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「地震予知」は
どこまで進んだのか?
機械学習が開く可能性
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How machine learning might unlock earthquake prediction

「地震予知」は
どこまで進んだのか?
機械学習が開く可能性

地震予知は以前、地震研究の主流の枠から外れていた。しかし現在、多くの科学者が機械学習やその他の手法を応用し、人々に安全確保の時間を与える地震予知の実現を目指す研究を進めている。 by Allie Hutchison2024.01.12

2017年9月にマグニチュード8.2の地震がメキシコシティを襲う約2分前、鳴り響くサイレンが住民に地震の到来が近づいていることを知らせた。このような警報は現在、米国、日本、トルコ、イタリア、ルーマニアなどで利用可能となっており、地震の脅威に対する私たちの考え方を変えた。地震はまったくの予告なしに発生するものではなくなったのだ。

緊急地震速報システムは、被害をもたらす可能性のある地震が発生してから3〜5秒後に、電話を通じてアラームを発信したり、被災地域に大音量シグナルを送信したりすることができる。まず、震源断層に近い地震計が地震の始まりを検知し、精巧にプログラムされたアルゴリズムがその地震の規模を推定する。中規模または大規模の地震と推定された場合、警報が発信される。警報の伝達速度は地震波が伝わる速度よりも速く、警報は数秒から数分以内に届けられる。この極めて短い時間が非常に重要となる。この一瞬の間に、人々は電気やガスを遮断し、消防車を街に送り出し、安全な避難場所を見つけることができる。

shot at night of buildings on fire
2011年に起こったマグニチュード9の東北地方太平洋沖地震では、本震の前に「スロー地震」が2回発生していた。
AP IMAGES

しかし、緊急地震速報システムには限界がある。地震規模を過大推定または過小推定することがある。さらに、すでに発生した地震に対してのみ反応するので、天気予報のように地震を予報することはできない。そのため、非常に多くの地震が発生しやすい地域は、常に不安な状態に置かれている。地震を適切に予測できれば、送電網の遮断や住民の避難などリスク管理のためにもっと多くのことができるようになるだろう。

私が地震学の大学院博士課程に進んだ2013年当時、地震予知というテーマはネス湖の怪獣探しと同じくらい主流研究の枠から外れたもので、真面目な研究とはみなされていなかった。

しかし、そのわずか7年後には状況は大きく変わっていた。私が2020年に2度目の博士研究員を始めたとき、この分野の科学者たちが地震予知をかなり受け入れるようになっていたことを目の当たりにした。私が参加していたプロジェクト「テクトロニック(TECTONIC)」は、機械学習を使って地震予知を発展させようとしていた。欧州研究会議(ERC:European Research Council)はその可能性を認め、2020年に4年間で340万ユーロの助成金を与えたほどだった。

現在、多くの著名な科学者が地震予知の可能性を真剣にとらえ、それぞれの領域で研究成果を上げている。断層に沿って発生する新たな種類のゆっくりとした動きを研究している研究者もいる。これは、広く懸念されている壊滅的な被害をもたらすような大地震の発生が近づいていることを示す有用な指標となる可能性がある。また、地震ノイズや動物の行動、電磁気からのシグナルといった他のデータからヒントを導き出し、地震発生前の警告発信の実現に向けて地震科学を推進したいと考えている研究者もいる。

暗中模索

地震物理学はとりわけ不可解なものに思えるかもしれない。天文学者は星を見ることができるし、生物学者は動物を観察することができる。しかし、地震の研究者たちは、少なくとも直接的には地中を見ることができない。代わりに地震研究者は、地殻が揺れたときに地球内部で何が起こっているのかを間接的に理解する。地震学では地球内部の動きによって発生する音波を研究し、測地学ではGPS(全地球測位システム)のようなツールを使って地表が時間の経過とともにどのように変化するかを測定し、古地震学では地層に隠された過去の地震の痕跡を研究する。

