KADOKAWA Technology Review
×
「Innovators Under 35 Japan」2021年度候補者募集のお知らせ
Blockchain Is Helping to Build a New Kind of Energy Grid

ブロックチェーンで余剰電力をご近所で売買

ビットコインを支えるテクノロジー「ブロックチェーン」で、ブルックリン・マイクログリッドの加入者は近所で発電された再生可能エネルギーを、ピア・トゥ・ピアのネットワークで売買している。 by Elizabeth Woyke2017.04.21

もし、自宅の太陽光パネルが必要以上の電気を生み出していたら、余った分を電力会社に販売できる。では、電力会社ではなく、ご近所に販売できるとしたらどうだろう?

LO3エナジーのシステムは、地域で生み出された太陽エネルギーを、誰でも売り買いできるようにするために開発された。システムは、電力を円滑に取引し、取引を記録するために、ブロックチェーン(電子通貨ビットコインを支えている電子台帳テクノロジー)を使う。

LO3の創業者ラリー・オルシニCEOは、電力会社を介さず、地域内で電気を取引することでエネルギーを供給するのは、電力を長距離で送るよりも効率的だ、という。停電時に素早く復旧できるし、想定以上に電力が必要な場合にも需要に対応できるという。さらに、再生可能エネルギーや分散型の地域密着エネルギーシステム、より全般的にいえば「地産地消」を支援する世論の高まりにも沿っている。MIT Technology ReviewとMITメディアラボが共催した「ブロックチェーンのビジネス」カンファレンスでオルシニCEOは、テクノロジー・コンサルタント会社アクセンチュアによれば、消費者の69%が電力取引市場の参加に関心があり、さらに47%は地域の太陽光プロジェクトに参加するつもりだという。

LO3 エネルギーは約1年前、ピア・トゥ・ピア型のエネルギー取引システム「ブルックリン・マイクログリッド」を発表した。ブルックリン地区(ニューヨーク市)の一部で、屋根に太陽光パネルを設置した住民をつなぐ小規模の送電網により、地元で生み出された自然エネルギーを購入したい近所に電気を届ける仕組みだ。他の小規模送電網と同様、通常の送電網も併用しながら、独立して運用されている。

オルシニCEOによれば、ブルックリン・マイクログリッドはブロックチェーンのおかげで実現したという。加入者はブロックチェーンに対応したスマートメーターを設置し、自宅の発電量と消費量を記録する。自動的に記録される「スマート契約」機能により、近所の住民同士で電力を取引する一方、取引データはブロックチェーンで記録される。LO3 エネルギーは、ソフトウェア企業コンセンシスと契約し、このシステムを開発した。システムはブロックチェーンに基づく分散型コンピューティング・プラットフォーム「イーサリアム」を土台にしている。

カンファレンスでオルシニCTOは「ブロックチェーンは弊社の希望にかなう本当に優れた通信プロトコルです。弊社のシステムは単なる電気料金の支払い用ではありません。送電網の強みを生かした自己編成です。通常のデーターベースでは実現できませんでした」という。

この種の小規模送電網は、エネルギー産業の改革につながるのだろうか? 現在、ブルックリン・マイクログリッドの実際の利用者はたった50しかない。しかしオルシニCEOは、ドイツの巨大企業シーメンスと11月に提携し、アメリカやオーストラリア、ヨーロッパの規制当局と事業拡大について協議中だ。さらにオルシニCEOは、電力会社との協業にも関心がある。「弊社は電力会社を事業対象から外しているのではありません。むしろ、電力会社のビジネスモデルを進化させたいのです」という。

人気の記事ランキング
  1. The most detailed dark matter map of our universe is weirdly smooth 宇宙の暗黒物質の詳細マップ公開で、予想外の問題が浮上
  2. What are the ingredients of Pfizer’s covid-19 vaccine? ファイザーの新型コロナワクチンの成分は?専門家が解説
  3. This animated chart shows how the world’s vaccine rollout is going 動くグラフで見る、世界のワクチン接種状況(日本はG20中19位)
  4. So you got the vaccine. Can you still infect people? Pfizer is trying to find out. ワクチンを打っても マスクを外せない理由
タグ
クレジット Photograph by Justin Saglio
エリザベス ウォイキ [Elizabeth Woyke]米国版 ビジネス担当編集者
ナネット・バーンズと一緒にMIT Technology Reviewのビジネスレポートの管理、執筆、編集をしています。ビジネス分野ではさまざまな動きがありますが、特に関心があるのは無線通信とIoT、革新的なスタートアップとそのマネタイズ戦略、製造業の将来です。 アジア版タイム誌からキャリアを重ねて、ビジネスウィーク誌とフォーブス誌にも在籍していました。最近では、共著でオライリーメディアから日雇い労働市場に関するeブックを出したり、単著でも『スマートフォン産業の解剖』を2014年に執筆しました。
10 Breakthrough Technologies 2021

新型コロナで注目されるmRNAワクチンから、史上最も優れたAI言語モデル、電気自動車の普及を担うリチウム金属電池まで。
MITテクノロジーレビューが選んだ、世界を変える10大テクノロジー。

記事一覧を見る
人気の記事ランキング
  1. The most detailed dark matter map of our universe is weirdly smooth 宇宙の暗黒物質の詳細マップ公開で、予想外の問題が浮上
  2. What are the ingredients of Pfizer’s covid-19 vaccine? ファイザーの新型コロナワクチンの成分は?専門家が解説
  3. This animated chart shows how the world’s vaccine rollout is going 動くグラフで見る、世界のワクチン接種状況(日本はG20中19位)
  4. So you got the vaccine. Can you still infect people? Pfizer is trying to find out. ワクチンを打っても マスクを外せない理由
MITテクノロジーレビュー[日本版] Vol.3/Spring 2021
MITテクノロジーレビュー[日本版] Vol.3/Spring 2021Innovation Issue

AI/ロボット工学、コンピューター/電子機器、輸送、ソフトウェア、インターネット分野で活躍する13人の日本発のイノベーターを紹介。併せて、グローバルで活躍する35人のイノベーターの紹介と、注目のイノベーション分野の動向解説も掲載しました。
日本と世界のイノベーションの最新情報がまとめて読める1冊です。

詳細を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る