NASA、スペースX——パンデミックで逆風の宇宙産業はどう動いたか?
新型コロナウイルス感染症のパンデミックのさなかにおいては、宇宙産業も活動を減速あるいは停止することを余儀なくされ、中には破産してしまった企業もあった。宇宙産業に関わる組織や企業の現状について報告する。 by Neel V. Patel2020.06.12
世界中の活動は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の蔓延を阻止するために政府によって課せられたロックダウンにより、減速または停止している。宇宙産業といえども例外ではない。新型コロナウイルス感染症のパンデミックの影響を免れることはできていない。5月30日のスペースX(Space X)と米国航空宇宙局(NASA)による、宇宙飛行士を国際宇宙ステーション(ISS)へ送り届ける「クルー・ドラゴン(Crew Dragon)」の打ち上げは例外的なものであった。
だが、だからといって宇宙産業が終わったわけではない。NASAも、他の国も、民間産業も、リモートで活動を継続する新たな方法を探している。また、現在の状況を活かして、新たな活動に進出しようともしている。宇宙産業が自身の活動を変化させている取り組みの中で、大きなものをいくつか紹介する。
NASAの活動停止……のようなもの
3月8日、カリフォルニア州にあるNASAのエイムズ研究センター(Ames Research Center)は、強制的なテレワークの方針を打ち出した最初の主要な施設となった。従業員の1名が新型コロナウイルス感染症の検査で陽性反応を示したためだ。NASAの残りの施設もすぐに後に続いた。
リモートで実行できるあらゆる職務は、テレワークに移行した。これには現在進行中のミッションや研究プロジェクトのほとんどが含まれる。現場で実施する必要はあるが、後回しにできる作業はすべて中断された。大幅に遅れていた「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(James Webb Space Telescope)」の業務さえも中断された。
ただし、「ミッションクリティカル」(厳密なスケジュールを遵守する必要があるプロジェクト)とみなされたプロジェクトは、テレワークの対象から除外された。ジェット推進研究所の火星探査機「マーズ2020」探査車(現在はパーサヴィアランス(Perseverance)と呼ばれている)と、ケネディ宇宙センター(Kennedy Space Center)から打ち上げられるスペースXのクルー・ドラゴンがそうだ。火星へのミッションは、燃料とエネルギーのコストを抑えるために、地球と火星が最も近づいたときに打ち上げられる。この好機は約2年ごとに訪れるため、予定通りに火星に到着させるためには、マーズ2020はこの夏の終わり頃までに打ち上げる必要があるのだ。クルー・ドラゴンについては、ISSのミッションを延期すると、この先、宇宙ステーションのクルー欠員が生じるリスクがあるからというのが、ミッションクリティカルである論拠とされた。
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