KADOKAWA Technology Review
×
カバーストーリー 無料会員限定
Tesla’s Strategy Is Risky and Aggressive, but It Has Worked

テスラの成功要因は
戦略的制限速度オーバー

イーロン・マスクは、自動車産業のイノベーションを加速させる大ばくちを打っている。 by Will Knight2016.07.13

テスラモーターズは制限速度を超えているのか。

米国国家道路交通安全局と国家運輸安全委員会によるテスラ車の自動運転テクノロジーに関わる事故調査は、まるでテスラがパトカーに止められたようだ。旧態依然とした自動車業界でイノベーションを起こせると考えるだけで途方に暮れるが、テスラはリスクを取った。新しいテクノロジーで自動車製造業の慣習を破り、ここまでの成功を築き上げたのだ。

電気自動車や自動運転、Uberのようなアプリがもてはやされている現実は、100年の歴史を持つ自動車産業にスタートアップ企業が参入するのがどれだけ難しいかを忘れさせる。自動車業界は競争が熾烈であり、ソフトウェア産業のようには儲からない。経営の失敗はすぐに大事故につながる。

テスラの奇跡的な成功は、テクノロジーの進歩に取り残され、採用しようともしなかった既存の自動車メーカーより、積極的にテクノロジーを先取りしたことによる。テスラの事例を講義しているハーバード経営大学院のエリック・ヴァン・デン・スティーン教授は、テスラは魅力的な電気自動車を製造するチャンスを発見し、電気モーターと汎用電池の成熟したテクノロジーが電気自動車の自社開発に有利な条件だと気付いたと見ている。参入障壁が低くなった市場に、テスラは自然と差別化された製品を投入できたのだ。

テスラは、コンピューター化とネットワーク接続、斬新なデザインと製造方式、さらに自動運転でも他社を出し抜いた。こうした取り組みにより、飽和状態に陥っていた市場で、テスラは抜きん出た存在になれたのだ。

自動車産業にテクノロジーが浸透する過程を研究しているMITスローン経営大学院のデビッド・キース准教授は「自動車業界でスタートアップ企業が生き残るのは至難の業です。一般的に1つの車体を開発するのに数十億ドルはかかります。テスラがしていることはとても驚異的です。現状に揺さぶりをかけることが重要な要素でしょう」と語った。

スタート …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
【春割】実施中! ひと月あたり1,000円で読み放題
10 Breakthrough Technologies 2024

MITテクノロジーレビューは毎年、世界に真のインパクトを与える有望なテクノロジーを探している。本誌がいま最も重要だと考える進歩を紹介しよう。

記事一覧を見る
気候テック企業15 2023

MITテクノロジーレビューの「気候テック企業15」は、温室効果ガスの排出量を大幅に削減する、あるいは地球温暖化の脅威に対処できる可能性が高い有望な「気候テック企業」の年次リストである。

記事一覧を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る