KADOKAWA Technology Review
×
【4/24開催】生成AIで自動運転はどう変わるか?イベント参加受付中
接触追跡アプリはどこでつまずいたのか? 専門家に聞く
Ms Tech | Unsplash, Pexels
生物工学/医療 無料会員限定
Pandemic tech left out public health experts. Here's why that needs to change.

接触追跡アプリはどこでつまずいたのか? 専門家に聞く

新型コロナウイルス感染症の拡大を抑えるために、各国は接触追跡アプリの開発を急いだ。しかし、アプリは当初の期待ほどは普及しなかった。その理由について、最も重要な専門家が置き去りにされたと識者は語る。 by Lindsay Muscato2021.09.15

曝露通知アプリは、新型コロナウイルスの感染拡大を遅らせようとテクノロジストたちが奔走する中、パンデミックの初期に開発された。最も一般的なのはグーグルとアップルが共同開発したシステムを利用したもので、世界中で何十種類ものアプリが作られている。MITテクノロジーレビューは2020年の大半を費やしてそれらを追跡調査した。アプリは、一般的なスマートフォン上で動作し、Bluetooth信号に依存しているため、プライバシーの問題や技術的な不具合について多くの批判を受けてきた。米国では多くのアプリがダウンロード数の少なさに苦しむ一方、英国では最近、人々の元にアラートが殺到するという逆の問題が発生した。

曝露通知テクノロジーはどのように展開されたのか? タフツ大学工学部のスーザン・ランドー教授(サイバーセキュリティ・コンピューター科学)へのインタビューを通して振り返ってみたい。特に、パンデミックに関するテクノロジーが次の段階に進む際に教訓となるかもしれないからだ。

ランドー教授は、接触者追跡アプリがなぜ、どのようにして作られたのかをまとめた『People Count: Contact-tracing Apps and Public Health(大切な人々:接触追跡アプリと公衆衛生)』の著者だ。また、9月10日付のサイエンス誌(Science)で発表したエッセーの中で、公衆衛生を支援する新しいテクノロジーは、社会にすでに存在する不公平さや不公正さを助長する可能性がないか、徹底的に検証すべきだと主張している。

ランドー教授は、「今回のパンデミックは人類が直面する最後のものではない」とし、人々の権利、健康、安全性を守り、医療の公平性高めるための「ツールの開発と使用、医療政策の支援」を社会に求めている。

なお、以下のインタビューは、発言の趣旨を明確にするため、要約・編集されている。

——新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連アプリが公開されてから、どのようなことがわかったのでしょうか。特に、どうすればアプリを違ったもの、より良いものにできたかという点についてお聞きしたいのですが。

アプリの開発に携わったテクノロジストたちは、疫学者たちと話し合いを持つよう細心の注意を払っていました。しかし、彼らが十分に考えていなかったことは、これらのアプリが、新型コロナウイルスに曝露した可能性があると通知された人を変えてしまうことと、「公衆衛生」サービスの提供のやり方を変えてしまうことについてでした。これらについての会話がありませんでした。

例えば昨年、もし曝露通知を受け取ったら、私は主治医に電話して、こう言われたでしょう。「新型コロナウイルス感染症の検査を受けてください」。おそらく私は、寝室に自主隔離して、夫が食べ物を持ってきてくれるでしょうし、スーパーマーケットにも行かないでしょう。でも、それ以外はあまり変わらないと思います。私はバスの運転手ではありませんし、飲食店の店員でもあ …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
【春割】実施中! ひと月あたり1,000円で読み放題
10 Breakthrough Technologies 2024

MITテクノロジーレビューは毎年、世界に真のインパクトを与える有望なテクノロジーを探している。本誌がいま最も重要だと考える進歩を紹介しよう。

記事一覧を見る
気候テック企業15 2023

MITテクノロジーレビューの「気候テック企業15」は、温室効果ガスの排出量を大幅に削減する、あるいは地球温暖化の脅威に対処できる可能性が高い有望な「気候テック企業」の年次リストである。

記事一覧を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る