KADOKAWA Technology Review
×
12/16開催 「再考ゲーミフィケーション」イベント参加受付中!
量子コンピューターは地下室に作れ 放射線の影響を新研究が解明
Timothy Holland, PNNL
宇宙 無料会員限定
Cosmic rays could pose a problem for future quantum computers

量子コンピューターは地下室に作れ 放射線の影響を新研究が解明

量子コンピューティングを実現するには、キュービットの状態をいかに安定させるかがカギとなる。最新の研究により、従来から指摘されていた振動や温度変化に加えて、自然放射線や宇宙からの放射線(宇宙線)が、キュービットの安定性を著しく損なわせることが分かった。 by Neel V. Patel2020.08.31

量子コンピューティングは、キュービット(量子ビット)を利用することで、複雑な問題を超高速で処理する可能性を秘めている。キュービットは通常、電子などの亜原子粒子で実装され、量子特性を利用することで、「0」か「1」かという従来のビットを超えた多数の組み合わせを表せる。ペアのキュービットは、たとえキュービット同士が非常に遠く離れていたとしても、「もつれ合う」ことにより、予測可能な形で互いの状態を変化させる。この現象により、処理能力をさらに向上させることが可能になる。

だが、量子コンピューティングによる超高速処理を実現するためにはコストがかかる。キュービットはほんのわずかな外乱にも大変敏感で、デコヒーレンスと呼ばれるプロセスを経て急速に減衰し、消滅してしまう。8月26日にネイチャー(Nature)誌に発表された最新の知見によると、宇宙放射線はデコヒーレンスの要因の1つであり、しかも特に厄介な問題となる可能性があるという。

この最新研究は、超伝導材料を使用し、電子のペアによりキュービットを生成するタイプの量子コンピューティングに基づいたものである。研究結果によると、コンクリート構造物といった私たちの周辺に普通にある物質が発生する自然放射線だけでも、このタイプのキュービット状態の有効寿命をわずか数ミリ秒にまで縮めるのに十分な影響力があり、量子コンピューター実用化のペースが鈍ることになるという。宇宙線によって生成される放射線であれば、さらに大きな影響を及ぼすことになる。

このことが問題となるのは、鉛に囲まれていたり地下に保管されたりしていない限り、基本的にこの種のどんなシステムも影響を受けるということだ。宇宙線に曝された場所はどんな場所であれ、量子コンピューティングのプロセスを実行する場所としては適さないことになる。

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. 3 things that didn’t make the 10 Breakthrough Technologies of 2025 list 2025年版「世界を変える10大技術」から漏れた候補3つ
  2. OpenAI’s new defense contract completes its military pivot オープンAIが防衛進出、「軍事利用禁止」から一転
▼Promotion 再考 ゲーミフィケーション
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年受賞者決定!授賞式を11/20に開催します。チケット販売中。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る