地中で発生している現象について十分な知識がなければ、その秩序を把握することはできない。

まだ分かっていないことは多い。1960年代にプレートテクトニクス理論が広く受け入れられてから数十年が経つが、地震発生に関する理解は、応力(ストレス)が蓄積され、臨界値に達した時点で地震によって解放されるという考え方以上のものには至っていない。断層はさまざまな要因によってその臨界点に達しやすくなる。たとえば、大きな要因として流体の存在がある。石油やガスの生産に伴う廃水の注入は、過去10年間に米国中部全域で地殻活動の大幅な増加を引き起こした。しかし、特定の断層に沿って何が起こっているのかを知るということに関しては、ほとんど何もわかっていない。地震波を利用し、震源の位置をマッピングすることで、断層のおおよその地図を作ることはできる。だが、断層が受けている応力を直接測定することはできないし、地面が動き出す臨界値を定量化することもできない。

長い間、地震予知に関しては、特定地域における地震の発生頻度を把握することで精一杯だった。たとえば、カリフォルニア州のサン・アンドレアス断層の南部セグメント全体を最後に破壊した地震は1857年に発生した。南部セグメントで大地震が発生する間隔は平均して100年から180年の間であると推定されている。概算では「期限を過ぎている」可能性がある。しかし、その範囲が広いことからわかるように、大地震の再現期間は大きく異なる可能性があり、誤解を招く恐れがある。サンプルは、人類史の記録と地質学的記録の中で観察できる地震に限られているため、地球が誕生して以来起きた地震のごく一部を表しているにすぎない。

科学者たちは1985年に、カリフォルニア州中部にあるサン・アンドレアス断層のパークフィールド区間沿いに地震計などの地震観測機器の設置を始めた。パークフィールドでは、他の断層沿いの地震に比べて極めて規則的な間隔で6回の地震が発生していたため、米国地質調査所(USGS:US Geological Survey)の研究チームは、高い信頼度で1993年までに同じような規模の地震が発生すると予測した。しかし、そのような地震は2004年まで発生しなかったため、この実験は概して失敗とみなされている。

同じようなマグニチュードの地震が一定の間隔で発生する例は、ハワイを含む他の場所でも確認されているが、これは例外であって一般的ではない。地震の再発期間は大きな誤差を伴う平均値として示されることの方がはるかに多い。大地震が発生しやすい地域の場合、再発期間は数百年単位になることもあり、誤差も数百年に及ぶ。明らかに、この方法は厳密な科学手法からかけ離れている。

カリフォルニア工科大学の地球物理学者で、USGSの元シニア・サイエンティストであるトム・ヒートン教授は、地震予知の実現には懐疑的だ。ヒートン教授は地震を主に確率過程として扱う。つまり、地震発生の確率は出せるが、正確な予測はできないということだ。

「物理学的に言えば、カオスシステムです」とヒートン教授は説明する。その根底にあるのは、地球の挙動が秩序立った決定論的なものであるという十分なエビデンス(科学的根拠)である。しかし、地中で発生している現象について十分な知識がなければ、その秩序を把握することはできない。「『カオス』と言うと、ランダムなシステムだと思われることがありますが、カオスというのは、予知できないほど複雑だという意味です」とヒートン教授は注意を促す。

しかし、地球の地殻内部での現象に関する科学的理解が進み、そのツールが高度化するにつれて、予知能力が向上するだろうと期待するのは理不尽なことではない。

ゆっくりとした揺れ

地球内部で何が起こっているかについて定量化できることがほとんどないことを考えると、地震予知が長い間不可能だと思われてきたのも当然である。しかし2000年代初頭、2つの発見によってその可能性の扉が開かれ始めた。

まず、地震学者チームが、日本の南西部のひずみ集中帯で奇妙な振幅の小さい地震波を発見した。それは数時間から数週間続き、ある程度規則的な間隔で発生し、それまで観測されていたものとはまったく異なっていた。彼らはこれを「テクトニック微動」と称した。

一方、米国太平洋岸北西部の沖合に広がる、ひとつのプレートが別のプレートの下に潜り込んでいる広大な領域「カスケード沈み込み帯」を研究していた測地学者チームが、地殻の一部がゆっくりと通常とは逆の方向に移動しているエビデンスを発見した。このすべり現象は「スロースリップ」と呼ばれ、定期的に地震が発生する区域の下に位置する地殻の薄い層で起こった。そこでは、より高い温度と圧力が岩石の挙動とその相互作用により大きな影響を与えている。

