金星で数十の火山が活動中か、従来仮説覆す 「コロナ」で判明
金星にはここ数百万年以内に噴火した大規模火山の痕跡があり、同惑星を帯状に取り巻くように分布しているとする研究結果が発表された。火山活動は金星で過去5億年は起こっていないとするこれまでの仮説を覆す結果だ。 by Neel V. Patel2020.07.22
国際的な研究者グループが、金星の火山構造を37個特定した。金星では最近、火山活動が活性化しており、現在も活動中である可能性が高いという。金星では火山活動はほとんどが休眠状態にあるとするこれまでの仮説を覆すこの研究結果は、7月20日付のネイチャー・ジオサイエンス(Nature Geoscience)誌に掲載された。
地球と金星は似ていない。地球ではプレートテクトニクスによる動きが絶えず、地表は徐々に形成される。金星にはそのような動きが見られないことから、多くの科学者が、金星の火山活動は過去5億年間起こっていないと推測していた。しかし、この仮説がきちんと検証されたことはなかった。金星表面が非常に厚い大気に覆われ、著しく高温であるため、調査が困難であったからだ。
今回の新説を発表した研究者らは、「コロナ」と呼ばれるリング状の構造に着目した。コロナは金星の内部から湧き上がる火山物質で構成され、火山活動の兆候を示す。同研究グループは独自開発したシミュレーションで、金星におけるコロナの活動を、欧州宇宙機関(ESA)による2014年終了のミッションで収集した熱データに基づいてモデル化した。これらのシミュレーションから研究者らの得たアイデアは、金星表面の何らかの特徴を探し、活火山の状態を示すコロナを特定するという手法だ。具体的には、コロナの外輪を取り巻く溝と、溝の縁を取り巻く盛り上がりである。
そこで研究者らは、米国航空宇宙局(NASA)の金星探査機「マゼラン(Magellan)」が1990年代初頭に収集した赤外画像による金星地形データから、こうした特徴を探した。そして、全部で133個のコロナ状構造を特定して地形図を作製した。そのうち37個は過去数百万年以内に噴火した大規模火山のホットスポットだという。地質学的なタイムスケールではごく最近だ。
ホットスポットと見なされたコロナの大半は、金星を帯状に取り巻くように分布していた。同研究者らはこの分布パターンを「リング・オブ・ファイア(火の輪)」と呼んでいる。リング・オブ・ファイアのコロナは、地球上のどの火山よりはるかに大きい。最大の「アルテミス(Artemis)」は直径約2100キロメートルに及ぶ(地球最大の活火山であるハワイのマウナロア火山でも、直径はわずか120キロメートルほどだ)。
今回の研究成果は、金星がこれまで考えれていたより活動的であるということを示唆している。少なくとも地表はそうである。ただし、最近の地表での地殻変動とマグマ活動のシミュレーションからは、金星深部の実際の状況を具体的に知ることはできない。火山活動が進行中だと確認できる唯一の方法は、金星表面を分析できる宇宙探査船のミッションで金星を調査することだ。この新たな研究成果が追い風となって、NASAのミッション案の1つに対する支持が強まる可能性がある。このミッションが実現すれば、金星の表面の地形図が作成され、金星の地質学について新しい洞察が得られる可能性がある。
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- ニール・V・パテル [Neel V. Patel]米国版 宇宙担当記者
- MITテクノロジーレビューの宇宙担当記者。地球外で起こっているすべてのことを扱うニュースレター「ジ・エアロック(The Airlock)」の執筆も担当している。MITテクノロジーレビュー入社前は、フリーランスの科学技術ジャーナリストとして、ポピュラー・サイエンス(Popular Science)、デイリー・ビースト(The Daily Beast)、スレート(Slate)、ワイアード(Wired)、ヴァージ(the Verge)などに寄稿。独立前は、インバース(Inverse)の准編集者として、宇宙報道の強化をリードした。