スペースX、「スターシップ」試作機で高度12.5キロの記録達成
スペースX(SpaceX)は、同社の宇宙船「スターシップ(Starship)」の8代目試作機を、これまでの最高高度まで打ち上げることに成功した。同試作機は12.5キロメートルの高度に達した後、降下して垂直着陸を試みたが、地面に激突して爆発した。 by Neel V. Patel2020.12.14
スペースX(SpaceX)は12月9日、宇宙船「スターシップ(Starship)」試作機の初の高高度飛行に成功した。スターシップは、同社が将来的に人類を月や火星に運ぶことを想定しているロケットである。安全には着陸できなかったものの(実際のところ、着陸時の衝撃で爆発した)、スターシップの試作機による飛行としては最高高度を記録した。それでも、160キロメートル以上の位置にある地球周回軌道にはまだまだ足りない。
米国中央標準時の午後4時40分頃、スターシップはテキサス州ボカチカにあるスペースXの実験施設から発射された。12.5キロメートルの高度に達した後、降下して着陸を試みたが、落下速度が速すぎて地面に激突し、あとには煙を出し続ける残骸物が残された。滞空時間の合計は6分42秒だった。
Fuel header tank pressure was low during landing burn, causing touchdown velocity to be high & RUD, but we got all the data we needed! Congrats SpaceX team hell yeah!!
— Elon Musk (@elonmusk) December 9, 2020
今回の機体は、スペースXにとって8代目の試作機である(ニックネームは「SN8」)。8月の5代目の機体と9月の6代目(双方ともエンジンは1つのみ)が実現した高度150メートルの「ホップ(軽い跳躍)」に比べると、かなりの高度に達したことになる(7代目の「SN7」は圧力試験の一環として故意に爆発させたため、打ち上げられなかった)。同社の創業者であるイーロン・マスクは以前、3基のエンジンを備えたSN8が無事に飛行して着陸できる確率は3分の1程度しかないと見積もっていた。
スペースXがスターシップを初めて世界に披露したのは2019年9月のことである。同社が初めて実施したロケット打ち上げの11周年の日だった。スターシップは全長50m以上にもなる巨体で、燃料充填時の重量は1270トン以上になる。最終的には、巨大な1段目のブースター「スーパーヘビー(Super Heavy)」(開発中)の上に取り付けられ、6つのエンジンを備えた2段目ブースターとしての役割も果たすことになる。100トン以上の荷物と人員を深宇宙へと運ぶことになる。
スペースXの他の大型宇宙船と同様、スターシップも再利用を意図して設計されている。無人・有人にかかわらず、宇宙飛行の全体のコストを下げるためである。
マスクはツイッター上で、次の試作機である「SN9」と「SN10」についても、地上試験ではなく打ち上げをほのめかしている。だが、いつになるかについての手がかりは示されていない。スペースXは、今年はスターシップを地球周回軌道まで打ち上げなかったが、2021年には試みる可能性が高い。 マスクは先日、スペースXが2026年までに火星に人を送る可能性について「大きな自信がある」と語り、「幸運に恵まれれば」2024年もあり得ると述べた。
- 人気の記事ランキング
-
- A tiny new open-source AI model performs as well as powerful big ones 720億パラメーターでも「GPT-4o超え」、Ai2のオープンモデル
- The coolest thing about smart glasses is not the AR. It’s the AI. ようやく物になったスマートグラス、真価はARではなくAIにある
- Geoffrey Hinton, AI pioneer and figurehead of doomerism, wins Nobel Prize in Physics ジェフリー・ヒントン、 ノーベル物理学賞を受賞
- Geoffrey Hinton tells us why he’s now scared of the tech he helped build ジェフリー・ヒントン独白 「深層学習の父」はなぜ、 AIを恐れているのか?
- ニール・V・パテル [Neel V. Patel]米国版 宇宙担当記者
- MITテクノロジーレビューの宇宙担当記者。地球外で起こっているすべてのことを扱うニュースレター「ジ・エアロック(The Airlock)」の執筆も担当している。MITテクノロジーレビュー入社前は、フリーランスの科学技術ジャーナリストとして、ポピュラー・サイエンス(Popular Science)、デイリー・ビースト(The Daily Beast)、スレート(Slate)、ワイアード(Wired)、ヴァージ(the Verge)などに寄稿。独立前は、インバース(Inverse)の准編集者として、宇宙報道の強化をリードした。