KADOKAWA Technology Review
×
主張:イーロン・マスクのツイッター買収、正しい改革を
Stephanie Arnett/MITTR | Getty
シリコンバレー 無料会員限定
Elon Musk doesn’t know what it takes to make a digital town square

主張:イーロン・マスクのツイッター買収、正しい改革を

イーロン・マスクが、ついにツイッターのCEOになった。就任前からツイッターの改革を公言してきたが、ユーザーからは歓迎されていない。大きな変化を起こす前に、世界的な民主化運動の活動家たちの意見を聞くべきではないだろうか。 by Jillian C. York2022.11.03

ツイッターの威力が歴然としたのは、2009年のことだった。メディアが遮断されたイランの選挙期間中、一部のイラン人がツイートしたことをきっかけに、ツイッターは世界の活動家たちの極めて重要なツールとして浮上し始めた。2011年のエジプト革命やブラック・ライヴズ・マター(黒人の命は大事だ)運動など、その後の活動は情報を発信して支持者を獲得するためにツイッターを利用するようになった。

ツイッターを今ある形にしたのは、紛れもなくユーザーだ。しかし、ツイッターの正式な「チーフ・ツイット(Chief Twit)」となったイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が、公言通り一連のツイッター・ポリシーを見直すという計画に固執するならば、ユーザーたちこそが最も大きなリスクに直面する可能性がある。

一例を挙げれば、ツイッターは長年、人権基準に適合しない独裁国家からの検閲要求に抵抗してきた。しかし、マスクCEOの考えは、ツイッター上で何が許されるかの指針は現地の法律に従うというものだ。「ツイッターが運営されている国の法律にできるだけ合わせる」べきだとマスクCEOは言う。つまり、ツイッターがこれまで抵抗してきた検閲政策やユーザー・データの引き渡し要求に応じるかもしれないということだ。

例えば、マスクCEOへ政府が資金支援をしているカタールの法制度は、「国益を損なう意図を持って世論を震撼させ、国家の社会制度や公共制度を侵害する意図を持ち、国内外において虚偽または偏った噂、声明、ニュース、扇動的プロバガンダを、放送、出版、繰り返し公表した者」に対して、懲役または罰金を科すと脅している。この法律が乱用される可能性は計り知れない。

だがこれは、始まったばかりのマスク時代における1つの見通しに過ぎない。公式な引き継ぎを終えた10月27日にマスクCEOは「鳥は解放されました」と投稿した。しかし多くのユーザーは、長年にわたって徐々に改善されてきたツイッターの機能、ポリシー、モデレーション・プロセスが、大富豪に買収されたことで広い範囲で悪化してしまうのではないかと懸念している。

理由もなく恐れているわけではない。マスクCEOが実際に何をするのかは推測するしかないが、自身のリーダーシップの下で徹底的なポリシー変更を実施するとマスクCEOは名言している。独裁政府が定めた現地法に従う可能性だけでなく、ツイッターの言論規制の緩和や、ユーザー認証の義務化で匿名を維持できなくなる確率もそこには含まれている。マスクCEOはまた、ツイッターがどのようにコンテンツをモデレートすべきかという自身の考えについて、明快で時には矛盾する多く …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
10 Breakthrough Technologies 2024

MITテクノロジーレビューは毎年、世界に真のインパクトを与える有望なテクノロジーを探している。本誌がいま最も重要だと考える進歩を紹介しよう。

記事一覧を見る
気候テック企業15 2023

MITテクノロジーレビューの「気候テック企業15」は、温室効果ガスの排出量を大幅に削減する、あるいは地球温暖化の脅威に対処できる可能性が高い有望な「気候テック企業」の年次リストである。

記事一覧を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る