医学生物学

Olympians Look for an Edge with Brain Stimulation 脳に電気を流すヘッドホンは
五輪選手の秘密兵器

査読された論文での証拠はないが、スタートアップ企業ヘイロは脳を電気で刺激するヘッドホンはアスリートのトレーニングの効果を高めると主張している。 by Mike Orcutt2016.07.27

8月にリオデジャネイロで五輪メダルを争う短距離走やハードル走の選手は、練習に新しいトレーニングツールを使っている。脳の刺激装置を兼ねるスタイリッシュなヘッドホンだ。

脳刺激装置兼ヘッドホンは、見た目も働き方も本物のヘッドホンと同じだが、運動を調整する脳の領域である運動野に向けて微弱電流を流すように設計されている。

発売開始から数カ月経つこのヘッドホンを開発したヘイロ・ニューロサイエンスのダン・チャオ共同創業者兼CEOによれば、ヘイロ・ニューロサイエンスのデータは、エリート選手がトレーニング中に刺激装置を着用すると、特定の競技タスクでよりよい結果を出せることを示している。たとえば、短距離走やハードル走でのスターティングブロックからのスタートを加速させるのだ。

Hafsatu Kamara, a 100-meter sprinter from Sierra Leone who will be competing in her first Olympics this summer, performs a training exercise while wearing Halo’s brain-stimulating headphones.

シエラレオネの100m短距離走者ハファツ・カマラ選手は今夏の五輪が初出場だが、脳を刺激するヘイロ製ヘッドホンを着用してトレーニングしている

ヘイロ・ニューロサイエンスはリオに向けて練習する、シエラレオネの短距離走者ハファツ・カマラ選手、2012年に銀メダルを獲得した米国のハードル走者マイケル・ティンズリー選手、米国の短距離リレー走者マイク・ロジャース選手、トリニダード・トバゴのハードル走者ミケル・トーマス選手、そして2008年に金メダルを獲得した米国の短距離リレー走者ナターシャ・ヘイスティングス選手の5人の選手にヘッドホンを提供している。

この刺激手法は経頭蓋直流電気刺激と呼ばれ、現在、神経科学研究で人気のある分野だ。科学者は少量の電流を流せば、多かれ少なかれ神経を刺激すると示してきた。さらに、過去15年で発表された多くの研究は、このアプローチが認知力の改善から脳卒中患者の運動機能の回復促進まで、多くの分野に使えることを示している。

多くは小規模な研究だ。さらに、多くの潜在用途に対し、この刺激に本当の効果があるかどうかを確認するにはデータは不十分だ。ヘイロが運動野を選んだのは、この手法が学習を改善できる証拠が最も見られる分野だからだ、とチャオCEOはいう。ヘイロ・スポーツという名称のヘッドホンは医療目的ではなく、米国食品医薬品局(FDA)の規制対象外だ。また、選手がこの種のヘッドホンを使っても現在の五輪ではルール違反にならない。

しかし、脳への作用がまだよく分かっていない以上、このテクノロジーを消費者へ直接販売するのは不適切だという研究者もいる。多くの証拠が経頭蓋直流電気刺激は正しい手順で使えば安全だと示しているが、まだ明確になっていないマイナス面があるかもしれない、とオックスフォード大学で臨床神経科学部の生理神経画像グループシャーロット・スタググループ長はいう。

電気刺激で選手の成績が高めるのか「現段階ではスポーツ分野で適切に使えるほど、私たちが十分に理解しているかは疑わしいです」とスタグ・グループ長はいう。なぜなら、科学者が運動野での効果を認めているのは、比較的単純なタスクを伴うラボでの実験下だけだからだ。選手のトレーニングはより複雑で、多くの筋肉と多くの脳領域を伴う、とスタグ・グループ長はいう。

チャオCEOによれば、ヘイロとエリート選手の働き方が示す結果は違う。「私たちには自社の証拠で十分なのです」とチャオCEO氏はいう。ヘイロは近い将来、そのいくつかのデータを科学的査読に提出する予定だと補足した。

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クレジットImage courtesy of Halo Neuroscience
マイク オルカット [Mike Orcutt]米国版 調査担当編集者
MIT Technology Reviewの調査担当編集者。物事をすごく深刻に受け取ります。オタク気質を注ぎ込んで、大量に浴びせかけられる情報からなんとか選び抜いた真実の断片をつなぎ合わせ、より大きな構想にまとめ上げようとしています。そんな毎日。特に、人類が直面するエネルギー関連の問題やインターネットの未来について考えることが多いです。
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