KADOKAWA Technology Review
×
Twitter’s Glass Ceiling Revealed for Women and Minority Races

「ネットは平等」か? ツイッター調査でわかった格差の実態

社会は不平等に溢れている。人々の新しいやり取りの手段であるソーシャルメディア・ネットワーク上では、ジェンダーと人種といった最も明らかな不平等は、どの程度、広がっているのだろうか? by Emerging Technology from the arXiv2017.07.06

社会は不平等に溢れている。ジェンダーと人種といった最も明らかな不平等が、現在進められている研究と議論の対象になっており、これらの格差の解消は、人類にとって重要な目標であると広く見なされている。

最近、人と人との関わり合い方を変えているツールの1つとして、ソーシャルメディアがある。そのため、ツイッターなどのサービスが、さまざまな種類の不平等を解消する上で、重要な役割を果たす可能性があると考えられる。

しかし、重要な疑問がある。それは、ソーシャルメディア・ネットワーク上ですでに、人種やジェンダーに関連する差別がどれだけ広がっているのかということだ。

ブラジルのミナス・ジェライス連邦大学の大学院生ジョンナタン・メシアスの研究成果が、この疑問に対する答えを与えてくれた。メシアスのグループは、ツイッターにおけるさまざまな人種の男性と女性の活動の場を調査し、特定のタイプの不平等が、すでにツイッターの世界に影響を与えていることを明らかにした。

調査の方法は単純だ。メシアスのグループは、2016年9月までの3カ月間、ツイッターのストリームをフィルタリングし、合計で、5027万310ユーザーが投稿した3億4145万7982個のツイートを収集した。

さらに、タイムゾーン、ジオロケーション、プロフィール写真を持つかどうかでフィルタリングして、米国に拠点を置く160万人のツイッター・ユーザーを抽出。顔認識アプリケーションのフェイス・プラス・プラス(Face++)で、ジェンダーと人種(黒人、白人、アジア人)を識別させた。

その結果、ジェンダー別では女性が53%、男性が47%、人種別ではアジア人が18%、黒人が14%、白人が68%であることが明らかになった。

ツイッターの世界が真に平等な社会であれば、全体ユーザーから抜き出したサブグループにおいても、各ジェンダーや各人種の占める割合が同じになるはずだ。

結果は、興味深いものだった。メシアスのグループは、ツイッター上で最もフォロワーの多いユーザーの男女の比率を調べることから始めた。すると、多くのフォロワーを持つツイッターユーザーの上位1%は、57%が男性で、女性は43%だった。

平等な社会で期待される分布から15%のブレだ。「この結果は、男性の方が高いポジションをとるという一般的な考え方を反映しています」とメシアスはいう。

最も人気のあるツイッターユーザーにおける人種分布についても、同様の不平等が見られた。「ツイッター上の認知度が最高レベルのユーザーたちについては、白人がトップの地位に立っているようです」。

メシアスのグループは、さらに、ジェンダーと人種の両方の影響について、データをより詳細に調べてみた。すると、最も恵まれているグループは白人男性であり、人気の高いツイッターユーザーの中で占める割合は、ユーザー全体で白人男性が占める割合よりも20%以上多い。白人女性も、わずかではあるが恵まれており、3%多い。

最も恵まれないグループは、アジア人女性と黒人女性だ。全体で占める割合よりも31%少ない。

メシアス氏のグループは、ユーザー同士のやり取りについても調査し、全体に占める割合と比較した。その結果、ユーザー同士のやり取りにはジェンダーと人種による大きな偏りがあることが判明した。これは「同類性」として知られている効果だ。人は自分と似た人を求める傾向がある。

同類性の効果の程度は人種により異なる。白人は、予想を約16%上回る率で白人をフォローする傾向がある。黒人は予想をはるかに上回り、約200%を超える率で黒人をフォローする傾向がある。しかし、アジア人がアジア人をフォローする傾向は、予想を約10%下回る。「同類性は、アジア人の場合には明確に現れませんでした」とメシアスはいう。

しかし、これで、ツイッターの世界に目に見えない障害が存在することがはっきりした。「こうした障害は、女性に対して典型的に存在するだけではなく、黒人やアジア人であれば、男性に対しても存在することがわかりました」と、メシアスはいう。

メシアスのグループの研究結果は、格差の是正に取り組む上で重要な知見を与えてくれる。是正の最初のステップは、格差の性質を理解することであるからだ。

しかし、次の段階である、格差をなくして平等にする方法を見い出すことは、はるかに難しい課題だ。

(参照:アーカイブ(arXiv)arxiv.org/abs/1706.08619:白人、男性、多くのフォロワー:ツイッターにおけるジェンダーと人種の不平等)

人気の記事ランキング
  1. Why it’s so hard for China’s chip industry to become self-sufficient 中国テック事情:チップ国産化推進で、打倒「味の素」の動き
  2. How thermal batteries are heating up energy storage レンガにエネルギーを蓄える「熱電池」に熱視線が注がれる理由
  3. Researchers taught robots to run. Now they’re teaching them to walk 走るから歩くへ、強化学習AIで地道に進化する人型ロボット
エマージングテクノロジー フロム アーカイブ [Emerging Technology from the arXiv]米国版 寄稿者
Emerging Technology from the arXivは、最新の研究成果とPhysics arXivプリプリントサーバーに掲載されるテクノロジーを取り上げるコーネル大学図書館のサービスです。Physics arXiv Blogの一部として提供されています。 メールアドレス:KentuckyFC@arxivblog.com RSSフィード:Physics arXiv Blog RSS Feed
10 Breakthrough Technologies 2024

MITテクノロジーレビューは毎年、世界に真のインパクトを与える有望なテクノロジーを探している。本誌がいま最も重要だと考える進歩を紹介しよう。

記事一覧を見る
人気の記事ランキング
  1. Why it’s so hard for China’s chip industry to become self-sufficient 中国テック事情:チップ国産化推進で、打倒「味の素」の動き
  2. How thermal batteries are heating up energy storage レンガにエネルギーを蓄える「熱電池」に熱視線が注がれる理由
  3. Researchers taught robots to run. Now they’re teaching them to walk 走るから歩くへ、強化学習AIで地道に進化する人型ロボット
気候テック企業15 2023

MITテクノロジーレビューの「気候テック企業15」は、温室効果ガスの排出量を大幅に削減する、あるいは地球温暖化の脅威に対処できる可能性が高い有望な「気候テック企業」の年次リストである。

記事一覧を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る