KADOKAWA Technology Review
×
「Innovators Under 35 Japan」2024年度候補者募集中!
遺伝子組み換え
宇宙飛行士の極秘?研究
カバーストーリー Insider Online限定
Engineering the Perfect Astronaut

遺伝子組み換え
宇宙飛行士の極秘?研究

人間の遺伝子の解明が進み、CRISPRなど遺伝子組み換え技術が発達したことで、科学者は宇宙旅行に適用するように、宇宙飛行士の遺伝子を組み換えるアイデアを研究し始めている。ただし、宇宙飛行士(遺伝子組み換え)を人間と呼べるのかは別問題だ。 by Antonio Regalado2017.04.17

2016年9月、メキシコのグアダラハラで開催された国際宇宙会議で、イーロン・マスクは個人用ロケットの大群に何千人もの乗客を乗せて火星に送れる、と多くの筋金入りの宇宙エンジニアに大見得を切った。

マスクは講演で、軌道と飛行予定、燃料費について長く説明した。しかし入植者がどう生き延びるかについては短く触れただけだった。実際、火星は片道旅行になる可能性が高い。放射能に包まれ、大地に何も生えていない赤い惑星は、要するに墓場だ。

最近、何人かの科学者は、もし宇宙旅行という苦労の多い仕事に適応させた人間を作り出せば、もっと上手くかどうかを模索し始めた。つまり「宇宙飛行士(遺伝子組み換え)」だ。

まずはっきりさせておこう。この構想は、泡立つ水槽で宇宙飛行士を培養する話ではない。以前はサイエンス・フィクション分野に追いやられ、最近になってTEDトークで具体的な形に取りあげられた斬新なアイデアだ。人間の細胞を改造する実験は研究室ですでに始まっている。放射線耐性を持たせたり、自身でビタミンやアミノ酸を合成できたりするように、人間を改造できるのだろうか?

ワイルコーネル医科大学のクリストファー・メイソン准教授(生理学・生物理学部)は、このアイデアを模索しているひとりだ。2011年にメイソン准教授は人間を地球から送り出す「500年計画」を発案した。計画では遺伝子組み換えは重要な役割を担っている。「他の惑星に送り出す人びとの遺伝子を組み換えることを考慮しなければならないと思います。既存の遺伝子を少しいじるだけで済むのか、まったく新しい染色体なのか、最終的に遺伝子コードの完全な再編集になるのかは、私たちにはわかりません」

宇宙旅行が遺伝子にどんな影響を与えるのか、どの遺伝子は組み換えてもよく、どの遺伝子は「邪魔しないでください(do not disturb)」リストに入っているのかを見極めるには、あと10年か20年分の仕事だとメイソン准教授はいう。メイソン准教授の研究所が参加している、米国航空宇宙局(NASA)の双子研究では、双子の片方が国際宇宙ステーションに送られ、1年間宇宙飛行士として過ごし、地球に残ったもう片方との生理学上の変化を追跡する。今のところ、遺伝子組み換え関連のテーマでNASAが関わるのはこの程度だ。遺伝子組み換えは、どの公的機関の文書でも、まだ切り出されていない。

だがメイソン准教授は、自身の研究所は初めの一歩を踏み出す準備ができているという。宇宙にはDNAを損傷させる光線や高速で移動する粒子に満ちている。そこでメイソン准教授は、人間の細胞の放射線耐性の研究を進めている。メイソン助教授の学生は、細胞を取り出し、がんの予防に関係する「ゲノムを守る者」として知られる遺伝子「p53」を追加する作業をしている。象はp53がいくつもあるおかげで、ほとんどがんにならない。それなら宇宙飛行士にもp53が余分にあった方がいいだろう。メイソン准教授は最近、改造した細胞を宇宙ステーションに送るようにNASAに提案した。「遺伝子工学宇宙飛行士協会はまだありませんが、もしかしたら私たちが創設すべきかもしれません」

ほしい遺伝子リスト

宇宙で生き残ることを考える場合、遺伝子化学用語の「適応度(fitness)」が役に立 …

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. AI can make you more creative—but it has limits 生成AIは人間の創造性を高めるか? 新研究で限界が明らかに
  2. Promotion Call for entries for Innovators Under 35 Japan 2024 「Innovators Under 35 Japan」2024年度候補者募集のお知らせ
  3. Interview with Prof. Masayuki Ohzeki: The Future of Quantum Computer Commercialization and the Qualities of Innovators 量子技術を最速で社会へ、大関真之教授が考えるイノベーターの条件
  4. How to fix a Windows PC affected by the global outage 世界規模のウィンドウズPCトラブル、IT部門「最悪の週末」に
  5. Robot-packed meals are coming to the frozen-food aisle 「手作業が早い」食品工場でもロボット化、盛り付け完璧に
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年も候補者の募集を開始しました。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る