カスケード沈み込み帯を研究していた測地学者チームはまた、日本で発見されたのと同じ種類の地震波も観測し、それがスロースリップ現象と同じ時間に、同じ場所で発生していると判断した。新しいタイプの地震が発見されたのだ。通常の地震と同じように、この過渡的な現象「スロー地震」は地殻内で応力を再分配するが、数秒から数年までのさまざまな時間スケールで発生する可能性がある。カスケード沈み込み帯のようにスロー地震が定期的に発生する場合もあれば、単独現象として発生する地域もある。

科学者たちはその後、スロー地震が発生している間、特に沈み込み帯で通常の地震のリスクが高まる可能性があることを発見した。地震を発生する断層の固着領域は基本的に、震源の深さよりも深いところで通常のプレート運動と、スロー地震によって生じる不規則かつ周期的に発生する反対方向への運動の両方から応力を受けている。このとらえどころのないスロー地震は、私の博士課程での研究テーマとなったが、私は(大学院での研究にありがちなことだが)その問題を解決することはできなかった。現在に至るまで、どのようなメカニズムでこのような活動が起こるのかは不明である。

それでも、スロー地震を通常の地震の予知に利用できないものだろうか。スロー地震が発見されて以来、大地震発生後には大抵、その大地震の前にスロー地震が発生していたことを示す論文が複数発表されている。2011年に起こったマグニチュード9の東北地方太平洋沖地震では、本震の前にスロー地震が1回ではなく、2回発生していた。ただし、例外もある。たとえば、壊滅的な津波を引き起こし、20万人以上の死者を出した2004年のインドネシア・スマトラ島沖地震の場合、その前にスロー地震があったという証明が試みられたにもかかわらず、そのエビデンスはまだ見つかっていない。さらに、スロー地震の後に必ず通常の地震が発生するとは限らない。通常の地震の前兆となりうるスロー地震と、そうでないスロー地震を区別する要因があるかどうかはわかっていない。

大地震が発生するまでの数時間に、断層に沿って何らかの特殊なプロセスが発生しているのかもしれない。昨年の夏、私の元同僚で、フランス南部にある学際的な研究機関であるジオアズール(Géoazur)研究所に所属しているクエンティン・ブレテリー教授が、同僚のジャン・マチュー・ノケ教授と共に、90の大きな地震を対象に、地震発生までの数時間の地殻変動に関するデータを分析した結果を発表した。その結果、地震に先立つ2時間ほどの間に、断層沿いの地殻は、地震が始まる瞬間まで地震破壊の方向に速い速度で変形し始めることがわかった。ブレテリー教授によると、このことから地震の動きに先立って断層に沿って加速プロセスが発生していることがわかる。つまりスロー地震に似た現象が起こっているということだ。

「これは、地震発生前に何かが起こっているという仮説を裏付けるものです。そこまではわかりました」とブレテリー教授は語る。「しかしおそらく、地震予知というテーマを扱うことは物理的に不可能でしょう。そのための装置がないのです」。言い換えれば、前兆現象は存在するかもしれないが、地震が起こる前にその前兆現象の特定につながるような測定をすることは現時点では不可能だということだ。

ブレテリー教授とノケ教授は、従来型のGPSデータ統計分析を利用して研究を実施した。このようなデータには、従来型モデルや基準の枠組みの域を越えた情報が含まれている可能性がある。地震学者は現在、これまでとは違う新たな方法で機械学習を応用しようとしている。まだ初期段階ではあるが、機械学習を利用することで、無秩序に見えるデータの中から隠れた構造や因果関係が見つかるかもしれない。

ノイズの中からシグナルを見つける

地震研究者は、さまざまな方法で機械学習を応用している。スタンフォード大学のモスタファ・ムーサヴィ博士やグレゴリー・ベロザ教授のように、機械学習を利用して単一の地震観測点から得た地震データから地震のマグニチュードを予知する方法を研究している者もいる。これは早期警報システムに非常に役立ち、地震の規模の決定要因を明らかにするのにも役立つ可能性がある。

