2025年を振り返る、MITテクノロジーレビューの人気記事9本
2025年はAIをめぐる熱狂が本格的に爆発し、AIの環境負荷に対する懸念も同様に高まった。また、驚くべき生物工学の発展もいくつか見られた。 by MIT Technology Review Editors2025.12.30
MITテクノロジーレビューは2025年、コンピューティング、気候テック、ロボット工学などの新たな動向を追いながら、数百本の記事を公開した。年の瀬が近づく中、こうした仕事の一部を読者の皆さんとともに振り返ってみたい。
人工知能(AI)の急激な台頭を取り上げた記事であれ、生物工学の未来を扱った記事であれ、ここに挙げるのは、特に読者の共感を集めたストーリーである。
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1. AIのエネルギー消費、本誌徹底調査で分かったその知られざる事実
数億人が生成AIツールを日常的に使い始めた2025年、AIのエネルギー使用量を理解することは世界的な大きな議論となった。本誌上級記者のジェームズ・オドネル(AI担当)とケーシー・クラウンハート(気候変動担当)は数値を詳細に分析し、単一のクエリというレベルにまで踏み込んで、AIのリソース需要を前例のない視点から明らかにした。これは、今後AIがどれほどのエネルギーと水を必要とするのかを理解する手がかりを与えるものである。
2. ビタミンDはなぜ重要? 骨だけでない、免疫・心臓への影響も
ビタミンD欠乏症は広く見られ、特に体内での生成を促す日光が少ない冬季に顕著である。「太陽のビタミン」は骨の健康に重要だが、ジェシカ・ヘンゼロー上級記者が報告したように、近年の研究では、免疫系や心臓の健康など、身体に影響を及ぼす他の作用についても驚くべき新たな知見が明らかになっている。
3. 「人工知能」とは何か?
ウィル・ダグラス・ヘブン上級編集者によるAIの定義をめぐる包括的な考察は2024年に発表されたが、今年も多くの読者の関心を集めた。彼は、なぜ人々が「AIとは何か」について合意できないのかを示し、その曖昧さがなぜ重要なのか、そしてそれがこの技術に対する私たち自身の批判的思考にどのように役立つのかを説明している。
4. 寄稿:倫理的に調達可能な「予備の体」がもたらす医学革命
この示唆に富む論説で、スタンフォード大学の専門家チームは、思考能力や意識、痛覚を持たない生きた人体を作り出すことで、検査や移植に必要な生物学的材料を提供でき、医学研究や薬物開発を大きく変える可能性があると主張している。生物工学の最近の進歩は、こうした「ボディオイド」への道筋を示しつつあるが、多くの技術的課題と倫理的ハードルが依然として残っている。
5. ChatGPTと親密関係、9割超が意図せず発展=MIT調査
チャットボットは今年あらゆる場面で存在感を示した。本誌のリアノン・ウィリアムズ記者は、人々がいかに急速にチャットボットと絆を築くかを記録した。それは問題にならない人もいる一方で、危険をはらむ場合もあると彼女は指摘する。中には、意図せずチャットボットと恋愛関係を築いてしまったと語る人もいる。こうした動きは、2026年にも注視し続けることになるだろう。
6. 未来は住民が決める—— 米ネブラスカ州発、 地域密着型電力会社の挑戦
電力網は、より頻繁に発生する嵐や火災、そして不確実な政策・規制環境による混乱に備えつつある。多くの点で、ネブラスカ州の公営電力会社リンカーン・エレクトリック(Lincoln Electric)は、信頼性が高く、手頃で、持続可能な電力供給という課題に取り組む中で、この変化を検証する格好の事例となっている。
7. 30年前の凍結胚から誕生、 「最高齢の赤ちゃん」新記録
今年、世界で最も「高齢」の胚から生まれた赤ちゃんが誕生した。7月26日に生まれたタデウス・ダニエル・ピアースである。彼が成長した胚は、体外受精が始まったばかりの1994年に作られ、その後ずっと冷凍保存されていた。両親は当時まだ幼児で、この胚は数十年後に、キリスト教系の「胚養子縁組」機関を通じて提供された。
8. 頻発する謎のドローン事件、 警察・FBIも頼る 「UFOハンター」兄弟
双子の兄弟ジョンとジェラルド・テデスコは、懸念すべき新たな脅威である未確認ドローンの調査に乗り出した。軍高官によると、2024年だけで約350機のドローンが100を超える米軍施設の上空に侵入し、多くの事例が未解決のままだったという。本記事は、テデスコ兄弟が謎の空中現象を研究するために改造した機器満載のRVの内部と、彼らが政府関係者の間でどのように名を知られるようになったかを紹介している。
9.世界を変える10大技術[2025年版]
MITテクノロジーレビューは、長期的に重要となる進歩を紹介する年次レポート「世界を変える10大技術(ブレークスルー・テクノロジー10)」を20年以上にわたって発表してきた。2025年のリストには、生成AI検索、クリーンなジェット燃料、長時間作用型HIV予防薬など、注目に値すると考えるエマージング・テクノロジーが含まれている。2026年版は1月に公開予定なので、ぜひ注目してほしい(それまでの間に、選外となった技術をこちらで紹介している)。
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- MIT Technology Review編集部 [MIT Technology Review Editors]米国版 編集部
- 米国版編集部