未来の職種:セレブたちの不死の夢を叶える「頭部移植外科医」
イタリアの脳神経外科医セルジオ・カナベーロは、人の頭部(少なくとも脳)を新しい身体に移植することで生命を延長するという夢を抱いている。ホラ話扱いされながらも、不死を望む億万長者たちに資金提供を呼び掛けている。 by Antonio Regalado2026.01.08
イタリアの脳神経外科医セルジオ・カナベーロは、実現しないかもしれない手術の準備を続けている。彼のアイデアとは何か。病気の人の頭部、あるいは脳だけを、より若く健康な身体に移植することである。
カナベーロは2017年、中国で彼が助言したチームが2体の死体間で頭部を交換したと発表し、大きな話題を呼んだ。しかし、彼の技術が成功する可能性があることや、生きた人への手術が差し迫っているという主張を懐疑論者に納得させることはできなかった。シカゴ・トリビューン紙は彼を「移植のP.T.バーナム(日本版注:ホラ話で知られる米国の興行師)」と呼んだ。
カナベーロは表舞台からは身を引いた。しかし、頭部移植のアイデアは消え去ることはない。むしろ、この概念は最近、寿命延長愛好家や秘密主義のシリコンバレーのスタートアップから新たな関心を集めていると彼は言う。
キャリアの道のり
それは険しいものだった。10年前に外科的アイデアを発表し始めた後、カナベーロは22年間勤務したトリノのモリネッテ病院から「解雇通知」を受けた。「私は体制外の人間です。だから物事がより困難になったと言わざるを得ません」。
なぜ彼は続けるのか
老化に対する他の解決策は見えていない。「過去数年間で、高齢者を若返らせる驚異的な技術のアイデア、グーグルのような秘密の研究所で起こっているような技術は、実際にはどこにも向かっていないことが絶対的に明らかになりました」とカナベーロは言う。「すべてを賭けなければならないのです」。
すべてを賭ける?
彼が言うところの「すべて」とは、単一の新しい臓器ではなく、新しい身体を得ることである。カナベーロは英語の慣用句を易々と使いこなし、予想外の南部なまりで話す。それは子ども時代にアメリカンコミックに魅せられたことによるのだという。「私にとって、ヒーローたちの言語を学ぶことが最重要でした。だから気軽におしゃべりできるのです」。
クローン身体
カナベーロは現在、独立研究者であり、受容者の免疫系に拒絶されないDNA適合臓器の供給源として、脳のないヒトクローンを作成したい起業家たちに助言している。「一流大学出身の人たちが関わっていると言えます」。
次に何が起こるか
信頼性の高い精密外科ロボットやクローンを育てる人工子宮など、必要な技術を組み合わせることは複雑で、恐ろしく高額になるだろう。カナベーロには計画をさらに進めるための資金がないが、商業的なムーンショットプロジェクトには「資金は存在する」と信じている。「億万長者たちに『力を合わせよう』と言っています。皆さんはそれぞれの分け前を得られるし、さらに自分自身を不死にできるのですから」。
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- アントニオ・レガラード [Antonio Regalado]米国版 生物医学担当上級編集者
- MITテクノロジーレビューの生物医学担当上級編集者。テクノロジーが医学と生物学の研究をどう変化させるのか、追いかけている。2011年7月にMIT テクノロジーレビューに参画する以前は、ブラジル・サンパウロを拠点に、科学やテクノロジー、ラテンアメリカ政治について、サイエンス(Science)誌などで執筆。2000年から2009年にかけては、ウォール・ストリート・ジャーナル紙で科学記者を務め、後半は海外特派員を務めた。