「アップルは未来を語らない」
ティム・クック独占インタビュー
MITテクノロジーレビューがアップルのティム・クックCEOへ独占インタビュー。シリコンバレーのジェンダー問題、トランプ大統領の環境および移民政策、そしてアップルの人工知能が批判を受ける理由について語った。 by Nanette Byrnes2017.06.23
アップルの指揮を取るようになって6年、ティム・クックCEOはさまざまな点で批判されてきた。ビジョンを語ることで有名だった創業者スティーブ・ジョブズと比較して今ひとつ将来を示し切れていないこと、イノベーションの進展計画があまりに遅いこと、米国政府が犯罪捜査のためアップルにアイフォーン(iPhone)のロック解除を要請した際に抵抗したことなどだ。
だがクックCEOの在任期間中、アップルは高収益を維持し、積み上げた現金は2570億ドルに達した。クックCEOは、アップルが人工知能分野で後れていないことを指摘し、また延々ささやかれてきた自律自動車開発のうわさを6月第3週初めにやっと認めた。またクックCEO自身は、同性愛者であるという個人的な人生経験から、トランプ大統領の移民禁止令やパリ協定離脱に至るまで、一連の重要な課題に関して極めて公に発言してきた。
6月9日のMIT(マサチューセッツ工科大学)の卒業式での式辞に先立ち、キャンパスの視察を兼ね研究者や学生たちを訪れていたその日、クックCEOはMITメディア・ラボにあるソーシャル・マシン研究室でMITテクノロジーレビューとのインタビューに応じた。この記事はその時のインタビューを編集したものである。
先日の開発者会議(6月5日に開催されたWWDC)で、人工知能に関して驚くほど多くの議論が交わされました。今までの会議と比べてもずっと多かったと思います。
人工知能の奥は深く、現在は画像処理装置(GPU)の精度向上により、次々と信じられないことが可能になってきた段階です。まだまだ、進化は続くでしょう。人類全体が、人工知能は人間の利益のために使うものであって、人間の不利益になってはならないということを肝に銘じなければなりません。
その点が心配ですか?
はい、心配ですね。でも、アップルの人工知能開発は心配していません。ちゃんと確認しながら進めていますから。ただ、広い意味では心配です。人間の判断を必要とするものにはある傾向が生じてしまうのです。一部の人はそこを考えていないかもしれません。つまり、自動化プロセス、言い換えれば人間的要素を除いた自動化プロセスについてのみ考えている可能性があります。人間的要素が非常に重要なのですが……。これは人間に悪影響を及ぼすでしょう。
つまり、テクノロジーが飛躍的に進化するとき、テクノロジーは人間に奉仕するべきでその反対ではないという事実を、一部で見失ってしまうリスクがあると思うのです。現段階でもそのような複数の例を見かけます。
例えばどんなものがありますか?
ねつ造ニュースはそうでしょう。プライバシーもセキュリティもそうです。ソーシャル・ネットワークの「荒らし」まで広げてもいいでしょう。みんな拡声器を得たようなものです。異なる意見を持つ人を指しているわけではありません。なぜなら、異なる意見を持つことは民主主義にとって非常に重要だと思うからです。こういった例ははさまざまな場所で発生し、社会をかなりの緊張状態に陥れています。
6月第3週は人工知能に関する話題が非常に活発でしたが、人工知能に関してアップルは、グーグルやアマゾン、マイクロソフトなどの後塵を拝しており、後れを取り戻すゲームを演じているのではないかと、よく言われています。この点に関してどう思われますか?
基本的にアップルは出荷の直前まで、製品について語ることはありません。AIだけでなく、何に関してもそうです。たとえば、今後起こることについて他の誰かが話していたとしても、アップルは基本的に発売している製品について語ります。多くの企業は未来を売っているのです。私はそう考えています。そうするにはさまざまな理由があるのでしょうが、私は一切批判しません。アップルらしくないからです。WWDCで(アップルが語った)すべての製品が今年中に出荷されます。同様に、アップ …
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