KADOKAWA Technology Review
×
「Innovators Under 35 Japan」2024年度候補者募集中!
長引く社会的距離措置は
いつ緩和できるのか?
Getty
カバーストーリー 無料会員限定
The tricky math of lifting coronavirus lockdowns

長引く社会的距離措置は
いつ緩和できるのか?

新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴って実施されている社会的距離措置はいつ緩和できるか? カリフォルニア大学とマサチューセッツ工科大学の研究者は、アウトブレイクの大規模な再発を引き起こすことなく、人々が移動できる量を割り出した。 by James Temple2020.04.23

サンフランシスコでは2月下旬以降、職場や公園、駅、店舗への移動が全体で通常の約40%に減少した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大防止策としてまず地域レベルで、その後カリフォルニア州全土で施行された厳しい社会的距離(ソーシャル・ディスタンス)措置の結果だ。

デバイス上の位置追跡を有効にしているユーザーからデータを集計するグーグルの「コミュニティ・モビリティ・レポート」の分析によると、ニューヨークやカナダのブリティッシュコロンビア州、ロサンゼルスにおいても、人々の移動はアウトブレイク前の30%から55%にまで激減したという。

カリフォルニア大学バークレー校とマサチューセッツ工科大学(MIT)の2人の研究者は、そのデータを起点として、アウトブレイクの大規模な再発を引き起こすことなく、人々はどれだけ自由に動き回れるのか? という重要な質問に答えている。ロックダウン前の症例件数の増加率を概算し、移動の減少が新型コロナウイルス感染症の蔓延に及ぼす影響を計算するのに妥当と思われる方法を採用することで、2人はサンフランシスコが通常の移動量の70%にまで戻れる可能性があると推測する。ブリティッシュコロンビア州では、早期に広範な検査をして感染曲線を平坦化できたため、78%にまで戻れる可能性がある。

分析の結果、カリフォルニア州の新型コロナウイルス感染症の患者の中でも致死率の割合が不均衡に高いロサンゼルスのような地域でさえ、初期の波のピークが過ぎたくらいのタイミングで移動量を増やせる可能性があることがわかった。

だが、研究を実施したカリフォルニア大学バークレー校のジェイコブ・スタインハート助教授(統計学)は、この結論は非常に不確実なもので、推定値が高すぎる可能性もあると強調している。スタインハート助教授はさらに、同地域はまず感染率においてリバウンドを迅速に検出するための効果的な感染追跡手段を導入する必要があり、それなしに制限を大幅に緩和すべきではないと付け加えている。

下限値で見た場合、前述の地域では移動量をそれぞれベースライン・レベルの41%、35%、37%に保つ必要があるかもしれない。当然のことながら、これらの範囲の両極端では、公共政策は大きく異なったものになる。

こうした不確実性は、社会的距離措置の解除の影響を見積もることがどれほど難しいかの表れといえ …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. AI can make you more creative—but it has limits 生成AIは人間の創造性を高めるか? 新研究で限界が明らかに
  2. Promotion Call for entries for Innovators Under 35 Japan 2024 「Innovators Under 35 Japan」2024年度候補者募集のお知らせ
  3. A new weather prediction model from Google combines AI with traditional physics グーグルが気象予測で新モデル、機械学習と物理学を統合
  4. How to fix a Windows PC affected by the global outage 世界規模のウィンドウズPCトラブル、IT部門「最悪の週末」に
  5. The next generation of mRNA vaccines is on its way 日本で承認された新世代mRNAワクチン、従来とどう違うのか?
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年も候補者の募集を開始しました。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る