KADOKAWA Technology Review
×
自律自動車を劇的に安くする
半導体ライダーの開発が加速
mr. tech
カバーストーリー Insider Online限定
Low-Quality Lidar Will Keep Self-Driving Cars in the Slow Lane

自律自動車を劇的に安くする
半導体ライダーの開発が加速

自律自動車の基幹部品であるライダー装置は性能を確保しようとするとコストが高く、自律自動車商用化への壁となっている。大量生産で価格を下げられる新タイプの製品、半導体ライダー装置の開発が進んでいる。 by Jamie Condliffe2017.07.31

市販向け自律自動車の開発競争が激化し、車両の周囲の状況を調べるためのレーザー・センサーの需要が高まっている。しかし、実験的な自動運転車両で現在使われているハードウェアの安価版では、幹線道路を走行する際に必要になる品質のデータが得られない可能性がある。

ほとんどの無人乗用車は、レーザー・ビームを近くの物体に照射して跳ね返りを測定するライダー(LIDAR:レーザーによる画像検出・測距)センサーを使用して、周囲の3D地図を作成する。ライダーはレーダーより高品質のデータを得ることができ、環境光の変化に影響されないため光学カメラより優れている。もっともよく知られているライダー・センサーの例は、マーケット・リーダーであるベロダイン(Velodyne)が開発したもので、読者もおそらく目にしたことがあるだろう。回転するコーヒー缶のような外観で、ウェイモ(Waymo)やウーバー(Uber)といった企業が自社の自動車の屋根に取り付けている。

しかし、すべてのライダー・センサーが同じような性能を持っているわけではない。たとえば、ベロダインの製品レンジは広範だ。コーヒー缶そっくりの8万ドルもするハイエンドモデルのHDL-64Eは、64本のレーザー・ビームを、それぞれが重なるように照射する。各ビームは0.4度の角度で分離され(ビーム間の角度が狭いと解像度が高くなる)、到達距離は120メートルである。一方、小型サイズのローエンドモデルのパック(Puck)は、8000ドルだ。パックは2.0度の角度で分離された16本のレーザー・ビームを照射し、到達距離は100メートルである。

これらの数値の違いが意味することを確認しよう。以下の映像を見てほしい。上はHDL-64Eの生データで、下はパックのものだ。高価な製品のセンサーによる64本の水平に伸びる線条は風景を詳細に描出するが、安価な製品が生成する画像では、物体が自動車にかなり近づくまで発見しづらい。いずれのセンサーも到達距離は名目上同程度だ。しかし、パックは解像度が低いため、障害物が車両に相当近づくまでほとんど役に立たない。

時速約110キロで走っている場合、例えば60メートル先に物体を発見したとすると、2秒でその物体の位置に到達してしまう。時速110キロの自動車は、減速を開始してから停止するまでに100メートル走行する。自律自動車が真に安全なものとなるには、ほぼ200メートル先の物体を捉えられる必要があり、これが目指すべき目標だ。

ここにコストの問題が関わってくる。8000ド …

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
【春割】実施中! ひと月あたり1,000円で読み放題
10 Breakthrough Technologies 2024

MITテクノロジーレビューは毎年、世界に真のインパクトを与える有望なテクノロジーを探している。本誌がいま最も重要だと考える進歩を紹介しよう。

記事一覧を見る
気候テック企業15 2023

MITテクノロジーレビューの「気候テック企業15」は、温室効果ガスの排出量を大幅に削減する、あるいは地球温暖化の脅威に対処できる可能性が高い有望な「気候テック企業」の年次リストである。

記事一覧を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る