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シンギュラリティ大学創設者、集会禁止でもリアルイベントを強行
Ms Tech | Getty, Wikimedia
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He started a covid-19 vaccine company. Then he hosted a superspreader event.

シンギュラリティ大学創設者、集会禁止でもリアルイベントを強行

新型コロナの感染者急増を受け、ロサンゼルスは集会を禁止した。にもかかわらず、シンギュラリティ大学やXプライズ財団の共同創設者は、参加費3万ドルの富裕層向けイベントを開催。感染拡大につながったことが明らかになった。 by Eileen Guo2021.03.01

1月24日の日曜日、南カリフォルニアの集中治療室(ICU)がフル稼働する中、遠くはイスラエル、ハワイ、バンクーバーから集まった富裕層を乗せた1台のシャトルバスが、サンタモニカの海辺のホテルからカルバーシティのオープン・プラン式(仕切りのない)オフィスへと移動した。

パンデミックの年に開かれたこの珍しいイベントに、3万ドル以上を支払った人もいた。屋内に参加者を入れ、参加者がほぼマスク未着用で開催されたビジネス・カンファレンス、「アバンダンス360サミット(Abundance 360 Summit)」だ。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンを開発しているコヴァックス(Covaxx)や、宇宙企業数社の共同創業者であり、シリコンバレーのイノベーション拠点、シンギュラリティ大学の共同創設者であるピーター・ディアマンディス会長が開催したこのカンファレンスは、ディアマディス会長のパトロングループから注目を集め、集金する機会だ。これらのパトロンは、ディアマンディス会長のお気に入りのトピックのいくつかについて話をするために集まる特権に、多額の年会費と会議参加費を支払うビジネスマン(および少数のビジネスウーマン)だ。トピックには、人工知能(AI)、長寿、指数関数的成長、そして「アバンダンス・マインドセット(豊かさ思考)」などがある。2021年のイベントには講演者として、セールスフォース・ドットコム(Salesforce)のマーク・ベニオフCEO(最高経営責任者)やスペースX(SpaceX)の衛星メガコンステレーションであるスターリンク(Starlink)の責任者であるジョナサン・ホフェラー副社長といった、シリコンバレーの著名人も登場した(数名はオンラインで登壇)。

主催者がA360と呼ぶこのカンファレンスは、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために、家族以外の人との接触を制限し、マスクを着用し、集会は屋外で開くようにとする公衆衛生専門家からの勧告を無視して開催された。

そして、カリフォルニア州においては、これは勧告以上のものだった。12月5日、州は、地域の病院のICU収容能力が再び15%を超えるまで、公的私的を問わず、すべての集会を禁止した。ディアマンディス会長が開催した集会の「直接参加」の部分は違法だった。

また、スタッフも参加者もほとんどがマスク未着用だったが、彼らは最初は問題ないように思えた。全員が毎日新型コロナウイルスの検査を受けており、1月24日〜26日の会議中に体調を崩した人は1人もいなかった。

しかし、新型コロナウイルス(covid-19)は、潜伏期が長いことがある。陽性という結果が最初に戻ってきたのは、ほとんどの参加者が飛行機で帰宅した後の1月28日、カンファレンスのオンライン限定版を開催していたときのことだった。

それから数日間で、陽性者の数は急増した。2月3日の朝までに、A360従業員が少なくとも5名、講演者は2名、そしてカンファレンスには参加しなかった家族の1人が検査で陽性であると明らかになり、さらに3人に症状が現れたとの内部連絡を記者は確認している(発言に対する報復の恐れがあるため、情報提供者は匿名としておく)。

同日中には、陽性者の数は2倍以上膨れ上がった。ある別の家族の一員が陽性反応を示した。それから、チームのズーム(Zoom)による会議中に、多くのパトロンが検査で陽性となり、そのうち1人が妻と子どもに感染させた事実をA360のウィル・ワイズマン専務取締役が語ったと、ディアマンディス会長に近い人物は電話で詳述した。

