KADOKAWA Technology Review
×
Wait, Bitcoin Just Did What?

ビットコインが分裂、何が起きたのか?

ビットコインが分裂して「ビットコイン・キャッシュ」が誕生。今後の動きは、採掘者次第だ。 by Mike Orcutt2017.08.02

取引量の増加に伴う決済用ソフトウェアの改良方法を巡って数年間内紛が続いていたビットコイン。ビットコインのテクノロジーを支えるコミュニティが突如分裂した。

今回の動きが、長期的にビットコインとそのユーザーにどのような影響を与えるか、現時点では不透明だ。しかし、何らかの影響力を持つには、新通貨ビットコイン・キャッシュ(BCC、Bitcoin Cash)は「採掘者」(マイナー)の関心をひきつける必要がある。

採掘者の存在こそが、ビットコインを支え、改ざんなどの不正から守る役割を果たしている。採掘者は自分のコンピューターでビットコインを使ったユーザーの電子取引を検証し、ブロックチェーンの名で知られる暗号台帳に追記する。採掘者は自身のコンピュータで検証・追記のために必要な膨大な計算をした見返りとして、ビットコインで報酬を受け取る( 「What Bitcoin Is, and Why It Matters」参照)。

今回のハードフォーク(強制分裂)は、採掘者たちではなく、アジアを拠点とする多くの投資家や起業家のグループが引き起こした。彼らは、ビットコインのシステムが扱える取引数を増やそうという動きがあまりに鈍く、苛立ちを感じたのだ。ビットコインの取引は1秒当たり7件だが、VISAのような既存のシステムが取り扱う取引は何千件にのぼる。結局、独自の対処として、ビットコイン・キャッシュを立ち上げたのだ。ビットコイン・キャッシュはビットコインとまったく同じ機能を備えている。しかし、採掘者のコミュニティが新しく誕生した通貨に飛びつくかどうかはまったく不明だ。

数年の間、ビットコインの比較的大きなコミュニティ内では、増加する取引に対応できるように、早晩、ソフトウェアを改良するという合意があった。しかし、容易に進まない状態が続いている(「Leaderless Bitcoin Struggles to Make Its Most Crucial Decision」参照)。 ビットコインのアップデートを担当するプログラマーたちは「ブロックサイズ(10分ごとに処理が可能な取引の数)」を増やすことに慎重な姿勢を崩していない。ブロックサイズを増やすのに反対する根拠の1つとして、大きなブロックを採掘するために必要な高性能のハードウェアを購入する余裕のない、小規模な採掘者が締め出されるというものがある。一方で少数の大規模採掘者は、ビットコインのネットワークを支配しやすくなる。

専門家によると、ビットコイン・キャッシュの設計自体は処理能力不足という問題には対応していないという。だからといって、ビットコイン・キャッシュが普及しないとは限らない。ビットコインがユーザーの信用を得ているのは、設計が一番優れているという理由ではない。取引ネットワークが世界最大で、何年も流通しているからだ。つまり、取引を承認してブロックチェーンに追記する採掘者コミュニティを安定して維持するのが一番肝心なことになる。

ビットコイン・キャッシュの普及に弾みをつけるには、取引を検証し暗号台帳に追記するために必要最小人数の採掘者を獲得する必要がある(この記事を執筆時点でのビットコイン・キャッシュの取引価格は220ドル、ビットコインは2771ドル)。暗号通貨が専門のコーネル大学のエミーン・ガン・シラー教授がワイアードの取材で語った通り、普及のカギは採掘者たちがビットコイン・キャッシュに早期に手を出しても間違いないと判断するかどうかにかかっている。ビットコイン自体が普及した原因もここにある。

仮に採掘者を集められれば、ビットコインの処理能力問題が解決されることになる。元々のビットコインを乗っ取るか、ビットコインのコミュニティに対し、団結して独自に行動を起こすようプレッシャーがかかるからだ。いずれにせよ現時点では、大きな「仮定の話」のままだ。

(関連記事:The New York Times, Wired, “Leaderless Bitcoin Struggles to Make Its Most Crucial Decision,” “What Bitcoin is, and Why it Matters”)

人気の記事ランキング
  1. Singapore’s police now have access to contact tracing data シンガポールの接触追跡アプリが方針転換、犯罪捜査でも利用可に
  2. The winners of Innovators under 35 Japan 2020 have been announced MITTRが選ぶ、日本発の35歳未満のイノベーターを発表
  3. Don’t panic about the latest coronavirus mutations, say drug companies 新型コロナ「変異種」を過度に恐れる必要がないこれだけの理由
  4. Don’t worry, the earth is doomed 人類を滅亡に導く、15の破壊的リスク
  5. The kitchen of the future is here, it’s just not evenly distributed 電子レンジ、真空調理器超える「キッチン・テクノロジー」の未来
タグ
クレジット Photograph by ROSLAN RAHMAN | Getty
マイク オルカット [Mike Orcutt]米国版 准編集者
暗号通貨とブロックチェーンを担当するMITテクノロジーレビューの准編集者です。週2回発行しているブロックチェーンに関する電子メール・ニュースレター「Chain Letter」を含め、「なぜブロックチェーン・テクノロジーが重要なのか? 」という疑問を中心に報道しています。
Innovators Under 35 Japan 2020

MITテクノロジーレビューが主催するグローバル・アワード「Innovators Under 35」が2020年、日本に上陸する。特定の分野や業界だけでなく、世界全体にとって重要かつ独創的なイノベーターを発信していく取り組みを紹介しよう。

記事一覧を見る
人気の記事ランキング
  1. Singapore’s police now have access to contact tracing data シンガポールの接触追跡アプリが方針転換、犯罪捜査でも利用可に
  2. The winners of Innovators under 35 Japan 2020 have been announced MITTRが選ぶ、日本発の35歳未満のイノベーターを発表
  3. Don’t panic about the latest coronavirus mutations, say drug companies 新型コロナ「変異種」を過度に恐れる必要がないこれだけの理由
  4. Don’t worry, the earth is doomed 人類を滅亡に導く、15の破壊的リスク
  5. The kitchen of the future is here, it’s just not evenly distributed 電子レンジ、真空調理器超える「キッチン・テクノロジー」の未来
MITテクノロジーレビュー[日本版] Vol.2/Winter 2020
MITテクノロジーレビュー[日本版] Vol.2/Winter 2020SDGs Issue

今、世界中の企業や機関の技術者・研究者たちが各地で抱える社会課題を解決し、持続可能な世界の実現へ向けて取り組んでいる「SDGs(持続可能な開発目標)」。
気候変動や貧困といった地球規模の課題の解決策としての先端テクノロジーに焦点を当て、解決に挑む人々の活動や、日本企業がSDGsを経営にどう取り入れ、取り組むべきか、日本が国際社会から期待される役割について、専門家の提言を紹介します。

詳細を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る