コンピューティング

The Strange Way Aircraft Crashes Attract Human Attention on the Web 死者が40人以上の事故は
インターネットで話題になる

Wikipediaの航空機の墜落事故のページは、予想外の要因でトラフィックが決まっていた。 by Emerging Technology from the arXiv2016.07.07

2015年11月夜、世界有数の大都市で自爆テロが発生し、数十人が死亡、数百人が負傷し、現地に大きな衝撃をもたらした。

パリの話ではない。パリ同時多発テロは、中東レバノンの首都ベイルートで発生した自爆テロの24時間後に発生し、さらに多くの犠牲者を出した。

だが、パリのテロと比べて、ベイルートのテロは、欧米メディアではほとんど報道されなかった。ある調査によれば、ベイルートのテロ発生を数時間以内に報じたインターネットメディアは450以下、一方パリのテロ事件は4500以上のメディアが扱った。

重大な疑問が浮かんでくる。ある事件がインターネット上で注目を集めるかを決めるのは何だろうか?

英オックスフォード大学の研究員、ルース・ガルシア・ガヴィレインス、ミレーナ・ツヴェトコヴァ、タハ・ヤッセリのチームは、この疑問の答を導き出した。世界各地で起きた航空機事故がWikipediaにどう記載されているか調べたところ、事故の深刻さ、発生場所、Wikipediaの言語によって、人々がどれだけ関心を持つかが変わるという。しかも、関心は予想外な形で変化する。

事故のWikipediaでの閲覧数(縦軸)と死者数(横軸)を英語版とスペイン語版で比較すると、赤い破線部分で傾向が分かれている

研究チームはまず、英語とスペイン語のWikipediaに掲載されているすべての航空機事故を調べた。英語版には1500本前後、スペイン語版には500本の記事があり、事故の発生日、場所、航空機の所属する国などの情報と合わせてダウンロードした。次に、事故をヨーロッパ、アジア、北アメリカ、ラテンアメリカなどの地域に分け、Wikipediaに記録されている事故件数と、アビエーション・セーフティー・ネットワーク(航空機の事故情報を収集しているサイト)に記録されている事故件数を比較した。最後に、Wikipediaの記事ごとのページビューをダウンロードし、ページが事故発生からどれくらい経過して開設されたか、時間経過で閲覧数(人々の関心)がどう変化したかを調べた。調査結果はとても興味深い。明らかな仮説は「自分の住む地域で起きた航空機事故にはより大きな関心を示す」だ。この仮説はデータで裏付けられた。

「英語版Wikipediaは、北米で起きた事故をより多く記録し、スペイン語版Wikipediaは中南米で起きた事故をより多く記録する傾向にあります」(ガヴィレインス研究員)

しかし、一見理解に苦しむ結果もある。もうひとつ確かそうな仮説は「死者が多いほど関心も大きい」だが、ガルシア・ガヴィレインス研究員によれば、集計結果はもっと複雑だ。死者が一定の値以下である場合、事故を記録したページの閲覧数は死者数と関係がなく、報道の大きさや、発生場所、犠牲者が有名であるかなどで関心の強さが変わる。

ところが、死者数が一定数よりも多い大きな飛行機事故では、死者数が多いほど関心も高くなる。関心の傾向を分ける死者数は40人前後で、どういうわけか、40人以上の死者が出ると、関心の性質が全く変わるという。

理由はわからないが、ベイルートのテロ事件がパリほど話題にならなかった原因は、「死者43人」が世界的な関心を起こすには足りなかったのに対し、パリのテロ事件では死者は130人に達し、世界が注目したと考えられるのだ。

最後に研究チームは、事故がどれほど深刻であっても、人の興味は気まぐれだと述べている。犠牲者が何人であろうと、人々は急速に興味を失ってしまう。

「興味が薄れていく割合と期間は、死者数や航空会社の所属国とは無関係でした」(ガヴィレインス研究員)

この研究は、ネット上で人々が見せる偏った行動を明らかにする意味で興味深い。ただし、注意すべき点もある。まず、Wikipediaの編集者や読者にはさまざまな面で偏りがあることがわかっている。たとえば、Wikipediaの編集者には男性が多く、Wikipediaというサイトも、全体的には欧米メディアに依拠するところが大きい。したがって、今回の研究結果は、人類全体の関心の傾向というよりも、Wikipediaという偏った母集団による偏った結果である可能性が高いことが、きちんと考慮されているとは言いがたい。

ガヴィレインス研究員も、調査対象になったWikipediaのデータに、いくつかの重大な航空機事故が含まれていないことを指摘している。たとえば、エクアドルの元大統領(ハイメ・ロルドス)、フィリピン大統領(ラモン・マグサイサイ)、イラク大統領(アブドッサラーム・アーリフ)が死亡した3件は、Wikipediaの英語版とスペイン語版に記事が存在しない。

こうした事件がなぜWikipediaの掲載項目になっていないかは不明だ。だが、3人とも欧米の指導者ではないことが、Wikipediaというデータセットの性質を表しているだろう。

関連ページ

人気の記事ランキング
  1. Machines Can Now Recognize Something After Seeing It Once グーグル・ディープマインド、大量データ不要の深層学習システムを開発
  2. Wikileaks E-Mails Are an Election Influence to Really Worry About クリントン不支持の世論形成は、ロシアによる選挙干渉
  3. Neural Network Learns to Identify Criminals by Their Faces ニューラル・ネットワーク、「犯罪者顔」で犯罪者を判定
  4. Can social media control public opinion? ソーシャルメディアで世論は操作できるか?
  5. How the Bot-y Politic Influenced This Election 大統領選ツイートは約20%がボット、約75%はトランプ支持
この記事をシェアしてください!
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
エマージングテクノロジー フロム アーカイブ [Emerging Technology from the arXiv]米国版 寄稿者
Emerging Technology from the arXivは、最新の研究成果とPhysics arXivプリプリントサーバーに掲載されるテクノロジーを取り上げるコーネル大学図書館のサービスです。Physics arXiv Blogの一部として提供されています。メールアドレス:KentuckyFC@arxivblog.com RSSフィード:Physics arXiv Blog RSS Feed
コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

0 コメント
    「コンピューター科学」の記事
    人気の記事ランキング
    1. Machines Can Now Recognize Something After Seeing It Once グーグル・ディープマインド、大量データ不要の深層学習システムを開発
    2. Wikileaks E-Mails Are an Election Influence to Really Worry About クリントン不支持の世論形成は、ロシアによる選挙干渉
    3. Neural Network Learns to Identify Criminals by Their Faces ニューラル・ネットワーク、「犯罪者顔」で犯罪者を判定
    4. Can social media control public opinion? ソーシャルメディアで世論は操作できるか?
    5. How the Bot-y Politic Influenced This Election 大統領選ツイートは約20%がボット、約75%はトランプ支持