「電子ナノ絆創膏で医療とスポーツに革新を」 山岸健人
MITテクノロジーレビュー「Innovators Under 35 Japan Summit 2024」から、東京大学所属の山岸健人氏のプレゼンテーションの内容を要約して紹介する。 by MIT Technology Review Japan2025.01.28
MITテクノロジーレビューは2024年11月20日、「Innovators Under 35 Japan Summit 2024」を開催した。Innovators Under 35は、テクノロジーを用いて世界的な課題解決に取り組む若きイノベーターの発掘、支援を目的とするアワード。5 回目の開催となる本年度は、国内外で活躍する35歳未満の起業家や研究者など10名のイノベーターを選出した。
その受賞者が集う本サミットでは、各受賞者が自らの活動内容とその思い、今後の抱負を3分間で語った。プレゼンテーションの内容を要約して紹介する。
山岸健人(東京大学)

工学と医学を結びつける生体工学の研究者として、新しいデバイスの開発を通じて医療の発展に貢献することを目指しています。特に注目しているのが「超薄膜エレクトロニクス」で、皮膚や臓器にシールのように貼り付けられる極薄の電気デバイスです。装着感や違和感がほとんどなく、自然な動きを妨げないという特徴を活かし、アスリートの運動解析からがんの治療まで、幅広い応用が可能です。
近年の電子デバイスは小型化・軽量化が進み、研究レベルでは柔軟性や伸縮性を持つ人体と一体化するデバイスが登場しています。私は、このような柔らかい電子デバイスだからこそ可能になる新しい応用を追求しています。その一例が「電子ナノ絆創膏」です。サランラップの10分の1より薄い30ナノメートルの導電性膜を用い、伸縮配線と小型の無線通信機を組み合わせることで、世界で初めて投球時のピッチャーの手のひらの筋電位をリアルタイムで計測することに成功しました。この技術は、ピアニストの指の動きや外科医の手術時の動作分析にも応用可能と考えています。
もう一つの成果が、光がん治療用の体内埋め込み型無線発光デバイスです。体内の濡れた臓器にも密着できる特徴を活かし、縫合操作なしでがん組織表面に貼り付けることができます。医師との共同研究では、がんを持つマウスでの治療実験で、がんの死滅に成功しました。最近では、大きく伸びても壊れない発光デバイスや、腸のような動きの激しい臓器にも密着できるデバイスの開発にも成功しています。ヒトへの応用にはまだ安全性の確認など課題はありますが、光がん治療の適用範囲と精度を飛躍的に向上させる可能性を秘めており、ライフワークとして取り組んでいきたいと考えています。
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- MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]日本版 編集部
- MITテクノロジーレビュー(日本版)編集部