MOOCブームの火付け役 大学教育より職業訓練に夢中
セバスチアン・スランは膨大なオンラインのオープン大学コースの熱狂に火がつく発端となったが、自身は職業訓練に焦点を当てたスタートアップ企業に方向転換した。 by Tom Simonite2016.12.15
なぜほんの数年前に自分が世界に売り込んだ教育革命を、自分自身はもう信じていないのかを説明しながら、スタンフォード大学のセバスチアン・スラン教授(非常勤)はやや気まずそうに笑った。
細身で、はげかかったロボット工学のパイオニアは、地球上のあらゆる人に質の高い教育を受ける機会を与えると宣伝し(“The Crisis in Higher Education”参照)、教育プラットフォーム「MOOC(Massive Open Online Course)」や巨大なオンラインのオープンコースに何百万ドルもの金額をつぎ込むよう、投資家や政府、同僚を説得するのに尽力してきた。スラン教授は、2011年に人工知能に関する入門コースをオンラインに掲載した時に、ふとしたことから16万人もの学生を集め、この熱狂の発端を作り出した。
反応に仰天したスラン教授は、スタンフォード大学と自律自動車等を研究していたグーグルでの副業を休業し、コンピューティングや数学、物理学分野でMOOCを提供する会社「ユダシティ」を創業した。
ユダシティはベンチャーキャピタル投資で1億6000万ドルを集め、サンノゼ州立大学と組んで大学の単位として認定されるコースを提供することになった。しかしユダシティを立ち上げてから2年も経たないうちに、スラン教授はMOOCが現在の形のままで世界に本当に影響を与えられるのか疑問に抱くようになった。
ユダシティのコース修了率はわずか2%で、最後までやり遂げた人びとは、もともと高い意欲があり、すでに従来の機関で十分に教育を受けた学生がほとんどだった。多くの人びとがもっとよい仕事に就くためにMOOCに期待したのは明らかだったが、MOOC事業者は人びとのニーズを満たすよりも、大学と張り合うことに重点を置いたようだった。
今ではユダシティの社長であるスラン教授は、テクノロジー産業で新しい仕事を得るための扉として売り込むという、同社創業時のアイデアから会社を引き離すことにそれほど時間を無駄遣いすることはなかった。ユダシティはアマゾンやフェイスブックといった雇用者とパートナー提携を結び、明解に職業訓練である「ナノ学位」を提供することになった。
「MOOCの領域から離れてよかったと思います。私たちは、どんな大学にもない、学生に仕事を見つける力をつけさせる教育課程を用意することで、大学を凌駕できるのです」
ユダシティは企業パートナーと協力して、機械学習やモバイルアプリ開発など、パートナー企業が求める能力のある就職候補者を生み出すため …
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