中国の巨大「テックフィン」企業アントの驚くべき正体
日本の金融機関でも顧客対応や営業支援にAIを活用しようという動きは広がっている。だが、自らをフィンテックではなく「テックフィン企業だ」と主張する中国のアント・フィナンシャルは一歩も二歩も先を行っている。 by Will Knight2017.06.22
中国で交通事故にあったら、スマホを取り出して写真を撮り、人工知能(AI)システムで保険金の請求ができる。
アント・フィナンシャル(Ant Financial)のこのシステムは、自動的に事故の深刻さを判断し、それに応じて保険会社と共に請求を処理する。すでに中国でスマホ決済ビジネスで成功しているアントが、機械学習やAIを使って個人金融の分野でも地位を固めようとしているのだ。
アントは2014年、電子商取引大手のアリババによって創設され、ユビキタス・モバイル決済サービス、アリペイ(Alipay)を運営してきた。 中国を訪れると、食事やタクシー、その他さまざまな料金を多くの人がアリペイ・アプリで支払っていることに気付く。アリペイは、米国でアップルやグーグルが提供している無線決済システムよりもはるかに普及している。 アリペイのアクティブユーザー数は4億5000万人を誇り、アップル・ペイのユーザー数は約1200万人にすぎない。
アントのアプローチは、既存の金融機関が提供する金融サービスを利用できない個人や中小企業に普及しており、米国での事業拡大を狙っている同社の躍進は、金融業界の未来にとって大きな意味を持つはずだ。今年4月には米国の送金サービス、マネーグラム(MoneyGram)を8億8000万ドルで買収し、開発中の技術を海外にも展開できるようになった。ただし、アントの広報担当者は、既存の金融システムが発達している米国にアリペイを導入する計画はないとしている。
アントのAI研究は進んでいる。ユアン(アラン)チー副社長兼主席データ・サイエンティストは、「AIはアントのビジネスの隅々にまで使われています」と言う。 「ビジネスを最適化し、新しい製品を生み出すために AIを活用しています」。
チー副社長は、事故処理システムは、AIの進歩がいかに既存のシステムをくつがえすかを示す良い例だという。 近年、深層学習と呼ばれる機械学習テクノロジーによ …
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