KADOKAWA Technology Review
×
「Innovators Under 35 Japan」2024年度候補者募集中!
遺伝子療法1回50万ドルは高い?生涯医療費と比較してみた
Novartis
ニュース Insider Online限定
Even at $500K, Gene Therapy Could Be a Bargain for Some Diseases

遺伝子療法1回50万ドルは高い?生涯医療費と比較してみた

人の人生を完全に変えたり、命を救ったりできる医療や医薬品に金銭的価値を付けるのは難しい。最新の治療法である遺伝子療法にかかる高いコストはしばしば議論の対象になるが、既存の治療法にかかるコストと比較することで、妥当性をある程度推し量れるだろう。 by Emily Mullin2017.09.26

米国食品医薬局(FDA)は最近、米国で「初の遺伝子療法」と呼ばれている治療法を認可した。ノバルティスが開発した「キムリア(Kymriah)」という名称の治療法は、患者自身の免疫細胞を取り出し、体外で遺伝子操作したうえで患者の体内に戻すことによって、致死性の小児白血病を治療する。キムリアには驚くほどの効果があり、一部の患者ではがんの完全寛解という成果が出ている。

遺伝子療法の背景にあるのは、「生きている医薬品」として遺伝物質を使って、病気を治療するというアイデアだ。科学者たちは遺伝子療法の開発に何十年も挑戦しており、キムリアの認可は歴史的な出来事であった。しかし、47万5000ドルという価格は、すぐさま患者の支援団体から警告や批判を受けることになった。開発中の遺伝子療法は他にもあり、それらも同様に数十万ドルの費用がかかる可能性がある。こうした値段の高さに驚く人がいる一方で、格安だと見る人もいる。

多くの遺伝子療法が1回きりの注射で完全な治癒が見込めるのは、医薬品とはアプローチが根本的に異なるからである。保険会社が遺伝子療法に保険金を支払うべきか、どれくらい支払うべきかは、これから多くの遺伝子療法が市場に出るにつれて米国の医療制度が取り組まねばならない大きな問題となるだろう。保険会社は、キムリアを支払いの範囲に含める予定かどうかについてまだ口を閉ざしている。

業界団体の再生医療アライアンス(Alliance for Regenerative Medicine)によれば、がん、遺伝性疾患、感染症向けの計504の遺伝子療法が現在臨床試験中であり、そのうち34が試験の最も進んだ段階にあるという。現在受けられる治療法よりも実質的に優れたものになりそうな遺伝子療法もある。いくつかの深刻な病状の治療にかかる個人の生涯医療費、もしくは数年間の医療費はすぐに計算できる。ざっと見ていこう。

鎌状赤血球症:信じがたいほどの苦痛を伴う血液疾患である鎌状赤血球症の患者は、病院の救急処置室でしばしば絶命し、米国の医療制度にも多額の負担がかかっている。アメリカン・ジャーナル・オブ・ヘマトロジー(American Journal of Hematology)誌の2009年の研究は、フロリダ州のメディケイド・プログラム( …

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. AI can make you more creative—but it has limits 生成AIは人間の創造性を高めるか? 新研究で限界が明らかに
  2. Promotion Call for entries for Innovators Under 35 Japan 2024 「Innovators Under 35 Japan」2024年度候補者募集のお知らせ
  3. A new weather prediction model from Google combines AI with traditional physics グーグルが気象予測で新モデル、機械学習と物理学を統合
  4. How to fix a Windows PC affected by the global outage 世界規模のウィンドウズPCトラブル、IT部門「最悪の週末」に
  5. The next generation of mRNA vaccines is on its way 日本で承認された新世代mRNAワクチン、従来とどう違うのか?
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年も候補者の募集を開始しました。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る