイニングコスト、つまりハードウェアの価格と稼働に必要なエネルギー価格の合計よりも、生成されたビットコインの価格のほうがまだ高かったのだ。
マイニング・ブームはほぼ1年間続いた。そして2018年11月、ビットコインの価格は再び暴落した。この時の価格は約6500ドルから3500ドル以下にまで下落した。
これは多くのマイナーにとって大打撃となった。突如としてビットコインはハードウェアを動かすエネルギー・コストを賄えるだけの価値を失い、鉱山は閉鎖されていった。暗号通貨の歴史上初めてハッシュレート(1秒あたりの演算回数、採掘速度)が急落し、毎秒60エクサハッシュから35エクサハッシュにまで下がってしまった。
その影響は甚大だった。それまでマイニングはさまざまな地域で実施されており、単一の国や地域が不当な影響力を持つことを防ぐ結果につながっていた。現在ではエネルギー価格が低い地域でないと採算が合わないため、マイニングは主に中国西部で実施されている。そして中国は暗号通貨に対する監視を強めており、取引所を閉鎖し、活動を規制している。
これはビットコインの存続に関わる危機だ。以来、暗号通貨の専門家は必死に解決法を模索している。
根本的な問題は、ビットコイン・マイニングの計算コストが高いことだ。暗号通貨の安全性を保つための意図的な仕掛けだが、計算には莫大な電力を使う。そして暗号通貨への関心が高まるにつれて電力消費量も増えていく。
ある概算によると、ビットコイン・マイニングは現在、年間75テラワット時を超える電力を消費している。オーストリア全体の電力消費を上回る電力だ。これでは持続可能とはいえない。暗号通貨コミュニティの望み通りに、ビットコインが指数関数的に成長するのであればなおのことだ。したがって、新しいマイニング方法が切望されている。
そこで、マイケル・ドゥブロフスキー(非営利団体PoWx)、ニューヨークの …
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