半導体輸出規制で行き詰る中国、「チップレット」で巻き返せるか
米国の半導体輸出規制により、中国は現在、高度なチップの供給を受けられずにいる。だが、「チップレット」技術により、中国半導体産業は独立独歩の状態を確立し、米国などの歩みに追従できるようになるかもしれない。 by Zeyi Yang2024.02.16
この数年、中国の半導体産業は米国が課す制裁措置をよって締め付けられ、身動きが取れなくなっている。依然として中国企業は現在の用途のチップを製造できるが、特定のチップ製造テクノロジーの輸入は認められておらず、より高度な製品を生産するのはほぼ不可能だ。
だが、迂回策は存在する。チップレットという比較的新しいテクノロジーにより、中国にはこのような輸出規制をかいくぐり、独立独歩の状態をある程度確立し、米国をはじめとする他の諸国の歩みについていく道筋が開けようとしている。
この1年、中国の政府とベンチャーキャピタルは国内チップレット産業に集中的にてこ入れしてきた。学術研究者はチップレット製造に関連する最先端の問題の解決を図ることを奨励され、ポーラーベアテック(Polar Bear Tech)など、一部のチップレット・スタートアップ企業はすでに最初の製品を生産している。
一片のシリコンにすべての構成部品を統合する従来型チップとは対照的に、チップレットはモジュール方式を採用する。各チップレットはデータ処理やデータ保存などの専用機能を備え、それらが接続されて1つのシステムを構成する。各チップレットはより小型で専門分化しているため、安価に製造でき、不具合が起きる可能性も低い。また、システム内の適切に動作する構成部品をそのまま維持したうえで、それ以外の個々のチップレットをより優れた新バージョンに入れ替え、全体のパフォーマンスを改善できる。
ポスト・ムーアの法則の時代にも持続的な成長を下支えする可能性を評価して、MITテクノロジーレビューは2024年のブレークスルー・テクノロジー10の1つにチップレットを選出している。AMD、インテル、アップルのようなチップ分野の有力企業はすでにこのテクノロジーを製品に取り入れている。
これらの企業にとって、チップレットは物理的な制限を越えて半導体産業がチップのコンピューティング能力を向上させ続けるための方法の一つである。だが、中国のチップ企業にとっては、より強力なチップを国内開発して、人工知能(AI)のような重要な成長テクノロジー分野に供給するために必要な時間と費用を低減できる可能性がある。その可能性を現実にするために、これらの企業はチップレットを接続して1つの装置にするチップパッケージング・テクノロジーに投資する必要がある。
「チップレット設計の向上に求められる高度なパッケージング・テクノロジーなどの開発は、間違いなく中国のやることリストに含まれています」と、半導体調査企業であるテックインサイツ(TechInsights)のプロセスアナリスト、キャメロン・マクナイト-マクニールは語る。「中国はチップレット展開に向けた基礎的な基盤テクノロジーをいくつか有していることが知られています」。
高性能チップへの近道
米国政府はブラックリスト指定により輸出を規制し、中国の半導体産業の発展を数年間抑制してきた。2022年10月に発動されたそのような制裁措置の一つは、微細化の程度が14ナノメートル(比較的高度だが最先端テクノロジーではない)以下のチップの製造に使用可能な、あらゆるテクノロジーの中国への売却を禁止した。
中国政府は長年、チップ製造のボトルネックを克服する方法を探ってきたが、リソグラフィ(光を利用して設計パターンをシリコン基板材料に転写するプロセス)のような分野でのブレークスルーを実現するには10年単位の歳月を要する可能性がある。現在、中国は依然としてチップ製造能力で台湾、オランダその他の企業に後れを取っている。「中国の中芯国際集成電路製造(SMIC:Semiconductor Manufactu …
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