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本当は何歳? 記者が生物学的年齢を調べてもらった結果
Stephanie Arnett/MITTR; Getty
I found out my biological age—and was annoyed by the result

本当は何歳? 記者が生物学的年齢を調べてもらった結果

生物学的年齢は、健康寿命があと何年残っているのかを示す手がかりを与えてくれるものだ。野菜中心の食生活を送り、定期的にヨガに勤しんでいる記者は、平均的な人よりも生物学的年齢が若いと信じていた。ところが検査の結果は意外なものだった。 by Jessica Hamzelou2022.12.26

この記事は米国版ニュースレターを一部再編集したものです。

自分が感じている年齢が本当の年齢だと言われる。現在、体内時計を使って本当の年齢を数字で表そうと試みる人たちがいる。

これらのツールは、血液中のタンパク質や、DNA上の化学マーカー、さらには腸内細菌の構成などを分析し、死ぬまでにあとどれくらいの時間が残っているのか、本質的に予測する。魅力的な試みだ。ある会社が自分の生物学的年齢を調べる機会を提供してくれたとき、試してみることにした。

その会社、エリジウム(Elysium Health)は、1980年代から老化生物学を研究してきたMITのレオナルド・グアランテ教授が共同で創設した。エリジウムは現在、生物学的年齢の検査や、老化をターゲットにした数種類のサプリメントを販売している。現在、そのような企業はほかにも多数存在する。

私が受けた検査は、研究者たちが開発した最初の体内時計のいくつかに基づくものである。2011年に、カリフォルニア大学ロサンゼルス校のスティーブ・ホーヴァス教授は、唾液のサンプルを分析してエピジェネティック・マーカーを調べていた。エピジェネティック・マーカーとは、DNAに付着して遺伝子によるタンパク質の生成を制御している化学基である。そのような化学基の中には、遺伝子の働きのオン/オフを切り替えるものもある。

ホーヴァス教授は、エピジェネティック・マーカーのパターンが、年齢と一致しているように見えることに気づいた。実際、それらは非常によく一致していたため、ホーヴァス教授はそれを使って人の年齢を予測するアルゴリズムを訓練できた。2018年には、当時イェール大学医学部にいたモーガン・レヴァイン助教授らが、同様のアプローチを採用して血液サンプルを分析した。レヴァイン助教授らはこの時、健康データや年齢も分析に組み入れた。レヴァイン助教授が生み出した「フェノエイジ(PhenoAge)」時計は、人の残りの健康寿命を知る有効な手がかりになると考えられている。健康寿命とは、良好な健康状態で過ごすことが期待できる年数のことである。

エリジウムでグアランテ教授たちが開発した時計は、ホーヴァス教授 とレヴァイン助教授の研究に基づくものである。ただし、独自の修正を加えており、血液ではなく唾液のサンプルを使用しているという。考え方としては、この時計が自分の生理学的な年齢を教えてくれるはずであり、健康的に生きられる人生があとどれくらい残っているのか、感覚として分かるというものである。

そのようなわけで、私はこの検査で判明する自分の生物学的年齢が、これまでの誕生日の数である暦年齢よりも低くなると期待していた。グアランテ教授は70歳だが、自分の生物学的年齢は暦年齢より6歳下だと言っている。そうして私は小さな筒の中に唾を入れ、そのサンプルを米国にあるエリジウムの研究所に送り、幸運を祈った。

私はこれまで常に、自分が年齢よりも若く見えると思ってきたし、少なくともそうであってほしいと願っている。そのことが、良い結果になることを示しているに違いない。生物学的な年齢と見た目の年齢は関連しているという研究結果もあるのだから。老化の「スピードメーター」を開発したあるチームは、たとえ30代であっても、老化スピードが速い人ほど老けて見えることを発見した

しかし、多くの人と同様に、ここ数年は体に大きな負担がかかっている。パンデミックに大きなストレスを感じてきたのは、私だけではないはずだ。ホーヴァス教授らの研究は、ストレスが生物学的年齢を、少なくとも一時的に上げる可能性があることを示している。

また、私はこの5年間で2人の子どもを産んでいる。妊娠や出産、母乳育児には、老化の進行に影響を与えるかもしれない何らかの要素があることを、いくつかの研究が示している。2018年に取材したある研究者によれば、出産は「細胞の老化を約11年早めるのに相当する」ことが研究で明らかになったという。さらに、小さな子どもの面倒を見ているすべての親や養育者たちにはおなじみの、睡眠不足という要素もある。睡眠中に脳や体で何が起こっているかは、まだ科学が解明に取り組んでいる最中だが、それが極めて重要であることは明らかだ。これまで夜通し起きていた人なら、睡眠不足が寿命の短縮と関連していると聞いても驚くことはないだろう。

また、フルタイムの仕事と子育てを両立していると、きちんと食事を摂り、十分に運動することも難しくなる。先日、4歳の子どもの髪に愛情込めてブラシをかけていたら、こう言われた。「ママ、顔にたくさんシワができたね」。ありがとう、かわいい子。

検査結果は数週間前に届いた。どうやら、私の生物学的年齢は35歳らしい。検査を受けた時の暦年齢と同じである。理論的には、私は典型的なスピードで老化していることになる。つまり、データが取れているほかの35歳の人たちの平均と比べ、良くも悪くもないということだ。少し苛立たずにはいられなかった。確かに、私には小さな子どもが2人いて、慢性的な睡眠不足ではあるが、食事は植物性食品が中心で、週に3回ヨガに取り組んでいる。少なくとも、平均より少しましであるのは間違いないのではないか?

私は、体内時計の数値がどれほど魅力的なものだったとしても、そこから分かることは限られているという事実にしがみつこうとしている。多くの有望な研究があるにもかかわらず、これらのツールがどれくらい正確なのかということや、健康と長寿についてどれくらいのことを教えてくれるのかということについては、まだよく分かっていないのだ。多くの科学者がこの問題を解明しようとしており、体内で起こっていることをより良く反映する時計の開発に取り組んでいる。

「それはあなたの健康状態を表す真実の数字(と思われるもの)です。人々はその数字をとても知りたがっています」。老化関連疾患の新たな治療法の発見を目指しているゴーディアン・バイオテクノロジー(Gordian Biotechnology)のマーティン・ボルヒ・イェンセン最高科学責任者(CSO)は言う。「私たちにはそのような時計が実際にあるのか、それとも単なる幻想なのか、解明に向けて調査を続ける必要があります」。

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4月に公開したこの記事で、老化時計についてより詳しく取り上げた。また、カレン・ワイントラウブが、保険会社や病院が老化時計をどのように利用できるのかということについて調査している

9月末にスイス・アルプスで開催された超富裕層向けの超豪華な長寿会議に私は参加し、そこで希望と誇大広告と自分自身を実験台に使うことの魅力的な世界を発見した。

モーガン・レヴァイン助教授とスティーブ・ホーヴァス教授は現在、アルトス・ラボ(Altos Labs)に参加している。この会社は細胞を若返らせる方法を研究しており、本誌のアントニオ・レガラード編集者はこの研究について、「永遠の命に対するシリコンバレーの最新の賭け」と表現している。

アントニオ編集者が細胞再プログラミングとして知られるこの技術を取材し最近の特集記事で詳しく取り上げている。

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生物医学と生物工学を担当する上級記者。MITテクノロジーレビュー入社以前は、ニューサイエンティスト(New Scientist)誌で健康・医療科学担当記者を務めた。
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