フェイスブックの人気投稿は「スパム」ばかり、情報商材に誘導?
直近の四半期、フェイスブックで最も閲覧されたのは他サイトに投稿されたミームの再投稿であることが明らかになった。だが問題は、コンテンツ自体よりも、そうした投稿で集められた注目が偽情報や問題のある投稿に向けられやすいことにある。 by Abby Ohlheiser2022.09.12
直近の四半期にフェイスブックで最も閲覧されたのは、テレビ番組「ファミリー・フュード(Family Feud)」の性的なジョークを含む切り抜き動画だったことが分かった。メタの「米国プラットフォームで最も多く閲覧されたコンテンツに関する四半期レポート」によれば、元々はインスタグラムのリール(短い動画)として投稿されたこのコンテンツは、フェイスブック上で5200万回以上閲覧された。同じようなスパム的なミームの再投稿は、他にもメタ独自の「プラットフォーム上のトップコンテンツ・リスト」に数多くランクインしている。
こうした四半期レポートは、1年前から公開されるようになった。メタが、「フェイスブック・ユーザーは、過激な政治的コンテンツばかりを目にするわけではない」ことを証明しようとして作成したものである。
しかし、このレポートのせいで今度は、フェイスブックで最も人気のコンテンツは「ひどい内容の使い古された一般的なミーム」ばかりであることが証明されてしまった。
人気のミームを再投稿することで、フェイスブックの閲覧数が増えることは、いまさら驚くようなことではない。しかし、フェイスブックのインテグリティ(健全性)・チームの元従業員らが設立した「インテグリティ・インスティチュート(Integrity Institute、健全性研究所)」のフェローであり編集長であるカラン・ララは、こうした注目を詐欺的な行為につなげようとしていないかどうかを把握するために、「コンテンツによって得られた注目がどこに向けられようとしているのかを監視することが重要です」と述べる。インテグリティ・インスティチュートは、ソーシャルメディア・プラットフォーム内部構造に関する調査と助言をする組織であり、ララは最近、フェイスブック上のスパム経済に関する研究を発表した。
直近のレポートによると、フェイスブックでの閲覧数がトップ20の投稿は、元々他のプラットフォーム向けに作成されたミームの再投稿が圧倒的に多いということだ。そういった投稿の多くは、「ideas365」や「factsdailyy」というインスタグラム・アカウントのバイラル・コンテンツである。ジョニー・デップを支持するミームの再投稿も2つランクインしており、再生数は合計で1億回近い。閲覧数トップ20の投稿のうち2つは、メタが不審な行動やIP(知的財産)ポリシーに反するとして削除したため、レポートには掲載されていない。
ここで問題となるのは、必ずしも安全性に関してだけではない。フェイスブックで最も人気のコンテンツは、メタが求める若い視聴者の関心を集めるためというよりも、団塊世代をおびき寄せるエサのように感じられる。しかし、ララが指摘するように、「比較的無害なミーム・アカウント」と、特定の何かに注意を向けさせるためにミームを投稿している「潜在的に有害なアカウント」を見た目で見分けるのは難しい。
「ideas365」と「factsdailyy」は、どちらもフェイスブックで膨大な視聴数を獲得しているインスタグラムのミーム・アカウントだ。両者は一見、よく似ている。どちらのアカウントも1日6本程度のショート動画を投稿しており、その内容は一般的なものだ。しかしララは、「よく見るといくつか重要な違いがあります」と指摘する。例えば、「Factsdailyy」のプロフィールには連絡先が記載され、各投稿には転載元のミームがクレジットされている。見たところ、このアカウントはただ古いミームを再投稿しているだけである可能性が高い。
しかし「ideas365」(フェイスブック上で今期最も閲覧された投稿リストのトップである「ファミリー・フュード」の動画が投稿されたアカウント)は、アマゾン物販でお金を稼ぐための教材を販売するサイトにトラフィックを誘導している。このアカウントは、いくつかのミームのソースを明記しているものの、ミームによって得た注目を利用して、怪しげなサービスを宣伝しようとしているのだ。誘導先の特集記事は、利益を得るために自動化されたインスタグラム・アカウントの作成方法を学生に教えることを約束する「メンターシップ」プログラムの宣伝だ。「ideas365のアカウントの使用者は、インスタグラムで250以上のテーマページを所有し、携帯電話で『月数十万ドル』の収入を得ていると述べています。自分が所有するというたくさんの高級車の仰々しい動画もたくさん載っています」と、ララは付け加えた。
もちろん、スパム的なミームページであっても本質的には何の問題もない。「問題は、このアカウントがメタのショート動画を利用して、高額な教材に申し込ませようとしていることではありません」とララは言う。「選挙シーズンが近づくにつれ、このような注目を利用して、同様の戦術を用いた偽情報や問題がある内容に、人々の注目を容易に向けさせられる点が問題なのです」。MITテクノロジーレビューが昨年明らかにした内容によると、有名人の破局に関するミームであろうと、対立する問題に関する誤報であろうと、とにかく人気のコンテンツから直接利益を得るためにメタ独自のインセンティブ構造を利用する方法を、コンテンツファームは熟知している。そして、そのような行動をすでに世界規模で展開している。
メタは、閲覧数トップの外部リンクやドメインに関するデータも提供している。今回のレポートでは、閲覧数トップ20リンクのうち5つが「不審な行動」に該当するとして削除されている(トップはもちろん、ティックトック:TikTokへのリンクだった)。最も閲覧されたドメインのリストは、おそらくこのデータの中で一番直接的に、「クラウド・タングル(Crowdtangle、メタが提供する分析ツールでファクトチェックに使われている)」のデータに対抗するために作成された部分だろう。同リストを見ると、ユーチューブ(YouTube)、TikTok、主要ニュースサイト、ゴーファンドミー(GoFundMe)といった競合サイトからの再投稿が混在していることが分かる。
メタはレポートを添付したブログ投稿の中で、「当社は、クリックベイト、エンゲージメントベイト、スパムを減らす新しい方法をずっと試してきています」と述べた。「新しい方法を試すことで、改善が得られています。このような評価活動を継続し、スパム運用者が当社の新たな検出方法をかいくぐるためにどう戦術を変えるかを考慮しつつ、アプローチ方法を改善していく必要があります」。
この問題に関して有意義な改善を得るために、プラットフォームからスパムを根絶させる必要はない。メタがフェイスブックをスパムのない場所に変えられると期待するのは、「スパムの使用者がいかにやる気があり、敵対心を持っているかを考慮すると」、非現実的であるとララは言う。
「フェイスブックにスパムコンテンツが存在すること自体は問題視していません。しかし、そういったコンテンツばかりがプラットフォーム上で閲覧されているのは本当に問題です」と、ララは付け加える。
フェイスブックで最も人気のコンテンツのリストに、スパム的投稿が多いことを特徴付けるレポートが発表されたのは、今回が初めてではない。しかし、フェイスブック上の過激主義、誤報、偏った内容によるインパクトを追跡するためにクラウド・タングルを使用している人々は、このツールを使わずに済むようになるにはどうすればよいかを見い出そうとしている。ブルームバーグによると、メタは最終的にクラウド・タングルの使用を中止する予定だが、2022年の米国中間選挙までは存続を約束しているという。
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- アビー・オルハイザー [Abby Ohlheiser]米国版 デジタル・カルチャー担当上級編集者
- インターネット・カルチャーを中心に取材。前職は、ワシントン・ポスト紙でデジタルライフを取材し、アトランティック・ワイヤー紙でスタッフ・ライター務めた。