KADOKAWA Technology Review
×
7/30イベント「バイブコーディングの正体——AIエージェントはソフトウェア開発を変えるか?」申込受付中!
原発産業の復興なるか? 
米国初の小型原子炉建設へ
ariel davis
カバーストーリー Insider Online限定
Small Reactors Could Kick-Start the Stalled Nuclear Sector

原発産業の復興なるか?
米国初の小型原子炉建設へ

計画の長期化、莫大な資金投下が問題となり、大規模な原子炉の計画が困難になる中、米国初となる小型原子炉を12基、建設する計画が始まった。プロジェクトが成功すれば、原子力発電所建設の初期費用とリスクを軽減でき、停滞する原子力産業を再び、少しでも前進させられるかもしれない。 by James Temple2017.07.20

原子力産業が原子炉の小型化に大きな期待を寄せている。

2017年初め、ニュースケール・パワー (NuScale Power) は、アイダホ州アイダホフォールの郊外に広がる大規模な研究キャンパス、アイダホ国立研究所の敷地内に12基の小規模な原子炉を建設する長期的な計画を開始した(「Shrinking Nuclear」を参照)。米国原子力規制委員会 (Nuclear Regulatory Commission=NRC)が、600メガワットの発電所の設計を検討する正式なプロセスの開始を承諾したのだ。600メガワットは、アイダホ州の州都であるボイシ市に必要な電力の2倍以上にあたる。

これにより、オレゴン州ポートランドに拠点を置くニュースケール・パワーは、米国内初となる商用SMR(small modular reactor、小型原子炉)の建設において優位な立場に立った。SMRは、何十年にもおよぶNRCの承認に漕ぎ付ける、新しい原子炉設計を代表する実質的に最初の事例となる。

しかし世界では、ずっと多くのSMRプロジェクトが進行中だ。 国際原子力機関 (International Atomic Energy Agency=IAEA)によると、開発段階や計画段階にある設計やコンセプトが現在、世界中に約50 ある。アルゼンチン、ロシア、中国では、そのうちの4つがすでに建設が進んでいる段階にある。

初期プロジェクトの小型原子炉が建設されて成功を収めれば、より小型でより安全とされる小型原子炉を、ミニプラントとして量産できる可能性が高まり、初期費用とリスクを大幅に削減できる。プロジェクトの成功はさらに、気候変動のリスク低下に欠かせないと多くの専門家が考えるカーボン・フリー・エネルギー(二酸化炭素を出さないエネルギー)供給源のより容易な確保にもつながる。

一方で、発電所の実際の経済性は、稼働するまでわからない。より小型の原子炉をより多く作ることで、新たな種類の危険性が高まるかもしれないと警告を発する関係者もいる。

商業用SMRの大きな利点は、工場で前もって製造し、目的地に出荷できるだけのコンパクトさを持ち合わせていること、そして、積み重ねれば、必要なエネルギーをいくらでも生成できることだ。SMRはいずれ、10億ドルのコスト超過と長年の遅延が当たり前になっている原子力産業に、新しいレベルの予測可能性、信頼性、スケールメリットを生み出すかもしれない。本格的な原子炉では採算が合わないような小規模市場や、軍事的・産業的な用途に、原子力発電を利用する可能性も出てくる。

目下の利点は、安く建設できるということだ。本格的な原子炉を新たに建設するために必要な大規模な初期資本の調達は、米国でますます困難になってきている。ジョージア州とサウスカロライナ州にある2つ …

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. Promotion MITTR Emerging Technology Nite #33 バイブコーディングって何だ? 7/30イベント開催のお知らせ
  2. Promotion Call for entries for Innovators Under 35 Japan 2025 「Innovators Under 35 Japan」2025年度候補者募集のお知らせ
  3. What comes next for AI copyright lawsuits? AI著作権訴訟でメタとアンソロピックが初勝利、今後の展開は?
  4. Why the US and Europe could lose the race for fusion energy 核融合でも中国が優位に、西側に残された3つの勝機
  5. Google’s electricity demand is skyrocketing グーグルの電力使用量が4年で倍増、核融合電力も調達へ
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2025年版

本当に長期的に重要となるものは何か?これは、毎年このリストを作成する際に私たちが取り組む問いである。未来を完全に見通すことはできないが、これらの技術が今後何十年にもわたって世界に大きな影響を与えると私たちは予測している。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る