本誌記者も参加、「生物学的年齢」の若返りを競うコンテスト
最近40歳になったばかりの記者が申し込んだコンテストで問われるのは暦年齢ではなく、臓器や身体の加齢の状態を測る生物学的年齢だ。最終的に約500人が参加する見込みで、6カ月かけて、さまざまな指標で測る生物学的年齢の若返りを目指す。ただ、老化時計はまだ個人の生物学的年齢を推定できるほど精度が高くない。 by Jessica Hamzelou2026.10.05
- この記事の3つのポイント
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- 神経科学者グロリオソが発案した生物学的年齢の若返りを競う「Youngerコンテスト」に約500人が参加予定
- 老化時計は100種類以上存在するが、何を測定しているか科学的に十分解明されていない
- 6カ月という短い期間や血液検査項目の少なさなど、効果測定の限界が専門家から指摘されている
今週、私はある風変わりなコンテストに正式に申し込んだ。参加者が若返ることで評価されるというコンテストだ。
私は最近40歳になったばかりで、時間も暦年齢も前に進み続ける一方だということは、改めて言われるまでもない。だが、このコンテストが注目するのは参加者の生物学的年齢だ。これは、臓器や身体が加齢によってどのような健康状態にあるかを、より適切に測ることを目指した指標である。
6カ月間にわたり、約500人の参加者が、さまざまな方法で測定される生物学的年齢を若返らせようと試みる。なんとリーダーボードまである。優勝者には、暦年齢と生物学的年齢の差が最も大きい人や、生物学的年齢を最も大きく若返らせた人などが選ばれる。
コンテストの発案者は、神経科学者で医師のクリスティン・グロリオソだ。彼女はニューロエイジ・セラピューティクス(NeuroAge Therapeutics)の創業者兼CEOでもある。同社は脳の健康と加齢を追跡するツールを提供しており、脳の生物学的年齢がアルツハイマー病の発症を予測できるかどうかを調べる臨床試験を実施している。
グロリオソCEOは、「Younger(ヤンガー)」コンテストにはいくつかの目標があると語る。第一の目標は、「老化時計が何であるかを世界に説明すること」だと彼女は私に語った。本誌の読者にはおなじみだろうが、初めて聞く人のために説明すると、老化時計とは基本的に生物学的年齢を測定するために設計されたものである。
老化時計にはさまざまなものがあり、多くは、DNAの上に付加され、加齢とともに変化するとみられる化学的な標識を測定する。一方、血液中のタンパク質や脂質を調べるものもある。身体機能の状態を測定するよう設計されたものもあれば、死亡時期を予測するものもある。こうした老化時計は100種類以上存在し、それぞれが加齢という生物学的プロセスの特定の側面を捉えているとみられる。
老化時計は科学者にとって非常に有用であることが分かっており、ヒトをはじめとする多くの種における加齢や発生の研究に使われている。しかし、個人の生物学的年齢を推定するために老化時計を使うことについては、より議論がある。現時点では、その用途に使えるほど精度が高いとは言えない。
問題の一端は、それぞれの老化時計が実際に何を捉えているのかを、私たちが十分に理解していないことにある。グロリオソCEOは、Youngerコンテストを通じて集まるデータが、この疑問に答える一助になることを期待している。彼女は「世界で最も包括的な老化時計データセット」を作りたいと考えている。
長寿クリニックの中には、複数の老化時計を使うことで、生物学的年齢検査の限界を補おうとするところもある。今回のコンテストも同じアプローチを採用している。標準参加者として、私はDNA上のエピジェネティックな化学基を測定するトゥルーダイアグノスティック(TruDiagnostic)という企業に血液スポットサンプルを送付する。同社は、総合的な生物学的年齢に加え、加齢ペース(老化の進む速さ)や、心臓や脳を含む11の臓器系それぞれの生物学的年齢を算出してくれる。
用意された認知課題を終えれば、ニューロエイジから脳年齢のスコアが得られる。握力などの身体測定値も提出する予定だ。さらに、ハーバード大学のチームが開発したアプリに一連の自撮り写真をアップロードすれば、顔年齢も教えてもらえるという。これは文字どおり、私の顔が何歳に見えるかの推定値だ。
