KADOKAWA Technology Review
×
グーグル、コロナ禍で人気のBGMを誰でも作れるAIツール
Google Magenta
Create your own moody quarantine music with Google’s AI

グーグル、コロナ禍で人気のBGMを誰でも作れるAIツール

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による外出規制によって、人々の心が沈み込んでいる。そんな気持ちを和らげるような優しいメロディを、機械学習によって誰でも簡単に作れる音楽プレーヤーをグーグルが開発した。 by Karen Hao2020.09.09

グーグルのマゼンタ(Magenta)チームは、創作プロセスのための機械学習ツールを開発しているチームだ。これまでに作曲を支援するモデルや、ネコのスケッチを補助してくれるツールを開発してきた。ただ楽しいだけでなく、人工知能(AI)がいかに創作を手軽なものにしてくれるのかを追求している。そんなマゼンタの最新プロジェクトは、心地よい巣ごもり音楽を作曲する機会を、誰にでも与えてくれる。しかも、そのために音楽のトレーニングを受ける必要はないのだ。

ローファイ・プレイヤー(Lo-Fi Player)は、この夏にチームに加わった、技術者でアーティストであるヴィベール・チョウ(張欣嘉)によってデザインされたものだ。ユーザーは、バーチャルの部屋の中にあるさまざまなオブジェクトとやりとりすることで、自分だけの「ローファイ・ヒップホップ」のサウンドトラックを生み出せる(日本版注:ローファイ・ヒップホップは2018年ごろからネット上で流行している歌なしの音楽ジャンル。作業用BGMとしてコロナ禍で人気が高まっている)。ローファイ・プレイヤーが目的としているのは、音楽を制作するという経験を、可能な限りシンプルでとっつきやすいものにすることだ。部屋は、ブラウザー上に表示されるドット絵で描かれた2次元空間である。異なるオブジェクトをクリックすることで、ユーザーは異なったトラックをいじることができる。例えば時計やピアノをクリックすると、ドラムラインやメロディを調整できるといった具合だ。

 

customize with ease gif

バックグラウンドでは、2つの機械学習モデルが動いている。ラジオに詰め込まれている1つ目のモデルは、クリックするとメロディを生成する。テレビに隠されている2つ目のモデルは2種類のメロディを補間して、どちらのメロディにも少し似ている新しいメロディを生み出す。

しかし、部屋にあるサウンドのほとんどは、機械学習によって生成されたものではない。これがある意味でポイントなのだ。一連のプロセスの中で、チョウはローファイ・ヒップホップの制作者たちと一緒に、ジャンルを象徴するような心地よい響きのベースライン、ドラムライン、そして背景音としてのアンビエンスを集めた。チョウはまた、ユーザーが選べるように、4種類のメロディの候補を作成した。機械学習は、それぞれのユーザーがユニークなミックスを作れるように、用意されたトラックの上に必要最低限の予測不能な要素を付け足すだけなのだ。

youtube streaming gif

ローファイ・プレイヤーの初期版は、ユーチューブでのインターラクティヴなライブ配信も含んでいる。ユーザーたちはチャット・ウィンドウにコマンドを入力することで、音楽を変化させることができる。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による外出規制の中で、音楽制作をより集合的な経験にしようというアイデアだ。ローファイ・プレイヤー・プロジェクトを監修した研究科学者のダグ・エックは、「こんなにも小さなものが、COVID-19のさなかで私たちを結びつけてくれるのです」と述べる。

ローファイ・プレイヤー・プロジェクトはまだ初期のバージョンだが、すでにチョウはさらに多くの可能性を見出している。チョウの夢見ているプロジェクトは、ある意味で音楽制作のためのティックトック(TikTok)を作ることである。つまり、ミュージシャンでない人も音楽編集で遊び、創作物をシェアし、自分を表現できるようなインターフェースを作ることだ。

人気の記事ランキング
  1. Forget dating apps: Here’s how the net’s newest matchmakers help you find love 出会い系アプリはもううんざり、「運命の人」探す新ネット文化
  2. NIHONBASHI SPACE WEEK 2021  アジア最大級の宇宙ビジネスイベントが東京・日本橋で開催
  3. Laptops alone can’t bridge the digital divide そしてそれはゴミになった 「一人1台のパソコン」の 失敗から得られた教訓
  4. How tackling tech’s diversity challenges can spur innovation デューク大のコンピューター科学者はなぜ「DEI」を学ばせるのか?
カーレン・ハオ [Karen Hao]米国版 AI担当記者
MITテクノロジーレビューの人工知能(AI)担当記者。特に、AIの倫理と社会的影響、社会貢献活動への応用といった領域についてカバーしています。AIに関する最新のニュースと研究内容を厳選して紹介する米国版ニュースレター「アルゴリズム(Algorithm)」の執筆も担当。グーグルX(Google X)からスピンアウトしたスタートアップ企業でのアプリケーション・エンジニア、クオーツ(Quartz)での記者/データ・サイエンティストの経験を経て、MITテクノロジーレビューに入社しました。
日本発「世界を変える」35歳未満のイノベーター

MITテクノロジーレビューが主催するグローバル・アワード「Innovators Under 35 」の日本版が候補者を募集している。特定の分野や業界だけでなく、世界全体の重要な課題を解決するイノベーターを発信していく。

記事一覧を見る
人気の記事ランキング
  1. Forget dating apps: Here’s how the net’s newest matchmakers help you find love 出会い系アプリはもううんざり、「運命の人」探す新ネット文化
  2. NIHONBASHI SPACE WEEK 2021  アジア最大級の宇宙ビジネスイベントが東京・日本橋で開催
  3. Laptops alone can’t bridge the digital divide そしてそれはゴミになった 「一人1台のパソコン」の 失敗から得られた教訓
  4. How tackling tech’s diversity challenges can spur innovation デューク大のコンピューター科学者はなぜ「DEI」を学ばせるのか?
MITテクノロジーレビュー[日本版] Vol.5
MITテクノロジーレビュー[日本版] Vol.5Cities Issue

新型コロナのパンデミックによって激変した都市生活は、ポストコロナでどう変わるのか? 都市部への人口集中が世界で加速する中、環境、災害、貧困といった負の側面をテクノロジーは解決できるのか? 多様な人々が集まり、化学反応が起きるイノベーションの集積地としての役割を都市は今後も果たし続けるのか? 世界の豊富な事例と識者への取材を通して、新しい都市の未来像を描く。

詳細を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る