ハーバード大学地球惑星科学科のブレンダン・ミード教授は、ニューラル・ネットワークを使って余震の発生場所を予知できる。カリフォルニア工科大学のザッカリー・ロス助教授らは、深層学習を使ってバックグラウンドノイズが多いデータからでも地震波を抽出しており、これによりさらに多くの地震が検出される可能性がある。

ニューメキシコ州にあるロスアラモス国立研究所のポール・ジョンソン博士は、機械学習を応用して実験室で発生させた地震から得たデータの理解に役立てている。私は最初の博士研究員時代にジョンソン博士と出会い、彼は私の指導者と友人の中間のような存在になった。

実験室で地震を発生させる方法はいくつかある。比較的一般的なのは、断層を模倣するために中央を切断した岩石のサンプルを、金属製の枠組みの中に入れ、封圧下に置くという方法だ。岩石サンプルが変形する過程を局所センサーで測定するのだ。

an old church seen standing past a massive pile of rubble in the foreground
イタリアでは、2016年に死者を出したノルチャ地震を含む強い地震と動物たちの興奮の高まりが関連付けられている。
SIPA USA VIA AP

2017年にジョンソン博士の研究室が発表した論文によると、機械学習を使うことで、研究者が作った断層が揺れ始めるまでにかかる時間を驚くほど正確に予知できることがわかった。人間が地震予測に使う多くの手法とは異なり、機械学習を使ったこの方法は過去のデータを一切使用せず、断層から起こる振動のみに依存する。ここで重要なのは、人間の研究者が低振幅のノイズとして無視していたものが、機械学習による予知を可能にするシグナルであることが判明した点だ。

ジョンソン博士の研究チームは、この発見をカスケード沈み込み帯の地震データに適用し、沈み込み帯からの連続的な音響信号を特定した。この音響信号は、断層がスロー地震のサイクルで動く速度に対応しており、この地域のモデルを作るための新たなデータ源となった。「(機械学習によって)今まで知らなかった相関関係を見つけることができます。実際、その中には驚くようなものもあります」とジョンソン博士は語る。

機械学習は、研究対象となるより多くのデータの作成にも役立つ可能性がある。ベロザ教授とムーサヴィ博士、そして英国地質調査所(British Geological Survey)の研究者であるマルガリータ・セグー博士は、地震データの中から、おそらく私たちが認識している10倍もの地震を特定することで、機械学習がこれまで発生した地震のより強固なデータベースを作成するのに役立つと判断した。彼らはその発見を示す論文を2021年の科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)で発表した。このようなデータセットの改善は、人間や機械が地震をより深く理解するのに役立つだろう。

「ご存知のとおり、私たちのコミュニティでは懐疑的な見方が非常に多いのですが、それには正当な理由があります」とジョンソン博士は語る。「しかし、これによって私たちはデータを見て分析し、私たちが想像もしなかったような方法でそのデータに何が含まれているかを理解することができるようになると思います」。

動物の感覚

最新テクノロジーに頼る研究者がいる一方で、歴史を振り返り、動物に基づいてかなり過激な研究を打ち立てている研究者もいる。私が10年以上にわたって地球物理学の会議に出席して集めたシャツのひとつに、ナマズが描かれたものがある。神話に登場する大ナマズで、日本ではこのナマズが地殻の下を泳ぐことで地震を起こすと信じられていた。

大ナマズは地震学の非公式マスコットである。1855年の安政江戸地震の前に、ある漁師が川でナマズの不自然な挙動を目撃したという記録が残っている。1933年にネイチャー誌に掲載された論文の中で、2人の日本人地震学者は、ガラス容器に入れられたナマズが地震の前に興奮を示す行動をとり、この現象は地震を80%の精度で予知すると報告している。

動物が震源に近いほど、パニックに陥っているような行動がより早期に警告を与える可能性があることもわかった。

ナマズだけではない。紀元前373年までさかのぼると、地震がギリシャ都市を破壊する数日前にネズミやヘビなど多くの種が都市を離れたという記録がある。1906年のサンフランシスコ地震の前には、早朝に馬が泣き叫び、その一部の馬はサンフランシスコから逃げ出したという報告もある。

