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まず筋肉増強、勃起不全・薄毛も——「長寿」治療謳う企業が試験
Photo Illustration by Sarah Rogers/MITTR | Photo Getty
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This company is developing gene therapies for muscle growth, erectile dysfunction, and “radical longevity”

まず筋肉増強、勃起不全・薄毛も——「長寿」治療謳う企業が試験

米国のバイオスタートアップ企業が今月、少数のボランティアを対象とした「長寿治療」の実験をホンジュラスで実施する。安全性を懸念する専門家の声もあるが、同社は意に介さない。 by Jessica Hamzelou2026.01.07

この記事の3つのポイント
  1. アンリミテッド・バイオが2026年1月に筋肉増強を目的とした2種類の実験的遺伝子治療薬の臨床試験を開始予定
  2. 従来の遺伝子治療は重篤疾患向けだが、健康な人への長寿治療として筋肉量増加と血管成長促進を狙う新領域
  3. 専門家は健康な被験者への安全性リスクと小規模試験での有効性証明の困難さを懸念し、倫理的課題を指摘
summarized by Claude 3

2026年1月、少数のボランティアが異例の臨床試験の一環として、2種類の実験的遺伝子治療薬の投与を受ける予定だ。この試験を実施するアンリミテッド・バイオ(Unlimited Bio)のイワン・モルグノフCEO(最高経営責任者)によると、これらは「潜在的な長寿治療薬である可能性がある」という。モルグノフCEOの長期的な目標は、人間の寿命の劇的な延長を実現することにある。

試験には旅費と治療費を自己負担で支払う12~15人のボランティアが参加し、腕と脚の筋肉に複数回の注射を受ける。治療法のうち1つはこれらの筋肉への血液供給を増やし、もう1つは筋肉の成長を促進するように設計されている。筋力、持久力、回復力の向上が狙いだ。また、将来的には、頭皮(薄毛)と陰茎(勃起不全)で同様の治療法を試験する計画もある。

だが、一部専門家は、この試験が少数の健康な被験者を対象として、複数の遺伝子治療を施すものであることを懸念している。米ペンシルベニア大学の医療倫理学者であるホリー・フェルナンデス・リンチ弁護士は、こうした小規模な研究から確固たる結論を導き出すことは不可能であり、この試験が長寿について明らかにすることは何もないだろうと指摘する。

モルグノフCEOの説明によると、アンリミテッド・バイオの筋肉増強治療法は、ホンジュラスとメキシコのクリニックですでに利用可能だという。そして同社はすでにある程度の注目を浴びている。クロエ・カーダシアン(米国の著名なセレブ一家、カーダシアン家の三女)は2025年8月、姉のキムとともにメキシコのエテルナ(Eterna)クリニックで幹細胞治療を受けた。この際、フェイスブックへの投稿で、アンリミテッド・バイオをタグ付けしている。そしてつい先日、バイオハッキング・インフルエンサーのデイブ・アスプリーがメキシコで治療を受けている様子をインスタグラムのリールに投稿し、130万人のインスタグラム・フォロワーに共有された。動画の中で、エテルナのアディール・カーンCEOは、この治療法が「全身の血管の健康に役立つ」と述べている。「私は若返って血管リスクを減らすために、しばらくの間システムをアップグレードしているだけです」とアスプリーは語った。

生命のための遺伝子

遺伝子治療は一般的に、新しい遺伝コードを体内の細胞に導入することで機能する。この遺伝コードはその後タンパク質を作ることができる。既存の承認された遺伝子治療は通常、標的タンパク質が欠損または変異している重篤な疾患を対象として開発されてきた。

しかし、いくつかのグループは健康な人々を対象とした遺伝子治療を探求している。その1つであるミニサークル(Minicircle)は、フォリスタチンの産生を増加させる遺伝子治療を開発した。フォリスタチンは体内に見られるタンパク質で、多くの役割を持ち、筋肉の成長に関与している。同社によると、この治療は筋肉量を増加させ、人々の寿命を伸ばすのに役立つという。ミニサークルは独自の規制システムを持つホンジュラスの特別経済区域、プロスペラに拠点を置いている。誰でも当地のクリニックを訪れ、2万5000ドルを支払えば治療を受けられると報じられている。実際に裕福な長寿インフルエンサーのブライアン・ジョンソンらが治療を受けており、ジョンソンはネットフリックス(Netflix)のドキュメンタリーでこの治療法を宣伝した。

アンリミテッド・バイオのモルグノフCEOは、ロシア系イスラエル人のコンピューター科学者で、ミニサークルの話に触発された。彼もまた、長寿に興味を持っている。具体的には、劇的な寿命延長にコミットしており、「人類史上、老化で死ぬ最後の世代」になるかもしれないと述べている。モルグノフCEOは、抗老化や寿命延長治療への進歩を遅らせる最大の「ボトルネック」は薬事規制だと考えている。そこで彼もプロスペラにバイオテック企業を設立した。

「私たちのような企業はプロスペラ以外では存在できませんでした」。アンリミテッド・バイオのウラジミール・レシュ …

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