KADOKAWA Technology Review
×
宇宙記者が選ぶ、太陽系で地球外生命体が見つかりそうな場所10選
NASA/JPL-Caltech
宇宙 無料会員限定
The best places to find extraterrestrial life in our solar system, ranked

宇宙記者が選ぶ、太陽系で地球外生命体が見つかりそうな場所10選

広大な宇宙で生命体が居住している天体は地球だけであり、人類は孤独な存在なのだろうか。太陽系内で生命の痕跡が見つかる可能性の高そうな場所を10カ所、存在した場合の発見のしやすさを考え合わせて順位付けした。 by Neel V. Patel2021.06.22

信じたいなら今がチャンスだ。人類がいつの日かエイリアンと遭遇するかもしれないという希望は、これまでになく大きくなっている。と言ってもそれは、空飛ぶ円盤に乗って宇宙を疾走する緑色の小人ではなくて、微生物や原始的なバクテリアみたいな生き物だ。しかしそうした発見も、私たちが宇宙の中で孤独ではなく、他の場所にも生命が存在する可能性があることを示す兆候に変わりはない。

そうした生命はどこで見つかるだろうか。かつて太陽系は、地球以外は不毛の荒れ地だと考えられていた。近くにある岩石の惑星である火星は乾燥と寒さが厳しすぎるし、金星はあまりに熱くて地獄のようだ。他の惑星は巨大なガスの塊で、そうした天体やその衛星に生き物がいるなどとはとても考えられなかった。地球の存在は奇跡の中の奇跡と思われていた。

しかし、生命はそれほど単純なものでもない。今では、地球上の生命は最も過酷な環境下、超寒冷地や超乾燥地でも、想像を絶する圧力の中でも、太陽光をエネルギー源としなくとも、繁栄できることが分かっている。それと同時に、よく分かっていなかった太陽系の天体についての大まかな理解も、飛躍的に広がった。地球の「ご近所」の岩だらけの惑星である金星や火星は、昔は温暖で地球に似ていたかもしれず、気候が悪化した後も一部の生命体が生き残ったかもしれない。氷だらけの木星衛星と土星衛星のうち、いくつかの地下には、生命を維持できる海があるかもしれないし、いくつかには大気もある可能性がある。生命体が生きていくにはクセがありすぎるように思われるその他の天体も、私たちを驚かせて止まない。

毎年発見されている無数の太陽系外惑星とは違い、太陽系にある天体は、探査機を送り込んで直接調べることができる。「望遠鏡では観測できないことを調査できるのです」とワシントン大学の宇宙生物学者、デビッド・カトリング教授は言う。探査機は対象を間近で観察し、場合によっては大気圏に飛び込んだり地表に着陸したりして、いつかはサンプルを持ち帰り、惑星や衛星に生命の証となる物質や化石があるかどうか、あるいは生命体そのものが存在するかどうかを明らかにしてくれるかもしれない。

今回は、地球外生命体を探すのに最適な太陽系内の10か所を、生命体が存在する可能性と、存在した場合の発見のしやすさから、記者の主観でランク付けした。

10位:トリトン(Triton)

トリトンは海王星最大の衛星で、太陽系の中で最も外側に位置している天体の一つだ。昇華した窒素ガスが噴出する間欠泉が活動していることから分かる通り、太陽系内でたった5つしかない、地質活動が確認されている衛星の一つでもある。地表面はほとんどが凍った窒素で、地殻は水の氷でできており、氷のマントルを持っている。そう、トリトンは極寒の世界だ。だがそれにも関わらず、どうやらトリトンは潮汐力(引力によってトリトンと海王星の間に生じる摩擦)による熱を得ているようなのだ。この熱によって水が温められ、トリトンに存在するかもしれない有機物を通じて生命が誕生しているかもしれない。

しかし、実際にトリトンで生命体を発見できる見込みはかなり低いと思われる。これまでにこの天体を訪れたミッションは、1989年の「ボイジャー2号(Voyager 2)」だけだ。こうしたミッションを実施する機会は13年に1度しかない。トリトンを訪ねる絶好の機会は、米航空宇宙局(NASA)に提案された「トライデント(Trident)」ミッションだ (しかしNASAが新たに2つの金星ミッションを承認したことで、打ち上げの見込みは低くなってしまった)。さらに、恐ろしいほどの寒さを考えると、 生き物が凍りつかずに生き延びられるという希望もしぼんでしまう。

9位 :ケレス(Ceres)

太陽系最大の小惑星であり、最小の準惑星でもあるケレスの地下深くには、液体の水があるかもしれない。 火星と木星の間に位置する準惑星ケレスは、2015年から2018年にかけ、NASAの探査機「ドーン(Dawn)」によって周回軌道上から調査された。科学者たちはまだこの時の調査データに目を通し、分析している最中だが、ここ数年に発表された大いに興味を惹かれる研究では、地下40キロメートルほどの深さに海があり、 数百キロにわたって広がっている可能性が示唆されている。0°Cを大きく下回る温度でも凍っていないことから、非常に塩分濃度の高い海であることはほぼ確実だ。さらにドーンは、生命の原材料となり得る有機化合物の証拠も発見している。

それなのにケレスの順位が下から2番目なのは、居住可能性に関してあまりに多くの疑問点があるからだ。地下水と有機物があるという証拠はまだ非常に新しい。仮にそれらが実在したとしても、水や有機物が生命につながるような反応を起こすためには、そうした反応を促進する熱源やエネルギー源が必要だ。そしてもし反応が起こったとしても、その生命体を探し出すには、最低でも40キロメートルの深さまで地面を掘り進んで水に到達し、調査をしなければならない。

最後に、ケレスはごく小さな天体で、大きさは地球の13分の1以下だ。微小な引力がケレスにおける生命にどんな影響を与えるかははまだ明らかではないが、地球を居住可能性の基準と捉えるなら、ケレスの小 …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
【春割】実施中! ひと月あたり1,000円で読み放題
10 Breakthrough Technologies 2024

MITテクノロジーレビューは毎年、世界に真のインパクトを与える有望なテクノロジーを探している。本誌がいま最も重要だと考える進歩を紹介しよう。

記事一覧を見る
気候テック企業15 2023

MITテクノロジーレビューの「気候テック企業15」は、温室効果ガスの排出量を大幅に削減する、あるいは地球温暖化の脅威に対処できる可能性が高い有望な「気候テック企業」の年次リストである。

記事一覧を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る