KADOKAWA Technology Review
×
発表!MITテクノロジーレビューが選ぶ
2022年のイノベーター14人。
【12/15 Summit開催】
宇宙旅行だけじゃない
スペースXの巨大ロケットに
科学者が期待する理由
SpaceX
ビジネス・インパクト Insider Online限定
How SpaceX's massive Starship rocket might unlock the solar system—and beyond

宇宙旅行だけじゃない
スペースXの巨大ロケットに
科学者が期待する理由

スペースXの「スターシップ」の試験打ち上げを目前に控え、海王星への飛行から惑星防衛にいたるまで、科学者はスターシップが秘める可能性に思いを馳せている。その最も大きな理由は、スターシップが従来の宇宙ロケットに比べて桁外れの積載量を誇ることだ。 by Jonathan O'Callaghan2021.12.15

すべてが計画通りに進めば、スペースXは来月、人類史上最大のロケットを打ち上げることになる。全長約120メートルの「スターシップ」という名のこのロケットは、米国航空宇宙局(NASA)の宇宙飛行士を月へと運ぶために作られている。しかし、スペースXの最高経営責任者(CEO)であるイーロン・マスクには、さらに大きな野望がある。火星に人類を移住させるためにスターシップを利用したいと考えているのだ。

スターシップの有人宇宙飛行能力については、すでにいろいろなことが語られている。しかしこのロケットは、地球近隣の惑星や月について現在分かっていることに革命をもたらす可能性を秘めている。「スターシップは、これまでの太陽系探査の方法を完全に変えてしまうでしょう」と、パデュー大学の惑星科学者であるアリ・ブラムソン准教授はいう。「惑星科学は大きく発展することになります」。

スターシップが期待に応えるものなら、海王星や太陽系外縁部にある海王星最大の衛星へのミッションを実行したり、月や火星から大量の宇宙石を持ち帰ったり、さらには飛来する小惑星から地球を守るための革新的な方法を開発することが可能になるかもしれないと、すでに科学者の間で話題になっている。

スターシップは現在、テキサス州の「スターベース(Starbase)」という場所で建造中だ。「スーパー・ヘビー(Super Heavy)」という大型ブースターの上に巨大な宇宙船が乗っている。どちらも地球に着陸して再利用が可能なため、コストを抑えることができる。通常の低コストミッションでは、機体全体で100トン(22万ポンド)の重さの貨物と人を宇宙へと運べる。スターシップ内で使用可能なスペースは1000立方メートルもあり、解体すればエッフェル塔全体が入ってしまうほどに大きい。このことが科学者を興奮させているのだ。

「スターシップはもう、すごいですよ」。ブラウン大学の惑星科学者であるジェイムズ・ヘッド特別教授は言う。

11月中旬、全米アカデミーズ主催のスターシップに関する公開バーチャル会議で、スペースXのマスクCEOはこのプロジェクトの科学的可能性について語った。「一刻も早く私たちが『多惑星種』になろうとすることが非常に重要なのです」と、マスクCEOは述べた。「その過程で、私たちは宇宙の本質について多くのことを学ぶことになります」。マスクCEOによると、スターシップは「大量の科学装置」を搭載して飛行できる。現在搭載可能な数よりもはるかに多くだ。「現在のように、限られた科学装置しか搭載していない小型の機体を宇宙に飛ばすのと比べれば、私たちは非常に多くのことを学べるでしょう」(マスクCEO)。

「100トンの物体をエウロパ(木星の第2衛星)の表面に届けられるかもしれません」。マスクCEOは述べた。

安価で再利用可能

このようなアイデアの中核にあるのは、スターシップが単に大きく作られているだけではなく、安価で打ち上げられる設計になっているという事実だ。一般にロケット打ち上げの費用は数千万ドルから数億ドルかかるため、NASAやESA(European Space Agency)のような機関は、資金を提供する少数のミッションを慎重に選ばなくてはならない。一方、スターシップは低コストで打ち上げ可能であるため、より多くのミッションに門戸を開ける可能性がある。1回の打ち上げにつき200万ドルという低価格で飛行できることを受け、「この低コストで実現できれば、科学研究の流れを大きく変える可能性があります」と、カリフォルニア大学バークレー校の物理学講師であるアンドリュー・ウェストファルはいう。「民間資金によるミッションや、一般の人々が集ってロケットを打ち上げるのを想像するといいでしょう」。

さらにスターシップには、遅れに遅れているNASAのスペース・ローンチ・システム(Space Launch System)やブルーオリジンのニュー・グレン・ロケット(New Glenn)といった開発中の他の超重量級ロケットに比べ、大きな利点がある。スターシップの上半分は、他のスターシップから地球の軌道上で燃料を補給できる設計になっているため、より多くの揚 …

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
日本発「世界を変える」35歳未満のイノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

記事一覧を見る
MITテクノロジーレビュー[日本版] Vol.8
MITテクノロジーレビュー[日本版] Vol.8脱炭素イノベーション

2050年のカーボンニュートラル(炭素中立)の実現に向けて、世界各国で研究開発が加速する脱炭素技術、社会実装が進む気候変動の緩和・適応策などGX(グリーン・トランスフォーメーション)の最新動向を丸ごと1冊取り上げる。

詳細を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る