ボリソフ彗星に新たな知見、実は原始のタイムカプセル
2019年8月に発見され、当初はまったくありふれた彗星だと考えられていたボリソフ彗星について、新たな知見を示す論文が発表された。同論文によると、ボリソフ彗星は、これまで観測された中で、もっとも「原始の状態」を保っている彗星だというのだ。 by Neel V. Patel2021.04.02
私たちの太陽系を通過する彗星は多数存在しており、人類は何百年にもわたってその姿を追い続けている。だが、太陽系外から来た彗星はこれまで2つしかない。1つ目は、冥王星に似た太陽系外惑星の残滓から誕生した平らなパンケーキ状の岩石と考えられている恒星間天体「オウムアムア(Oumuamua)」だ。オウムアムアはあまりにも奇妙な形をしているため、異星人の船である可能性も一時浮上した(実際には違った)。
そして2つ目が、当初はまったくありふれた彗星だと考えられていた「2I/ボリソフ(2I/Borisov)」だ。ボリソフ彗星は2019年8月に発見され、同年12月に太陽に最接近した。その何カ月かの間に得られたデータの大部分は、この彗星がごく普通の彗星の成分(水氷や塵、 ガス状物質)で構成された標準的な天体であることを示すものだった。
だが、結論を出すのは早すぎたようだ。3月30日に発表された2本の論文において、ボリソフ彗星についての興味深い知見が紹介されている。これらの論文では、同彗星がこれまでに観測された中で、もっとも外部の影響を受けておらず、「原始の状態」を保っている可能性が指摘されている。さらに、結局のところ、ボリソフ彗星が誕生した環境がそれほど異質なものではないことを示す知見もある。実際のところ、太陽系とそれほど変わらない恒星系で誕生した可能性もあるのだ。
太陽系内の彗星については研究が進んでおり、大量の物質が渦を巻き、集まってそれぞれの天体が形成された太陽系の初期段階に、それらの彗星も形成されたことが分かっている。彗星の主な成分は氷であるが、天体として存在し続けるには、太陽の熱と放射ですぐに溶けないような距離で形成される必要があった。他の恒星系でも同じように彗星が生まれたと推定される。恒星の放射から離れるほど、45億年ほど前に形成された当初の成分や性質が保たれる割合が高くなる。つまり、「原始の状態」とは、そうした彗星が、誕生時の恒星系の姿を保存したタイムカプセルのようなものであるということだ。
塵の成分は、彗星が誕生した当時の太陽系の姿を特に物語るが、そうした原則は理論上、恒星間彗星にも当てはまる。「21/ボリソフのコマに含まれる塵の粒子の成分や構造を調べることで、塵が形成された環境や場所について知識に裏付けられた推測が可能となります」。ヨーロッパ南天天文台に勤務する天文学者で、2本の論文の一方の主執筆者であるビン・ヤン博士はそう語る。
一方で、英国のアーマー天文台・プラネタリウム(Armagh Observatory and Planetarium)に所属するステファノ・バニュロ博 …
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