増え続ける「宇宙ゴミ」を正確に追跡する新手法、日中でも
地球の周囲を漂う宇宙ゴミが、人工衛星の安全にとって大きな問題となっている。オーストリアの研究者らは、日中に宇宙ゴミの反射光を観測することで、宇宙ゴミ追跡の精度を向上できる新たな手法を開発した。 by Neel V. Patel2020.08.11
宇宙ゴミ(スペース・デブリ)はすぐに消えることはなく、このゴミが引き起こす問題もなくならない。年を追うごとに打ち上げられる人工衛星の数は増えるだろう。つまり、制御されていないロケットや宇宙船の破片はますます増加し、時速3万5400キロメートル以上の速度で飛び交うようになる。この速度では、長さ数センチの物体でも一瞬で人工衛星を破壊できてしまうため、さらに多くのゴミが宇宙空間に散らばることになる。
この宇宙ゴミをどのように処理すればよいのだろうか。レーダーやソナーのように強力なレーザーを使えば、飛び交う物体の距離を測定できる。レーザー光線が軌道上のゴミに当たり、跳ね返って地球に届くと、地上の要員がそれにかかる時間を測定し、ゴミがどこにあり、どこに向かっているかを推測し、起こり得る他の物体との衝突を警告できる。このレーザー測距技術は、人工衛星を追跡する手法としては決して新しいものではない。しかしパデュー大学の宇宙力学専門家であるキャロリン・フリュイ助教授は、「宇宙ゴミを追跡するとなると状況は異なります」と言う。宇宙ゴミは安定した軌道上には留まらない。宇宙ゴミは「回転し始め、急激な姿勢運動をする可能性があり、方向が安定しません」。レーザーによって検出される宇宙ゴミは、人工衛星を検出する場合よりランダムに現れるため、ゴミが向かっている場所を正確に予測するには、より継続的な観測が必要になる。
もっとも、レーザー測距では、距離にして数千キロまでの位置範囲しか分からない。これらの宇宙ゴミが反射する太陽光も測定することで、位置範囲をわずか数メートル …
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