KADOKAWA Technology Review
×
来れ、若きイノベーター! Innovators Under 35 Japan 2022 応募受付中!
急速に立ち上がった
中国の宇宙ビジネス、
その知られざる現在
Imaginechina via AP Images
ビジネス・インパクト Insider Online限定
China's surging private space industry is out to challenge the US

急速に立ち上がった
中国の宇宙ビジネス、
その知られざる現在

国家主導で進められてきた中国の宇宙計画で、民間企業が果たす役割が増えつつある。勃興する中国の宇宙関連スタートアップ企業は、世界中に新たな市場を開き、中国の影響力拡大にもつながっている。 by Neel V. Patel2021.02.03

中国の宇宙計画は2020年のパンデミックによって速度が落ちたかもしれないが、止まることはなかった。2020年のハイライトは、火星に探査車を送り込んだこと、月の石を地球に持ち帰ったこと、そして、いつの日か中国の宇宙飛行士を軌道上あるいは月へと送り込む予定の次世代の有人機のテストをしたことなどだ。

しかし、世界の他の国々が気づいていない可能性のある業績がいくつかあった。そのうちのひとつは、11月7日の「穀神星1型(Ceres 1)」ロケットの打ち上げだ。新型ロケットである穀神星1型は、高さ約19メートルに過ぎないが、約350キロのペイロードを地球の低軌道上へ運ぶ能力を備えている。このときの打ち上げでは、通信用人工衛星「天啓11号(Tianqi 11)」が宇宙へ送り出された。

一見したところ、穀神星1型の打ち上げは、さほど注目には値しないように思われる。しかし、穀神星1型は中国の国家計画によって建造され打ち上げられたのではない。商用ロケットだったのだ。これまでに中国企業から宇宙へ送り込まれた、わずか2機目のロケットだ。さらに、同ロケットの打ち上げは、創業してから3年も経たない企業により実施された。生まれたばかりだが急成長中の中国の民間宇宙産業のマイルストーンとなる業績だ。宇宙に関して世界的に卓越した力を持つ米国を王者の座から引きずり下ろすことは、中国の宇宙計画のより重要な要素となってきている。

米国と中国の宇宙計画は、過去20年間にわたって急激に活性化している。21世紀の宇宙競争について話題にする多くの人々は、両国のライバル関係を念頭に置いている。中国は新たな宇宙ステーションの建造を2021年後半に予定しており、おそらく2020年代の終わりまでには中国人宇宙飛行士を月へ送り込むことを計画していると思われる。しかしこれらの遠大な計画は、中国の宇宙的野心の一面を表しているに過ぎない。今や、同国の焦点は次第に商用宇宙産業へも向けられてきている。中国の成長中の民間宇宙ビジネスは、名誉や栄光を国家にもたらすことにはあまり重点が置かれておらず、宇宙飛行のコスト削減、国際的な影響力の増強、そして利益を生み出すことに、より大きな関心が置かれている。

「中国は大きく野心的な計画を実に得意としています。例えば月へ行くことや大型の偵察人工衛星の開発などです」 。中国の対外政策に注目しているコーネル大学の研究者リンカーン・ハインズはそう語る。 だが、急速な技術的成長とノベーションを促進するひとつの大きな方法である「市場の需要には応えていません」とハインズは言う。「中国政府は商用宇宙産業が国家政策を補完するものとなる可能性があると考えていると思います」。

ハインズの言う市場の需要とは、人工衛星や、それを軌道上に打ち上げるロケットのことだ。中国の宇宙産業は、民間産業によって拍車をかけられた2つの大きなトレンドのおかげでルネサンスを迎えている。人工衛星を小さくし、既製品のハードウェアを使用することで、安く作れるようになった。ロケットも、低コストの材料を使用し、飛ばし終えた後にブースターを再利用することで安価に建造できるようになった(ブースター再利用は、スペースX(SpaceX)がファルコン9(Falcon 9)で先駆者となった)。つまり、今や、宇宙へモノを送り込むのが安くなってきており、人工衛星が提供できるサービスやデータもそれに応じて値段が下がってきているということだ。

中国はチャンスを伺っていた。2017年のバンク・オブ・アメリカ・メリルリンチのレポートは、宇宙産業は2030年までに最大2.7兆ドル相当になる可能性があると見積もっている。月に降り立ち、月面コロニーを設置することは国力の主張になるかもしれない。しかし、大きな儲けが出るビジネスを確保することは、おそらく中国の未来にとって、より重要なことだろう。

「将来的に、何万基もの人工衛星が打ち上げを待機することになるでしょう。弊社にとって大きなチャンスです」。ギャラクティック・エナジー(Galactic Energy)の広報担当であるウー・ユエはいう。

中国の問題は、数十年にも相当する西欧諸国に対する遅れを挽回しなければならないことだ。

いかにして中国はここまできたのか?  その理由は?

最近まで、中国の宇宙計画は2社の国営企業の圧倒的な支配下にあった。中国航天科工集団公司(CASIC)と中国航天科技集団有限公司(CASC)である。いくつかの民間宇宙企業がしばらくの間、中国で営業することを許可されていた。例えば、中国長城工業集団有限公司(実際にはCASCの子会社)は1980年の創業以来、商業用の打ち上げを提供してきた。しかしほとんどのところ、中国の商用宇宙産業は存在していなかった。人工衛星は建造も打ち上げもコストがかかり、重く大きすぎて、最大級のロケットを使わないと実際、軌道に乗せられなかった。関連するコストが、国家予算でなければ賄えないほど大きすぎたのだ。

その全てがこの10年で変化した。人工衛星の製造と打ち上げロケット …

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
購読キャンペーン実施中
日本発「世界を変える」35歳未満のイノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

記事一覧を見る
MITテクノロジーレビュー[日本版] Vol.7
MITテクノロジーレビュー[日本版] Vol.7世界を変える10大技術 2022年版

パンデミック収束の切り札として期待される「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)飲み薬」、アルファ碁の開発企業が作った「タンパク質構造予測AI」、究極のエネルギー技術として期待が高まる「実用的な核融合炉」など、2022年に最も注目すべきテクノロジー・トレンドを一挙解説。

詳細を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る