あまり過信すべきではないと分かってはいるものの、自分のスコアがどう出るのか楽しみだ。4年前に初めて検査を受けたとき、利用した企業は私の生物学的年齢を暦年齢と同じだと判定し、正直なところ少しがっかりしたし、期待外れでもあった。その1年後、同じ企業は私の心臓は若いが、脳、肝臓、ホルモン系は比較的老化が進んでいると教えてくれた。それ以来、私の生活習慣はあまり変わっていない。この数年で、どれほどの違いが出ているだろうか。
(標準参加の999ドルではなく4499ドルを支払う「ウルトラ」参加者には、その他さまざまな血液検査や老化時計、さらにMRIおよびDEXAスキャンも提供される。私は報道関係者として標準パッケージに無償で参加している。)
グロリオソCEOはまた、長寿効果があるとされるいくつかのアプローチの効果についての情報収集も狙っている。コンテスト期間中、一部の参加者には赤色光マスクやサウナの利用、その他のリスクの低い介入が提供される。これらはイベントを程度の差はあれ支援するパートナー企業がデータを集めたいと考えているものだ。「こうした企業の多くは、(臨床)試験を実施する余裕がないのです」とグロリオソCEOは言う。
彼女はこのイベントを、公衆衛生の取り組みとしても位置づけている。数年前、ハーバード大学医学大学院で加齢を研究するデビッド・シンクレア教授らは、一般集団の加齢を遅らせ、平均余命を1年延ばすことができれば、米国経済にもたらす価値は38兆ドルに上ると試算した。
イベントは正式には1月に始まるが、すでに約120人が登録を済ませているとグロリオソCEOは言う。最終的には500人の参加者を見込んでいるという。各参加者の6カ月間の挑戦は、ベースライン測定を実施した時点から始まるため、開始時期は人によって異なる。すでに数人はスタートしている。「大半の人は休暇が明けてから参加登録したいと考えていると思います」とグロリオソCEOは語る。「クリスマスやハヌカの最中に、若返りコンテストで勝とうと頑張りたくはないでしょうから」。
グロリオソCEOは8月に自身のベースライン測定を実施した。その最初の検査結果によれば、彼女の生物学的年齢は暦年齢より約10歳若かった。かなり立派な数字だと思ったが、リーダーボードを見ると、参加者「@Fred」の生物学的年齢は暦年齢より28.8歳も若いことが分かった。
現時点ではリーダーボードはかなり寂しい状態だ。これまでにベースライン測定を記録したのはわずか7人である。そのうち6人は生物学的年齢が低めに出ているが、47歳の1人は生物学的年齢68.1歳と判定された。彼女は公開形式で参加しているため、スコアの内訳を見ることができる。最も悪かったのは椅子から立ち上がる速さで、この指標では生物学的年齢100歳と判定されている。
ニューヨークで長寿医療に取り組む医師、ヒラリー・リンは、このコンテストのベースライン測定の記録を始めたばかりだ。彼女は以前にも生物学的年齢検査を受けたことがあり、現在37歳の暦年齢を下回るスコアが出る傾向にあったと教えてくれた。昨年、トゥルーダイアグノスティックの検査では、彼女の加齢ペースは0.75と判定された。これは通常の1年間に9カ月分しか老化していないことを示唆していた。「それはかなり良い結果とされています」と彼女は言う。
もし自分に決定権があれば、より多くの血液検査をコンテストに組み込み、その人の健康状態をより包括的に捉えられるようにしていただろう、とリン医師は言う。また、6カ月という期間では、加齢の生物学的指標に変化が表れるには十分でないかもしれないと懸念している。それでも彼女は意欲的で、すでに睡眠、食事、運動を改善する計画を立てている。
とはいえ、彼女はすでに高タンパク・低炭水化物の食事を実践し、毎日ジムで運動している。数日おきにサウナにも通っている(サウナの利用は心臓の健康改善と関連づけられている)。グロリオソCEOの取り組みもかなりのものだ。彼女は、健康改善との関連が指摘されている水草(ウキクサの一種)から作ったスムージーを飲み始め、食事から添加糖と揚げ物を取り除いたと教えてくれた。また、顔年齢を下げようと「高級な韓国製日焼け止め」をいくつも購入したという。
私はまだキットを受け取っておらず、ベースライン測定も記録していないので、健康目標を立てるのはそれまで待つつもりだ。この2人の参加者に勝てる見込みはあまりないと思っている。だが少なくとも、100歳の人よりは速く立ち上がれるようになりたいものだ。
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- ジェシカ・ヘンゼロー [Jessica Hamzelou]米国版 生物医学担当上級記者
- 生物医学と生物工学を担当する上級記者。MITテクノロジーレビュー入社以前は、ニューサイエンティスト(New Scientist)誌で健康・医療科学担当記者を務めた。