KADOKAWA Technology Review
×
都市の「揺れ」は地震か?騒音か? 深層学習で見抜く新研究
Chip Somodevilla/Getty Images
A deep-learning algorithm could detect earthquakes by filtering out city noise

都市の「揺れ」は地震か?騒音か? 深層学習で見抜く新研究

スタンフォード大学の研究チームは、地震の発生を示すより明確な信号を検知する深層学習アルゴリズムを開発した。これまで人間が起こした振動として見過ごされていた地震を検知できる可能性がある。 by Rhiannon Williams2022.04.15

都市は騒がしい場所だ。交通機関や電車、機械などから多くの騒音が発生する。多くの場合、騒音はただの不快な存在でしかないが、地震の検知においてはそれが致命的な問題になりかねない。都市の地震ノイズと呼ばれる、にぎやかな都市部で発生する一般的な人為的振動によって、地震センサーのデータから地震の発生が近づいている信号を検知するのが困難になるからだ。

スタンフォード大学の研究チームは、地震の発生を示すより明確な信号を検知する方法を発見した。研究チームは、都市やその他の建築物の地震監視ネットワークの検出能力を向上させるアルゴリズムを開発。研究成果はサイエンス・アドバンシズ誌に4月13日に掲載されている。都市部の地震ノイズを除去することにより、信号品質を全体的に高め、これまで弱すぎて検知できなかった信号を観測、検知できるという。

都市部の地震ノイズを除去するよう学習させたアルゴリズムは、南米、メキシコ、地中海、インドネシア、日本など、地震の多い都市とその周辺の観測所で特に有効と見られる。

地震は、地震計と呼ばれる地盤の振動を連続的に計測するセンサーで監視されている。スタンフォード大学のチームが開発した『アーバンデノイザー(UrbanDenoiser)』と呼ばれる深層学習アルゴリズムは、都市の地震ノイズのサンプル8万個と、地震活動を示すサンプル3万3751個のデータセットで訓練されている。それぞれのノイズは、カリフォルニア州の賑やかな都市であるロングビーチ地域と落ち着いた都市であるサンジャシント地域で収集されたものだ。

このアルゴリズムをロングビーチ地域のデータに適用したところ、より多くの地震を検出し、地震がどこでどのように発生したかを容易に把握できた。また、このアルゴリズムを2014年に同じくカリフォルニア州のラ・ハブラで発生した地震のデータに当てはめると、公式に記録された数値と比較して、「ノイズ除去」されたデータでは4倍の地震検知が観測された。

地震検知に人工知能(AI)を応用した研究は珍しくない。ペンシルベニア州立大学の研究チームは、測定値の変化から将来発生する恐れのある地震を正確に予測するために、深層学習アルゴリズムの訓練に取り組んでいる。地震の発生予測は何世紀にもわたって専門家を悩ませてきた課題だ。また、スタンフォード大学の研究チームは、地震信号の中の地震波の到達時間を測定し、地震の位置を推定するモデルの開発にも取り組んできた。

今回の研究には関わっていないロイヤル・ホロウェイ(ロンドン大学のカレッジの1つ)の地震学者、ポーラ・ケレマイヤー研究員は、深層学習のアルゴリズムは人間の地震学者の負担を軽減できることから、地震検知において特に有益だと述べる。

これまで地震学者らは、地震発生時の地面の動きを記録したセンサーが作り出すグラフを見て、目視で地震発生のパターンを見極めていた。深層学習は大量のデータの切り分けを支援することにより、このプロセスをより速く、より正確に実行できるとケレマイヤー研究員は言う。

「ノイズの多い都市環境でも(このアルゴリズムが)機能することを示すことは、非常に有益です。都市環境におけるノイズは、対処するのが非常にやっかいであり、非常に困難だからです」。

人気の記事ランキング
  1. China’s heat wave is creating havoc for electric vehicle drivers 中国猛暑でEVオーナーが悲鳴、電力不足でスタンドに長蛇の列
  2. Decarbonization is Japan’s last chance to raise its power 大場紀章「脱炭素化は日本の力を底上げする最後のチャンス」
  3. Brain stimulation can improve the memory of older people 脳への「優しい刺激」で高齢者の記憶力が向上、1カ月持続か
  4. Kyoto University startup pioneers the era of fusion power generation 京大スタートアップが拓く、核融合発電の時代
  5. How do strong muscles keep your brain healthy? 高齢者に運動なぜ必要? 筋肉が脳を健康に保つ仕組み
リアノン・ウィリアムズ [Rhiannon Williams]米国版 ニュース担当記者
米国版ニュースレター「ザ・ダウンロード(The Download)」の執筆を担当。MITテクノロジーレビュー入社以前は、英国「i (アイ)」紙のテクノロジー特派員、テレグラフ紙のテクノロジー担当記者を務めた。2021年には英国ジャーナリズム賞の最終選考に残ったほか、専門家としてBBCにも定期的に出演している。
日本発「世界を変える」35歳未満のイノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

記事一覧を見る
人気の記事ランキング
  1. China’s heat wave is creating havoc for electric vehicle drivers 中国猛暑でEVオーナーが悲鳴、電力不足でスタンドに長蛇の列
  2. Decarbonization is Japan’s last chance to raise its power 大場紀章「脱炭素化は日本の力を底上げする最後のチャンス」
  3. Brain stimulation can improve the memory of older people 脳への「優しい刺激」で高齢者の記憶力が向上、1カ月持続か
  4. Kyoto University startup pioneers the era of fusion power generation 京大スタートアップが拓く、核融合発電の時代
  5. How do strong muscles keep your brain healthy? 高齢者に運動なぜ必要? 筋肉が脳を健康に保つ仕組み
MITテクノロジーレビュー[日本版] Vol.8
MITテクノロジーレビュー[日本版] Vol.8脱炭素イノベーション

2050年のカーボンニュートラル(炭素中立)の実現に向けて、世界各国で研究開発が加速する脱炭素技術、社会実装が進む気候変動の緩和・適応策などGX(グリーン・トランスフォーメーション)の最新動向を丸ごと1冊取り上げる。

詳細を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る