KADOKAWA Technology Review
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フェイスブック「リブラ」が方針転換、ただの「電子マネー」に?
Bill Clark/CQ Roll Call | AP Images
Facebook’s digital currency project just got a lot less audacious

フェイスブック「リブラ」が方針転換、ただの「電子マネー」に?

フェイスブックが同社独自の暗号通貨「リブラ」について新たなホワイト・ペーパーを発表した。「世界通貨」を目指すとした当初の計画は大幅にトーンダウンしており、もはや暗号通貨とさえ呼べないものになるかもしれない。 by Mike Orcutt2020.04.21

「リブラ(Libra)」を覚えているだろうか? 世界規模のデジタル通貨を開発するというフェイスブックの計画だ。2019年6月に計画が発表されるや否や、世界中の政策立案者や中央銀行に猛反対された。その後、開発チームは振り出しに戻り、この4月16日に新たなビジョンとともにリブラを再登場させた。当初の計画よりもかなり謙虚になった形だ。

重要な変更点を以下にまとめる。

真新しい計画
当初のビジョンではリブラは、米ドル、ユーロ、英ポンド、日本円、シンガポール・ドルといった法定通貨の混合建ての現金と低リスク国債に裏付けされた「単一のステーブルコイン(安定通貨)」になるとしていた。しかし、新たなリブラはそうではない。

新たに発表されたリブラのホワイト・ペーパーによると、規制当局の主な懸念は「複数通貨を組み合わせたリブラが、金融自主権を侵害する可能性」だったという。そこでリブラは新たな戦略を取ることにした。リブラを管理するためにフェイスブックが立ち上げた非営利組織「リブラ協会(Libra Association)」が、単一通貨建ての「複数のステーブルコイン」を発行するのだ(ドル、円など裏付けとなる通貨ごとのリブラが発行される)。当初計画されていたリブラ通貨も発行されるが、「リブラ内で利用可能な単一通貨建てステーブルコインを複数組み合わせたデジタル通貨」になる見込みだ。

中央銀行を歓待
ホワイト・ペーパーによると、新たなアプローチは「中央銀行によるデジタル通貨(CBDC)が利用可能になった際にシームレスに統合するための明確な道筋」を作ることになるだろうとしている。さらに、将来的に各国の中央銀行が、すでにリブラ上に存在する通貨のデジタル版を独自に発行する場合には、リブラ協会は単一通貨建てのステーブルコインをCBDCと置き換える可能性があるとも付け加えている。

もはや「暗号通貨」とは言えないのかもしれない
リブラはビットコインや他の暗号通貨ネットワークを管理する技術(ブロックチェーン)の影響を受けた分散型台帳技術を使うことになるだろうが、暗号通貨純粋主義者の中に、リブラを真の暗号通貨とみなす者はほとんどいないだろう。ビットコインや同種の暗号通貨は、その特徴として「非許可型 (パーミッションレス)」であることが挙げられる。これは、適切なハードウェアを有する者であれば誰もがネットワーク上の共有ソフトウェアを実行でき、進行中の新たなトランザクションに対する承認作業に貢献できるとする形態だ。一方、リブラのネットワークにおける承認者は、リブラ協会の審査を受け、許可を得る必要がある。

当初の計画では、許可型ブロックチェーンは出発点に過ぎないものであるはずだった。発表当時のホワイト・ペーパーでは、最終的には非許可型ブロックチェーンへ移行するとしていた。しかし現在、リブラ協会は規制当局と折り合いがつかないと決断したようだ。フェイスブックのブロックチェーン部門の責任者であるデビッド・マーカスはツイッターで、当初の計画に代えて「オープンで競争力のある市場主導型ネットワーク」を目指す新たなアプローチを掲げることにしたと述べている。

マーカスもホワイト・ペーパーも、「オープンで競争力のある市場主導型ネットワーク」が具体的に何を意味するのかは明らかにしていない。しかし、リブラが一般に「暗号通貨」と呼ばれるものと一線を画すことになることは明らかだ。

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暗号通貨とブロックチェーンを担当するMITテクノロジーレビューの准編集者です。週2回発行しているブロックチェーンに関する電子メール・ニュースレター「Chain Letter」を含め、「なぜブロックチェーン・テクノロジーが重要なのか? 」という疑問を中心に報道しています。
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