マックス・プランク動物行動研究所(Max Planck Institute of Animal Behavior)で研究部長を務めるマーティン・ウィケルスキーの研究チームは、家畜の行動を地震予知に役立てる可能性を研究している。同研究チームは2016年と2017年にイタリア中部で、犬、牛、羊に動作検知器を取り付けた。基準となる動きのレベルを決め、興奮行動を示すしきい値を設定した。すなわち、基準値に対して140%増加した動きが45分以上続く場合を興奮行動とみなした。その結果、2016年に発生したマグニチュード6.6のノルチャ地震を含むマグニチュード4以上の地震9件のうち8件で、地震発生前に動物たちが興奮状態になったことが判明した。そして、動物が興奮行動をとったのに地震が発生しなかったという事例はなかった。動物が震源に近いほど、パニックに陥ったような行動がより早期に警告を与える可能性があることもわかった。

この現象について、ウィケルスキー研究部長は次のような仮説を立てている。「この現象に対しては、何らかの空気中の浮遊物が関係しているのではないかと考えています。考えられるのは、空気中のイオン化した(帯電)粒子くらいです」。

電磁気は突飛な説ではない。断層から発生するオーロラに似た光である「地震光」は、2008年の中国・四川大地震、2009年のイタリア・ラクイラ地震、2017年のメキシコ中部地震、さらには2023年9月のモロッコ地震など、多くの地震の発生中、あるいは発生前に観測されている。

米国航空宇宙局(NASA)エイムズ研究センターの科学者フリーデマン・フロイント博士は、数十年にわたって地震光を研究しており、地震光は斑れい岩や玄武岩などの特定の岩石において、断層に沿った運動によって活性化された電荷によるものだと考えている。これは、靴下を履いた足をカーペットにこすりつけると電子が放出され、誰かに電気ショックを与えることができるのに似ている。

異なるメカニズムを提案する研究者もいれば、地震光が地震と何らかの関係があるという考えを否定する研究者もいる。残念ながら、地殻や地表の電磁場を測定するのは簡単なことではない。広い範囲で電磁場をサンプリングできる機器がないのだ。地震がどこで発生するかが事前にわからなければ、測定機器を設置すべき場所を知ることは、不可能ではないにせよ、困難である。

現在、このような地中の電磁場を測定する最も効果的な方法は、地下水が常に流れる場所にプローブを設置することである。衛星データから地震活動や地震前活動に起因する電磁波や電離層の乱れを見つけ出す研究もなされているが、このような研究はまだ極めて初期の段階にある。

変革への小さな動き

科学の大きなパラダイムシフトの中には、根本的なメカニズムが一切理解されることなく始まったものもある。たとえば、プレートテクトニクスの中心となる基本現象である大陸移動という考え方は、1912年にアルフレート・ヴェーゲナーによって提唱された。ヴェーゲナーの理論は、アフリカと南米の海岸線がパズルのピースのようにぴったり合うという観察に基づいたものだった。しかし、この大陸移動説は激しい論争の的となった。ヴェーゲナーの説には近代科学の精神に不可欠な「理由」という要素が欠けていたのだ。プレートテクトニクスの理論が正式に確立された1960年代になって、地殻の生成と破壊のエビデンスが発見され、ようやく大陸移動のメカニズムは理解された。

この間の長い年月、この問題をさまざまな角度から見る人が増えていった。物の見方や考え方は変わりつつあった。ヴェーゲナーは変化の歯車を動かしたのである。

同じようなパラダイムシフトが現在、地震予知にも起こっているのかもしれない。地震研究におけるこの時期を振り返り、確信を持ってこの分野の発展に果たした役割を理解できるようになるまでには、何十年もかかるかもしれない。しかし、ジョンソン博士のように希望を抱く人もいる。「プレートテクトニクス革命のようなものの始まりかもしれないと思っています。私たちは今、同じようなことを目にしているかもしれません」。

筆者のアリー・ハッチソンは、ポルトガルのポルトを拠点とするフリーライター。地震学者。

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