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「ムーアの法則」終焉後の
世界にどう備えるか?
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We’re not prepared for the end of Moore’s Law

「ムーアの法則」終焉後の
世界にどう備えるか?

半導体産業は過去50年間、業界目標とも言える「ムーアの法則」に従って繁栄してきた。だが、その終わりが見えつつある。問題は、現在の汎用チップの後継になることが明らかなものが見つかっていないことだ。 by David Rotman2020.07.01

ゴードン・ムーアが1965年に発表した「集積回路の部品数は毎年2倍ずつ増え続け、1975年に6万5千個という驚異的な数に達するだろう」との予測は、過去半世紀で最も偉大な技術予測だ。1975年、この予測が正しかったことが証明されたとき、ムーアは『ムーアの法則』として知られるようになっていた予測を、「2年ごとに集積回路上のトランジスターが2倍になる」と修正した。

以来、ムーアの予言はテクノロジーの軌跡と、多くの意味で進歩そのものを定義してきた。

ムーアの主張は経済的観点からのものだった。シリコンウェハー上の小さな四角い領域にトランジスターなど複数の電子デバイスをアルミニウムで配線した集積回路は、1959年、フェアチャイルド・セミコンダクター(Fairchild Semiconductor)のロバート・ノイスによって発明された。フェアチャイルド・セミコンダクターの研究開発部長だったムーアは、こういった新しい集積回路では、「部品あたりのコストが部品の数にほぼ反比例する」ことが分かったと1965年に書いている。理論的に見て、トランジスターの数を増やすほど、それぞれのコストが安くなるという関係は美しかった。また、ムーアは、集積回路上のトランジスター数を増やす工学的進歩の余地は、コストの点でも信頼性の点でも大きく残されているとも考えていた。

まもなく、こういった安価で強力なチップは、経済学者が「汎用技術」と呼び、複数の産業で他のあらゆる種類のイノベーションや進歩を生み出す基盤技術となった。数年前の有力な経済学者の評価によれば、1974年以降の米国の生産性の伸びの3分の1は、集積回路によって実現した情報技術によるものだとしている。スマートフォンから、安価なラップトップやGPSに至るまで、私たちが関心を寄せるあらゆるほとんどのテクノロジーは、ムーアの予言を直接反映したものだ。また、ムーアの予言は、現在の人工知能(AI)や遺伝子医学におけるブレークスルーにも貢献している。大量のデータを解析する能力を機械学習技術に与えたのである。

だが、どうやって、当時はわずかなデータポイントしかなかったトランジスター数の年ごとのグラフから、その後半世紀もの進歩を単純な予測で定義できたのだろうか? 少なくとも部分的には、半導体産業が「そうする」と決めたのだった。

ムーアは、1965年の論文『さらに多くの部品を集積回路に詰め込む(cramming more components onto integrated circuits)』に、「家庭用コンピューター(あるいは少なくともセンターのコンピューターに接続された端末)や自動車の自動制御装置、個人用携帯通信機器などの驚異な進歩につながるだろう」と書いている。つまり、さらに多くのトランジスターを次々とチップに詰め込むというムーアのロードマップに従えば、「約束の地」にたどり着けるということだ。そして、その後数十年にわたり、好況な産業界や政府、学術界、産業界の多くの研究者たちは、資金と時間を投じて、異様なほどの正確さで進歩のスピードを維持し、自己実現的な予言を創り出すことで、ムーアの法則を支持してきた。近年は進歩のペースが落ちてきているものの、現在、最先端のチップには500億個近くのトランジスターが搭載されている。

MITテクノロジーレビューは、2001年から毎年、その年の最も重要な「ブレークスルー・テクノロジー10」を選出している。ほとんど例外なく、ムーアの法則に記された進歩の計算式があったからこそ実現した技術のリストだ。

2020年版にあげられたいくつかの技術とムーアの法則との関連性は明らかだ。たとえば、AIを搭載した時計や電話などの消費者向けデバイス、進化したコンピューター・モデリングと世界中の大気モニタリング・システムから収集されたデータによって実現した気候変動の要因分析、そして安価な小型人工衛星などだ。量子超越性や、AIを活用して発見された分子、抗老化治療や超個別化医療など、リストにあるその他の技術も、研究者が活用できる計算能力によるところが大きい。

しかし、ムーアの法則の終焉が避けられないとしたらどうだろうか? あるいは、一部の人々はすでに疑問に思っていることだが、すでにムーアの法則はとうに終わっていて、すでに現代最大のテクノロジー・エンジンの煙の中を走っているとしたらどうだろうか?

安らかに眠れ

「ムーアの法則は終わりました。今年、本当の意味で明らかになりました」。マサチューセッツ工科大学(MIT)のコンピューター科学者であり、複数の計算を同時に実行する並列コンピューティングの先駆者であるチャールズ・ライザーソン教授はこう話す。インテルの最先端工場における10ナノメートル(nm)・プロセスによるチップ生産は大幅に遅れている。これは元々、1つ前の世代の14ナノメートル・プロセ …

半導体産業は過去50年間、業界目標とも言える「ムーアの法則」に従って繁栄してきた。だが、その終わりが見えつつある。問題は、現在の汎用チップの後継になることが明らかなものが見つかっていないことだ。
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