2月12日の午後に公開されたあるブログ投稿の中で、ディアマンディス会長は12人のパトロンが検査で陽性であったことを認めた。

A360の参加者が世界中のパンデミックの本拠地に帰国してから1週間も経たないうちに、A360の現場にいた人だけでなく、彼らの家族の何人かを含む、少なくとも20人が新型コロナウイルスに感染していると確認された。

ビジネスチャンスとしてのパンデミック

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が最初に米国で確認されたとき、ハーバード大学医学大学院で医学博士号を取得し、マサチューセッツ工科大学(MIT)でもいくつか学位を取得している59歳のディアマンディス会長は、懐疑的だった。

3月中旬、サンフランシスコ・ベイエリアの6つの郡が、国内初となる外出禁止令を発令したとき、ディアマンディス会長は「私たちは恐怖というウイルスの拡散を目の当たりにしている。これは間違いなく国民経済と世界市場の両方に損害を与える」とツイートした。その後、「パニックの度合いも同じくらい損害を与えている」とも述べた。

しかし、根っからの起業家であるディアマンディス会長は、パンデミックの中にビジネスチャンスを見出した。彼が会長を務めるXプライズ財団(XPrize Foundation)は、賞金を出して大きな問題を解決する革新的なアイデアを促すコンペを開催しているが、3月26日に同財団は、新型コロナウイルス感染症と戦うための、「Xプライズ・パンデミック・アライアンス(XPrize Pandemic Alliance)」を立ち上げた。賞金は750万ドルだ。

ディアマンディス会長は、バイオテクノロジー企業、ユナイテッド・バイオメディカル(United Biomedical)の共同経営者であるルー・リースとメイ・メイ・フーとチームを組んだ(2人は夫妻の関係にある)。さらに3人は、コヴァックス(Covaxx)を共同で設立した。同社は、ユナイテッド・バイオメディカルの子会社となるワクチン開発会社だ(低所得国にワクチンを提供する取り組みであるCovaxと混同しないよう注意してほしい)。

フーとリースは、コロラド州サンミゲル郡のすべての居住者に無料で抗体検査を実施するとしてすでにニュースとなっていた。サンミゲル郡には、フーとリースを含む沿岸に住む多くの億万長者が別荘を所有しているリゾートタウンのテルライドがある。「バイオテクノロジー企業の幹部を隣人に持つことには利点がある」とアトランティック誌(The Atlantic)が当時指摘した通りだ。

その後数日、ディアマンディス会長は都市全体のロックダウンから「迅速な公的活動の国家的調整」に至るまで、パンデミックを封じ込めるための中国政府の「前例のない」措置を称賛した。

にもかかわらず、アバンダンス360サミットを対面形式で実施した。ディアマンディス会長は政府の通達と、カリフォルニア州で施行された法的な命令を無視したわけだ。

A360の親会社であるシンギュラリティ大学でさえ、パンデミックを理由に、同社最大規模の直接参加型の集会を中止している。「私たちは世界的規模のパンデミックの状況を注意深く見守り、スタッフとプログラムの安全を確保するため、あらゆる対策を講じています。難しい決断でしたが、...(中略)11月のシンギュラリティ大学のエグゼクティブ・プログラムを延期することにしました」とシンギュラリティのスタッフは10月8日付けの電子メールで述べている。

秋が過ぎていくにつれて、南カリフォルニアでの陽性例、死亡率、入院が急増したため、A360のマーケティング担当チームのメンバーの一部は、イベントが継続して実施される計画に動揺した。

11月30日、シンギュラリティ大学のコンテンツ責任者であるジェームズ・デルは、電子メールでディアマ …

新型コロナの感染者急増を受け、ロサンゼルスは集会を禁止した。にもかかわらず、シンギュラリティ大学やXプライズ財団の共同創設者は、参加費3万ドルの富裕層向けイベントを開催。感染拡大につながったことが明らかになった。
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