グーグル、未解決問題を解く
AIエージェントを開発
サーバー効率化でも実証
グーグル・ディープマインドは、数学やコンピューター科学の未解決問題における新たな解決策を見つけ出すAIエージェント「アルファイヴォルヴ(AlphaEvolve)」を開発した。大規模言語モデル(LLM)を活用してアルゴリズムを生成し、現実世界の問題にも対応する。グーグルのデータセンターでは計算資源の削減にも成功したという。 by Will Douglas Heaven2025.05.21
- この記事の3つのポイント
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- グーグルがLLMを用いて最適なアルゴリズムを生成するツールを開発
- アルファイヴォルヴは行列乗算など50種以上の数学問題で高い成果を上げた
- グーグルのデータセンター運用の効率化にも貢献している
グーグル・ディープマインドは再び、大規模言語モデルを用いて、数学やコンピューター科学における長年の未解決問題に対する新たな解決策を発見した。今回、グーグル・ディープマインドは、同社のやり方が未解決の理論的問題だけでなく、現実世界のさまざまな重要な処理の改善にも役立つことを示した。
「アルファイヴォルヴ(AlphaEvolve)」というグーグル・ディープマインドの新ツールは、大規模言語モデル(LLM)の「ジェミニ(Gemini) 2.0」ファミリーを使って、多様なタスクのためのコードを生成する。LLMはコーディングで成果を出すこともあるが、失敗することも多い。今回の新たなアプローチでは、アルファイヴォルヴがジェミニの提案ひとつひとつに点数をつけ、点数が低いものは破棄し、高いものは微調整するという作業を繰り返し、最適なアルゴリズムが得られるまで続ける。その結果は多くの場合、既存の(人間が書いた)最良の解決策よりも効率が良く、正確だ。
「一種のスーパー・コーディング・エージェントと捉えることができます」。グーグル・ディープマインドの副社長で、同社のAI科学応用チームを率いるプシュミート・コーリは話す。「コードの断片や編集を提案するだけでなく、誰も思いつかなかったような解決策を実際に生み出すことができます」。
例えばアルファイヴォルヴは、グーグルが世界中の数百万台のサーバーにジョブを割り当てるために使っているソフトウェアの改善方法を見つけ出した。グーグル・ディープマインドによれば、グーグルのすべてのデータセンターで1年以上にわたってこの新しいソフトウェアが使用されており、グーグル全体の計算資源の0.7%が解放されたという。大した数字ではないように聞こえるかもしれないが、グーグルの規模を考えれば莫大な量だ。
英国ウォーリック大学の数学者、ジェイコブ・ムースバウアー研究員はこの成果に感心している。ムースバウアー研究員によると、アルファイヴォルヴは解決策そのものを探すのではなく、特定の解を生み出すアルゴリズムを探索しており、このやり方がAIエージェントを特に強力なものにしているという。「そのおかげで、非常に幅広い問題にこのアプローチを適用できます。AIは数学やコンピューター科学に不可欠なツールになりつつあるのです」。
アルファイヴォルヴは、グーグル・ディープマインドが長年にわたって追求してきた研究の系譜を受け継いでいる。AIが数学や科学の分野で人間の知識を前進させるのに役立つという考え方だ。2022年、グーグル・ディープマインドは「アルファテンソル(AlphaTensor)」を開発した。コンピューター科学の基本的問題である行列乗算をより高速に計算する方法を発見したモデルである。これにより、50年以上破られなかった記録を打ち破った。2023年には、1日に何兆回もコンピューターが繰り返す基本的な計算をより速く実行する方法を発見した「アルファデブ(AlphaDev)」を発表した。アルファテンソルとアルファデブは、どちらも数学の問題を一種のゲームと捉え、勝利に導く一連の手順を探すというアプローチを採用している。
2023年後半に登場した「ファンサーチ(FunSearch)」では、ゲームをプレイするように機能するAIが排除され、代わりにコードを生成でき …
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