KADOKAWA Technology Review
×
【4/24開催】生成AIで自動運転はどう変わるか?イベント参加受付中
顔認識技術、静かに浸透 大手テック撤退でも米警察は積極導入
Ms Tech | Unsplash
倫理/政策 Insider Online限定
There is a crisis of face recognition and policing in the US

顔認識技術、静かに浸透 大手テック撤退でも米警察は積極導入

顔認識テクノロジーには深刻な人種差別的な偏向があることが判明し、製品開発から撤退するベンダーや使用を禁止する大都市が相次いでいる。しかし警察では、世間のあずかり知らぬところで導入が進められているようだ。 by Tate Ryan-Mosley2020.08.23

デトロイト警察 がロバート・ウィリアムズを誤認逮捕した原因は顔認識システムによる誤判定だったというニュースが報じられたのは、6月下旬のことだった。このときデトロイトはすでに、1 カ月前に起こったジョージ・フロイドの死をめぐる混乱の只中にあった。そのすぐ後、さらに別の黒人男性マイケル・オリバーが、ウィリアムズと同様の状況で逮捕された。米国の大半が人種間の平等を叫び続ける一方で、顔認識技術と警察のかかわりについて形成されている議論はひそやかだ。よく耳を澄ましたほうがいいだろう。

MITテクノロジーレビュー(米国版)ポッドキャストの新番組「イン・マシーンズ・ウィ・トラスト(我ら機械を信ず)」で 、ジェニファー・ストロングと私が警察による顔認識技術の利用を取り上げ始めたとき、人工知能(AI)を用いた顔認識システムが米国や世界各国の警察に導入されていることは分かっていた。しかし、そのうちどれほどが世間の目の届かないところで進んでいるのかは知らなかった。

まず、米国では警察による顔認識の利用頻度が分からない。その理由は簡単で、ほとんどの管轄区域では顔認識を犯罪容疑者の特定に使用する際の報告が義務づけられていないからだ。直近の数字は2016年の推測値だが、これらの数字からは、当時、顔認識システム内に米国民のおよそ半数の写真があったことが読み取れる。フロリダ州のある郡では1カ月あたり8000回の検索が実行されていた。

さらに、どの警察が顔認識技術を導入しているのかも分からない。警察は設備の調達手順を非公開とすることがよくあるからだ。例えば、多くの警察が連邦補助金や非営利目的の寄付を使って顔認識テクノロジーを購入していること示す証拠がある。連邦補助金や寄付による購入は、情報開示を義務づけた法律の適用外となるのだ。そのほかにも、企業が警察に対して自社ソフトのトライアルを提供し、その期間中、警察は正式な認可や監督を受けることなくシステムを利用できるケースもある。そうすることで、顔認識システムの製造企業は自社製品が広く利用されていると主張でき、製品に対して、ポピュラーで信頼のおける犯罪解決ツールだという外向きの印象を付与できるのだ。

使い物にならない保護されたアルゴリズム

しかし、顔認識に関しては、それがいかに信頼できないかということがよく知られている。ポッドキャストの番組でも取り上げたとおり、ロンド …

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
【春割】実施中! ひと月あたり1,000円で読み放題
10 Breakthrough Technologies 2024

MITテクノロジーレビューは毎年、世界に真のインパクトを与える有望なテクノロジーを探している。本誌がいま最も重要だと考える進歩を紹介しよう。

記事一覧を見る
気候テック企業15 2023

MITテクノロジーレビューの「気候テック企業15」は、温室効果ガスの排出量を大幅に削減する、あるいは地球温暖化の脅威に対処できる可能性が高い有望な「気候テック企業」の年次リストである。

記事一覧を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る