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AIは材料科学を変革するか? グーグルの「数百万」誇張から見える現実
Cody O’Loughlin
Can AI really help us discover new materials?

AIは材料科学を変革するか? グーグルの「数百万」誇張から見える現実

材料科学をAIが変革すると期待されている。だが、数年前のグーグルの「数百万の新材料発見」は誇張だった。大きな可能性があるが、本当のブレークスルーにはまだ長い道のりがある。 by Casey Crownhart2025.12.24

この記事の3つのポイント
  1. AIが材料発見を革新し新材料創出を加速するとの期待が高まる中、実際の商業的ブレークスルーは限定的との現実がある
  2. 材料科学分野は過去数十年間停滞しており、新材料発明には長期間を要するという根本的な困難さが背景にある
  3. AIモデルの予測と実際の材料製造には大きな隔たりがあり、真の変革実現にはさらなる技術進歩が必要とされている
summarized by Claude 3

近年の見出しやソーシャルメディアの投稿を見れば、人工知能(AI)が電力網を修復し、世界中の病気を治し、私の代わりに年末年始の買い物まで済ませてくれると考えても不思議ではない。だが、それは単なる誇大宣伝が渦巻いているだけなのかもしれない。

本誌は先週、「誇大宣伝の訂正」と題した新しい特集を公開した。この特集では、世界がAIに実際にできることと、単なる誇張との現実にどう向き合い始めているかを検証している。

個人的に私が最も気に入っている記事は、編集主幹のデビッド・ロットマンによるものである。彼は、材料研究におけるAIの活用について厳しい目で検証した。AIは新材料の発見プロセスを変革する可能性があり、これは特に、新しい電池、半導体、磁石などを必要とする気候技術分野で有望とされている。

しかし、この分野は、実際に新規で有用な材料を作り出せることを証明しなければならない。AIは本当に材料研究を飛躍的に進展させることができるのか。それはどのような姿になるのだろうか。

世界に新たな電力供給手段をもたらしたり、病気を治したり、その他の重要な目標を達成しようとする研究者にとって、新材料はすべてを一変させる可能性がある。

問題は、材料の発明が非常に困難で、時間がかかるということだ。例えばプラスチックを見てみよう。最初の完全合成プラスチックが発明されたのは1907年だが、今日私たちがよく目にする多様なプラスチックが企業によって大量生産されるようになったのは、1950年代ごろのことである(もちろん、プラスチックが非常に有用である一方で、社会に多くの複雑な問題を引き起こしていることも忘れてはならない)。

ここ数十年、材料科学はやや停滞気味である。ロットマンはこの分野を40年近く取材してきたが、彼自身の言葉を借りれば、その間に商業的な大ブレークスルーは数えるほどしかなかった(リチウムイオン電池はその一例である)。

AIがすべてを変えることができるのか? その可能性は非常に魅力的であり、多くの企業が実現を競い合っている。

米マサチューセッツ州ケンブリッジに本拠を置くライラ・サイエンシズ(Lila Sciences)は、AIモデルを活用して新材料を発見しようとしている。同社は最新の科学文献すべてをもとにAIモデルを訓練できるだけでなく、それを自動化された実験室と接続し、実験データから学習させることも可能にしている。目指すのは、新材料の発明とテストの反復プロセスを加速し、人間では見逃すような研究の視点を得ることだ。

今年初めに開催されたMITテクノロジーレビューのイベントで、私はロットマンがライラの共同創業者の一人であるラファエル・ゴメス=ボンバレリにインタビューする様子を聞く機会があった。ゴメス=ボンバレリは、同社の取り組みを説明する中で、AIによる材料発見がまだ大きなブレークスルーを迎えていないことを認めた。今のところは、だが。

ゴメス=ボンバレリは、ライラが訓練したモデルが「我々の専門科学者と同じかそれ以上に深い洞察」を提供していると説明した。また将来的には、AIが人間の科学者とは異なる形で「思考」する可能性があると語った。「AIによる科学的推論を、我々人間が世界を理解する方法に翻訳する必要が出てくるでしょう」。

材料研究の分野でこうした楽観的な見方が広がっているのは刺激的だが、AIがこの分野を本当に変革したと言えるようになるには、まだ長く曲がりくねった道のりがある。大きな課題の1つは、モデルが提案する新しい実験手法や構造を受け入れることと、実際に材料を作り、それが本当に新しく有用であることを示すことは、まったく別物だという点である。

数年前、グーグルのディープマインド(DeepMind)がAIを使って「数百万種類の新材料」の構造を予測し、そのうちの数百種類を実験室で作製したと発表したことを覚えているかもしれない。

だが、ロットマンが記事の中で指摘しているように、この発表の後、一部の材料科学者たちは「新規」とされた材料の一部が、実際には既知の材料のわずかに異なるバージョンにすぎないことを明らかにした。また、他の材料は通常の条件下では物理的に存在できないものも含まれていた(シミュレーションは原子がほとんど動かない絶対零度で実施されていた)。

AIが材料発見に必要な大きな刺激を与え、未知の超伝導体や電池、磁石を生み出す新時代の到来を告げる可能性はある。だが今のところ、私はこれを「誇大宣伝」と呼ばざるを得ない。

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MITテクノロジーレビューの気候変動担当記者として、再生可能エネルギー、輸送、テクノロジーによる気候変動対策について取材している。科学・環境ジャーナリストとして、ポピュラーサイエンスやアトラス・オブスキュラなどでも執筆。材料科学の研究者からジャーナリストに転身した。
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