KADOKAWA Technology Review
×
「Innovators Under 35 Japan」2024年度候補者募集中!
フェイスブック、AIの差別問題を調査する社内チーム設置へ
NeONBRAND / Unsplash
Facebook says it will look for racial bias in its algorithms

フェイスブック、AIの差別問題を調査する社内チーム設置へ

人工知能(AI)アルゴリズムの偏見(バイアス)批判を受けて、フェイスブックが社内チームを発足した。アルゴリズムの是正につながるか。 by Will Douglas Heaven2020.07.27

フェイスブックが自社のソーシャル・ネットワークおよびインスタグラムのアルゴリズムに、人種差別を調査する新しい社内チームを設置すると発表した。ウォール・ストリート・ジャーナルが報じた。特に今回の調査は、訓練データに符号化されて埋め込まれた人種差別によって、機械学習が黒人やヒスパニック系および他のマイノリティ集団に与える悪影響に対処するという。

この数年、多くの研究者や活動家が、人工知能(AI)における偏見と、マイノリティに対する不均衡な影響に関する問題を浮き彫りにしてきた。機械学習を使って25億人のユーザーの日常体験をキュレーションするフェイスブックは、長らくこのような内部評価を実施すべき状態にあった。例えば、フェイスブックの広告配信アルゴリズムが人種差別を行ない、広告主が特定の人種グループに広告を表示させないことを許可していた証拠はすでに存在する。

フェイスブックはこれまで、同社のシステムが抱えるバイアス(偏見)に対する批判を回避してきたが、数年にわたる批判的報道と人権活動団体の圧力によって今回の対応に至った。フェイスブックは、名誉毀損防止同盟(Anti-Defamation League)やカラー・オブ・チェンジ(Color of Change)、全米黒人地位向上協会(NAACP)を含む複数の人権活動団体が組織した広告ボイコットを、1カ月にわたって受けてきた。コカ・コーラやディズニー、マクドナルド、スターバックスのような広告に多額を投じる企業が広告キャンペーンを停止したことで、今回の新しい調査チームの発足に至っている。

歓迎すべき動きだ。だが、調査を開始することと、実際に人種差別の問題を解決することには大きな隔たりがある。解決策が分かっていない現状を考慮すればなおさらだ。ほとんどの場合、偏見は訓練データの中に存在し、それを取り除く優れた方法は存在しない。また、アルゴリズムの差別是正措置の1つとしてそのようなデータを調整することには、賛否両論ある。機械学習の偏見は、人種をめぐるソーシャル・メディアの問題の1つにすぎない。機械学習のアルゴリズムを調査するのであれば、フェイスブックは人種差別的な政治家や白人至上主義団体、ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)否定論者に発信の場を与える方針の再検討にも取り組み、より幅広い見直しをかけるべきだ。

人気の記事ランキング
  1. AI can make you more creative—but it has limits 生成AIは人間の創造性を高めるか? 新研究で限界が明らかに
  2. Promotion Call for entries for Innovators Under 35 Japan 2024 「Innovators Under 35 Japan」2024年度候補者募集のお知らせ
  3. A new weather prediction model from Google combines AI with traditional physics グーグルが気象予測で新モデル、機械学習と物理学を統合
  4. How to fix a Windows PC affected by the global outage 世界規模のウィンドウズPCトラブル、IT部門「最悪の週末」に
  5. The next generation of mRNA vaccines is on its way 日本で承認された新世代mRNAワクチン、従来とどう違うのか?
ウィル・ダグラス・ヘブン [Will Douglas Heaven]米国版 AI担当上級編集者
AI担当上級編集者として、新研究や新トレンド、その背後にいる人々を取材しています。前職では、テクノロジーと政治に関するBBCのWebサイト「フューチャー・ナウ(Future Now)」の創刊編集長、ニュー・サイエンティスト(New Scientist)誌のテクノロジー統括編集長を務めていました。インペリアル・カレッジ・ロンドンでコンピュータサイエンスの博士号を取得しており、ロボット制御についての知識があります。
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年も候補者の募集を開始しました。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る